事例紹介:RSコンポーネンツ コスト効率の高い少量資材調達ソリューション(1/2 ページ)

ERPパッケージなどを導入している企業は多いが、成否はさまざまだ。今回は1999年よりPeopleSoftの「EnterpriseOne」を導入し、電子・電気部品のカタログ販売を行っているRSコンポーネンツ社に導入事例を聞いた。

» 2004年11月27日 12時00分 公開
[大津心,@IT]

 RSコンポーネンツは、電子・電気部品を中心とした約6万5000種類の商品をカタログ販売する会社だ。通常、このような工業部品は数百〜数千ロット単位での販売しか行われないが、同社ではこれを1個から購入できるように小分けして販売している。製造業の研究者などが試作品を作成する際や、製造過程が終わった製品の修理用部品として主に利用されているという。

注文は4割強がWebから、4割がFAXから、残りが電話から

 RSコンポーネンツは、英国を本拠地に世界で同種のサービスを提供しているエレクトロコンポーネンツ社の日本法人として1998年に設立された。現在は、倉庫の作業全般を日本ロジテム社にアウトソースして事業を展開している。同社は商品カタログをユーザーに配布しており、それを見たユーザーがFAXや電話、Webサイトを通じて注文を行う。午後6時までに注文を受け付けた場合、即日発送するサービスを実施しており、現在の達成率は97.6%だという。

 即日発送を実現するため、同社では各社のパッケージソフトを組み合わせたベスト・オブ・ブリード型システムを構築している。その構成は以下の図を参照してほしい。

 同社の取り扱い製品は、従来は秋葉原などにしか売っていない特殊商品だった。しかし、これを「少しだけ、必要なだけ買いたい」「検索できて、早く欲しい」といった“コンビニ”的な利用方法を可能にするというのが、このシステムの狙いだ。1日当たりのWebサイトのアクセス数は約9000件、平均注文金額は1万5000円、1日のオーダー数は1000件程度だという。

 商品は国内の調達率が30%、英国からの調達が70%を占めており、需要予測に基づき在庫管理を行っている。商品は国内外のサプライヤ約3000社からそれぞれ数十から数百ロット単位で入荷されてくるため、倉庫で小分けし、種類別に収納する。現在、注文は約48%がWebサイトから、約40%がFAX、残りが電話による注文だという。英国本社ではだいぶ割合が異なり、電話が70%、Webが30%弱でFAXはほとんどないという話で、国民性やシステムの違いが感じられる。Web経由の注文はBroadVisionからEAIを経由してPeopleSoft EnterpriseOneに渡される仕組みだ。FAXや電話からの注文は、同社社員が手入力している。

 注文の40%を占めるFAX注文に関しても自動化を検討したが、情報システム・カスタマーサービス担当取締役の杉山正二氏によると、「FAXの注文書はフリーフォーマットに手書き入力してくるユーザーもいれば、弊社規定の注文書で送信してくる人、ユーザーの会社独自のフォーマットなどバラバラだ。規定の書式は5割以下だろう。これをシステム化できないこともないが、トータルでコスト効率を考えると手入力が良いと判断した」のだという。

RFIDは値段が10分の1に下がらないと採用できない

今後、導入が検討されている商品移動用カゴ。上部のPCで位置を探り、下部のケースに商品を納めていく。棚間の道幅の影響から、汎用のものは利用できないため、独自開発したという 今後、導入が検討されている商品移動用カゴ。上部のPCで位置を探り、下部のケースに商品を納めていく。棚間の道幅の影響から、汎用のものは利用できないため、独自開発したという

 グランベリーモールのある南町田駅から十数分の倉庫には1500坪分の土地をレンタルしており、約50名の作業員が勤務している。発送作業は、16時ころから増え始め、当日配送の締め切りとなる18時がピーク。逆に13〜14時ころが一番注文が少ないという。WebやFAX、電話で受注した注文の帳票は、倉庫のプリンタに15分、ピーク時で10分置きに出力される。出力されるのは、納品書や請求書、配送ラベルだ。同社では配送業者に佐川急便と日通を利用しており、それぞれ配送ラベルに記入が必要な項目が異なるため、出力時にはそれぞれの仕様に合った項目が出力される仕組みとなっている。

 倉庫内は「売れ筋商品」「大物商品」「大物/売れ筋商品」など7つのエリアに分類されている。棚には商品番号が書かれたシールが貼られており、それに対応した商品が並べられている。ただし、取扱商品が電子・電気部品であるため、似たものも多く、大きさも数センチから数メートルに及ぶものまで多種多様なため、仕分けが大変だという。本社で受け付けた注文の帳票が実際に倉庫のプリンタでプリントアウトされると、担当者が帳票のID番号と個数を確認して、5万点の商品群から探し出し、チェック・梱包後配送となる。倉庫での工程の多くが手動で行われているが、ベルトコンベアやRFIDによる自動化案は見送られたという。

RSコンポーネンツの工場内風景。ここは、出荷作業を行うところ RSコンポーネンツの工場内風景。ここは、出荷作業を行うところ

 杉山氏は、「当社の商品は単価が基本的に低いものを、少数配送するビジネスモデルだ。また、形状も大きさも商品ごとに著しく異なる。これに対応した自動化システムを作ろうとすると数億円掛かるため、コスト的に見合わないだろう。また、自動化しても思ったより時間短縮につながらない点も大きい。RFIDによる管理も、現在の原価の10分の1程度になったら再度検討する」と説明した。また、今後現在の数倍となる1日2000〜3000件の注文数になれば、再度自動化などのシステム変更を検討するとしている。

 なお、需要の少ない商品は年4回英国へ返品している。日本では需要がなく返品する商品でも、他国では売れる場合もあるのだという。

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