データアーカイブとバックアップの使い分けをどうするか情報資産管理とバックアップポリシー(2)(2/2 ページ)

» 2005年10月21日 12時00分 公開
[松岡 眞次,日本ヒューレット・パッカード]
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バックアップの課題とは?

 バックアップの課題には、縮小されていくバックアップウィンドウが挙げられます。バックアップウィンドウとはバックアップが可能な時間帯を指すのですが、これは主にシステム運用上の必要性によって決められます。例えば、システム運用が午前8時から午後10時まで運用されるのであれば、その後の10時から朝8時まではバックアップを行うことが可能な時間帯ということになります。すでによくいわれていることですが、データは一般的に増加しており、またシステム稼働時間も延びています。当然バックアップウィンドウは縮小傾向にあるのですが、こうした中でバックアップを取るためにさまざまな手法がなされています。

 最近の手法では、一時的にディスクに書き込んでおき、その後システム運用に影響が少ない時間帯などに、そのディスクからテープに書き込むという「Disk to Disk to Tape(D2D2T)」と呼ばれる手法などが挙げられます。これは大容量のディスクが近年、低価格で提供されるようになってきており、それらのディスクを使うことで、高速のバックアップ/リストアを可能とした安価なD2Dのバックアップが提供可能となったためです。また、マイクロソフトからも最近D2Dのサービスを提供する「Data Protection Manager」のリリースが予定されており、今後も注目されるバックアップ手法になると思われます。

 しかし、高回転で回り続けるディスクドライブには、その信頼性に少なからずリスクを含んでいます。D2Dだけのバックアップでは、データを記録したメディアを保管することが難しく、さらにコンピュータウイルスや、災害などに対しても弱点を持っています。そこで、ディスクからさらにテープに落とす「D2D2T」を採用することで高いレベルのデータ保護が得られます。テープでは、メディアが取り出せて、別のサイトで保管することが可能であり、コンピュータウイルスや災害に対しても、最も安全で信頼性の高いデータ保護を提供します。確実なバックアップ/保管/リストアのために、最終的にテープで保管するD2D2Tの手法を取るのが理想的なのです。またこの方法では、ディスクを一時的な保管場所として使用しますが、バックアップ直後であればディスクからの高速リストアというメリットが生かせる手法になります。D2Dにはテープライブラリをエミュレートする制御装置と、ディスクアレイ装置とを組み合わせたバーチャルテープもあります。

アーカイブの正しい定義を分かりますか?

 先にも書きましたが、アクセス頻度の少ないファイルや古いデータを、ディスク上に残しておくと、システム全体のパフォーマンスを落としてしまう要因になりますし、容量も取られます。またこれらのデータが毎回バックアップされていれば、バックアップ時間もそれだけ余計にかかってしまいます。このように、システム運用上必要のないデータをディスク上に置いておくことは、リソースおよびパフォーマンスの減衰につながり、ほとんどメリットがありません。

 すでにアクセスされなくなったデータだとしても保管が必要なデータなどは、別のメディアに退避させて保管しておくことがストレージスペースの開放(有効活用)とシステムのパフォーマンスを上げるうえでも必要なことです。システム運用の継続性を目的とするための手段であるバックアップに対して、アーカイブは情報の状態を長期間記録維持し、規制や監査、後までの記録または参照の目的で用いられます。

 そしてこれら長期保管されるデータの集まりをアーカイブと呼んでいます。またそれらデータは、基本的に書き換えは不可でなければなりません。現状ほとんどのアーカイブはテープで取られていますが、それらテープカートリッジの保管についても安全な場所、環境での保管管理が重要となります。またデータが必要になったらテープからリストアもできなければなりません。

 データをアーカイブするかどうかの判断の根拠には、1つにアクセス頻度が挙げられます。そして、そのデータを長期保存する必要性があるデータかどうか、ということになります。

 近年、電子文書記録に対する法規制が米国を中心として広がりを見せていますが、同時にこれらデータの記録保存に関しても、それに応じた管理をしていく必要性があります。これら多くの規制を要約すると、次のような3つの要点に分けられます。ある一定期間保存されなければならない。また必要に応じてそのデータにアクセスできなければならない。さらにデータが改ざんされていないことを証明できなければならない、の3点です。

 現在のところ、データの長期保存には、テープメディアで保存するのがコスト的にも容量的にも有効です。また上記の法規制にあるようなデータの改ざん防止の要求に応える「WORM(Write Once Read Many)」の機能を持った記録メディアがあります。これはメディア上の物理的な任意の場所に、1回だけしか書き込むことができないという機能です。メディアの容量を満たすまでは追記可能で、読み取りは何度でもできますが、上書きや消去ができないため、不正に改ざんされていないことを証明できる記録メディアとなります。WORMの機能を持ったメディアには、テープカートリッジにLTO、SDLT、AITなど、またCD/DVDやUDOなどの光系のディスクなどがありますが、容量やスピードの点で現在はテープの方が勝っています。

 長期保存を可能にするための注意点として、下記のようなことが挙げられます。

  • 信頼性の高いメディアの使用
  • 貴重なデータについては複数のコピーを複数のメディアに保存
  • 記録されたデータの読取確認
  • 安全で環境の整った保管場所
  • 互換性があり、数世代までのロードマップがある記録デバイス

 以上のようにバックアップとアーカイブという2通りのデータ保護の手法がありますが、重要なことはデータの持つ性質や重要度を理解したうえで、どちらの目的で保護していくのかということになります。


 次回は、ストレージシステムの概要や基礎知識を中心に、紹介していきます。

著者紹介

▼著者名 松岡 眞次(まつおか しんじ)

日本ヒューレット・パッカード株式会社ストレージワークス製品本部プロダクトマーケティング部

日本DEC入社後、コンピュータ製品の保守に従事。その後、故障解析の組織を経て、ストレージマーケティングにて製品を担当する。現在はDATやLTO Ultriumを中心としたテープ装置の製品を担当


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