トレンド解説(10)

IT化のカギを握る上級シスアドとは?


岩崎史絵
2005/2/18

社内における上級シスアドの評価は?

 そこで気になるのが、社内における上級シスアドの評価だ。一般企業において、本業と異なる分野の資格はどの程度評価されているのか。

(左)東京海上日動システムズ 営推・損害ソリューション本部 損害ソリューションサービス部 ソリューションプロデューサー 山中吉明氏
(右)富山富士通 ソリューションビジネス統括部 GLOVIAソリューション部 プロジェクト課長
植松栄介氏
 荏原製作所の飯尾氏、大日本スクリーン製造の吉野氏は「社内にIT開発を理解できるスタッフがいることは、とても重要」として、それぞれの社内で正当な評価を受けているという。これはKDDIも鹿島建設も同様だ。例えば荏原製作所では、資格取得の手当として、月々の報酬に加算しているという。「IT化を大切に考えている企業だからこそ、ITのスキルを正当に評価しているのでしょう」(飯尾氏)。報酬に加え、会社がIT化の企画・立案の中心人物として尊重することで、モチベーションも維持できるわけだ。

 とはいえ、「本当に会社や社会から上級シスアドが認められ、そのスキルと知識に正当な評価が与えられているか」という点を突き詰めると、完全に“イエス”というわけではない。資格取得者も増えてきているとはいえ、上級シスアドという専門職が社会的に認知されているかというと、まだその段階までは到達していない。

 その理由として挙げられるのが、上級シスアドが「職種」ではなく「仕事内容」による部分が大きいからだ。実際、今回取材した上級シスアドの方々も、情報システム部門や経営企画室あり、一般企業あり、SI会社あり、と属する業種も職種もさまざまだ。合格者の内訳を見ても、いわゆる情報処理産業従事者の比率は決して多くない。例えば平成16年度試験の内訳を見ると、「電気・ガス・熱供給・水道業」の従事者が最も多く、次いで「金融・保険業、不動産業」となっている。そこを解決し、職種として上級シスアドを確立したいというのが、上級システムアドミニストレータ連絡会の思いだという。

上級シスアドという“職種”を作り上げる

 上級システムアドミニストレータ連絡会は、上級シスアドの交流を支援する任意団体だ。もともとはパソコン通信NIFTY-Serve(現ニフティ)の資格試験勉強会フォーラムから誕生し、2005年1月末現在で345名の正会員を抱えている。条件は上級システムアドミニストレータ試験に合格、あるいは受験予定者で、同会の趣旨に賛同することだ。

- PR -
  大日本スクリーン製造の吉野氏は、「趣旨といっても大げさなものではありません。『全国の上級シスアドが抱える仕事の困難点や解決策、最新情報の収集などをはじめ、互いの親ぼくを深めるために積極的に交流していこう』というものです」と語る。

 発端がパソコン通信のフォーラムだったこともあり、会員の交流は「気の置けない仲間」という感じだそうだ。実際、交流会ではいま抱えている案件やプロジェクトも可能な限りオープンにし、つまずいている問題点や課題について知恵・ノウハウを交換し合うのだという。ここに、「上級システムアドミニストレータ連絡会の意義があります」(吉野氏)という。
 
 実際のプロジェクトで課題となるのは、IT化計画そのものより、部門間の調整や協力SIとのやり取りなど、人間系に属する事柄が多い。そうした課題をどう解決していったのか。成功事例は何か。このような課題について、メーリングリストや交流会を通じて情報交換をし合う。東京はもちろん、関西や中部などでも地域ごとに交流会や研修会を開催しているそうだ。また年に1回は会全体の合宿もある。こうした中で、情報交換にとどまらず、仕事内容について忌憚(きたん)ない思いを交換し合うこともあるという。

 上級システムアドミニストレータ試験が発足して10年目に当たる今年は、こうした内部の活動以外に外向けの活動に注力していく構えだという。「その1つとして、会員候補として初級シスアドの方にも門戸を広げたいと考えています。まず社内で、『10人に1人は初級シスアドの資格を持っている』という体制を形作り、その中から上級シスアドが生まれていく、という流れを作っていきたいですね。勉強に必要な支援や情報交換も積極的に行いたいと思います。『初級シスアド、上級シスアドはこういう職種』という地位を足固めし、そのキャリアプランを提示したいと考えています」(吉野氏)。

  リンク
  資格から考える「システム監査人材」の育成と活用(@IT情報マネジメント > ITスタッフ)

次のページへ 3/3

Index
トレンド解説(10)
IT化のカギを握る上級シスアドとは?
  Page 1
上級シスアドとはどのような人物像なのか?
  Page 2
社内情報システム部スタッフ育成にも貢献
上級シスアドがいればプロジェクトの成功率が上がる?
Page 3
社内における上級シスアドの評価は?
上級シスアドという“職種”を作り上げる


■要約
「利用者側において、業務の中でどのように情報技術を活用すべきかについて判断するために必要な知識・技能をもち、情報化リーダとして業務改革・改善を推進する者」として、社内IT化の中心的役割を期待されている上級システムアドミニストレータ(上級シスアド)。具体的には、所属する業種や業態、職種など多種多様にわたり、定まった“職種”として認知されていない。だがIT化の企画・立案からプロジェクト運営に至る「成功のカギ」を握るのが、まさにこの上級シスアドだという。

上級シスアドの交流を支援する任意団体「上級システムアドミニストレータ連絡会」によると、部門や社内でIT化プロジェクトを推進したことがきっかけで上級シスアドの資格を取得した者、情報システム部門のスタッフとして取得した者、またはSI会社の立場として取得した者とさまざまだ。この試験は経営とITの両方をふかんし、適切なIT化計画を立案する知識・スキルを問うもので、この資格取得者がいるかいないかでプロジェクトの成功率が異なるという。上級シスアドはプロジェクトのミッションを見定め、金・人・モノというリソースを配分し、的確な意思決定ができるからだ。また、ベンダ側と対等に意見交換をするためのスキルを身に付けていることから、IT化プロジェクトが失敗する率が少なくなるという。

とはいえ、上級シスアドという職種や地位はまだ確立されていない。社内で正当な評価をもらっているケースもあれば、そうでないケースもある。上級シスアドの地位を確立し、専門職として広く世の中に認められるようになることが今後の課題だ。




「情報マネジメント トレンド解説」


■記事の「要約」がメールで読めます■
記事の「要約」を毎週水曜日にメールでお届けしています。
下の「@IT情報マネジメント メールマガジン」からお申し込みください。
サンプルを見る

ホワイトペーパーTechTargetジャパン

@IT情報マネジメント メールマガジン 情報マネージャのための情報源(無料)


この記事に対するご意見をお寄せください managemail@atmarkit.co.jp

キャリアアップ

@IT Sepcial

イベントカレンダー

PickUpイベント

- PR -
もっと見る

TechTargetジャパン

@IT Sepcial
ソリューションFLASH

求人情報