情報共有化の障壁を突き崩せ!
――システム部門Q&A 第22回


木暮 仁
2005/6/10

 
(2)受信側の障壁
 

 せっかく多くの障壁を乗り越えて発信された情報も、受信側のアンテナが悪いと、ディスクのゴミになってしまいます。

ア:発見しない

 「できない」のではなく「しない」のです。業務を行うのに、外部の情報には眼もくれずに、自分だけで考え解決しようという人は多くいます。これでは、より良い方法が発見できないし、井の中の蛙になる危険があるのですが、本人も周囲もその危険に気付いていないので、機会損失を生じていることすら見過ごされることになります。日常的な「雑談奨励」や「異部門間小集団活動」などの仕組みや、適切な情報受信による成功例の発表会などの対策があります。

イ:発見できない

 すでに貴重な情報が発信されているのに、それを発見できないことが多くあります。その対策として、検索エンジンやテキストマイニングなどの活用もありますが、「行き当たりばったりの情報交換で放置しているために、掲示板に膨大な容量を費やしている」ような状態を解決するための対策が重要です。

ウ:価値がない

 入手した情報そのものに価値がないものもあります。発信側が知らせたいことと、受信者が知りたいことには、当然ながら大きな違いがあります。「価値のないものは発信するな」ということは、A〜Eを増大させるので不適切です。むしろ、「このようなことを知りたい」という情報を積極的に発信することを奨励するべきでしょう。

エ:価値に気付かない

 本来は価値のある情報を入手したのに、自分には関係がないとして見過ごしてしまうことがあります。例えば、生産部門での合理化のアイデアは、自分の所属する流通部門にも応用できるのに、生産部門の話なので見なかったということはよくあります。

オ:価値がある

 発信された情報「E」のうち、ア〜エの障壁を乗り越えた「Eオ」だけが、受信者にとって価値のある情報になります。さらには、この「Eオ」が本当に価値があり、しかも実際に業務に役立ったかのフィルタが必要ですが、ここでは割愛します。

 
(3)障壁打開策の追加
 

 受信側の障壁で、イの「行き当たりばったりの情報交換で放置しているために、掲示板に膨大な容量を費やしている」や、エの「本来は価値のある情報を入手したのに、自分には関係がないとして見過ごす」のを解決するには、KE(ナレッジ・エンジニア)あるいはナレッジマネジメント組織の設置が効果的です。それほど大げさなものではなくても、次のような工夫が役立ちます。

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 「行き当たりばったりの情報交換」では断片的な情報だけですし、口頭での話し合いや会議での文書は掲載されていないことが多くあります。すなわち、フロー情報はあるのですが、ストック情報がないのです。これを解決するには、そのフォーラムに記録係(交代でもよい)を決めておき、適宜「ここまでの情報を整理すると……」というストック文書を作成して、話が進むにつれて、それを更新しておくようにします。うまく工夫すれば、そのストック文書から個々のフロー情報をリンク付けすることもできます。

 ストック文書は「自分には関係がないとして見過ごす」ことを少なくするのにも役立ちます。これを多くの人がアクセスできるならば、ちょっと気の利いた人が、「これは流通部門にも役立つのでは?」というコメントを1行加えれば、見過ごすことが減ります。流通部門に知らせてやることもできるでしょう。その「気の利いた」人を増やして組織化したのがナレッジマネジメント組織だともいえます。個々のフロー情報をウオッチするのは困難なので、ストック文書だけは、誰かがウオッチしているようにすればよいでしょう。

 また、このような訓練により、発信側のBで、「アドバイスしたり、断片的な事項を聞き出したりして体系化する作業を手伝う人」に育成することができます。

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第23回

 INDEX
情報共有化の障壁を突き崩せ!
  Page1
グループウェアと組織文化
(1)グループウェアへの期待と現実
(2)グループウェアは組織文化を強化する
(3)オープンな文化へ
  Page2
情報共有化モデル
(1)発信側の障壁
Page3
(2)受信側の障壁
(3)障壁打開策の追加

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■要約
point!
グループウェアを有効活用するためにはオープンな組織文化が必要である
情報共有化モデルにおける「Fオ」の部分を拡大することが有効である
掲示板の活性化には、気の利いた人や体系化作業を手伝う人が必要だ
社内における部署間の交流不足解消や組織の活性化、創造性向上を狙ってグループウェアを導入する企業は多い。しかし、本来の目的から外れ、日常的な連絡事項しか行われないケースが目立つ。グループウェアを有効に利用されない原因を探り、解決策を紹介する。

そもそも、企業には「地位に関係なく自由に発言できる組織」や「他人の仕事には口を出すのをはばかれるような組織」がある。グループウェアを導入すると、この組織文化を強化する傾向がある。グループウェアを有効活用するためには、クローズドな組織をオープンな組織に改革する必要がある。

情報共有化が円滑にできるためには、発信者が発信し、受信者が受信することが前提だ。しかし、現実には発信者は発信したがらないし、受信者も上手に受けることができない。そこで、筆者が考案した「情報共有化モデル」の“価値がある情報を発信する”文化を強化することで、この問題を解消することができる。また、掲示板の活性化には、気の利いた人や体系化作業を手伝う人が必要だ。

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profile
木暮 仁(こぐれ ひとし)
東京生まれ。東京工業大学卒業。コスモ石油、コスモコンピュータセンター、東京経営短期大学教授を経て、現在フリー。情報関連資格は技術士(情報工学)、中小企業診断士、ITコーディネータ、システム監査、ISMS審査員補など。経営と情報の関係につき、経営側・提供側・利用側からタテマエとホンネの双方からの検討に興味を持ち、執筆、講演、大学非常勤講師などをしている。著書は「教科書 情報と社会」「情報システム部門再入門」(ともに日科技連出版社)など多数。http://www.kogures.com/hitoshi/にて、大学での授業テキストや講演の内容などを公開している

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