前回に引き続き、情報システム部員の育成問題について考えてみる。今回は、「仕事に対する認識/取り組み方」について解説したい。
“生まれてすぐの子ネコを2群に分け、一方を横縞(じま)模様だけの部屋、他方を縦縞模様だけの部屋に数十日入れておくと、横縞グループは縦の線を認識できずにテーブルやいすの脚に頭をぶつけ、縦縞グループは横線が認識できずにテーブルからテーブルへの跳び移りができず床に転げ落ちる。その後どのような環境に戻しても正常になることはなかった”
ネコの視覚機能の形成は生後45日までになされる。その間に外界から正常な視覚の刺激を受けないと永久に視覚は正常に機能しなくなる。人間ではこの期間はもっと長く2?3年(*1)といわれているが、このような問題は視覚や聴覚(*2)など知覚・認識の基本的なところにとどまらず、脳の成育過程として“知”全般(*3)について存在する問題らしい。
例えば、言語にかかわる能力は10歳前後に形成されるといわれている。幼少期に外国で暮らしても10歳前に帰国した人には外国語の能力は残らないし、大人になってからの外国語の修得に大変苦労するのは、こんな背景があるためらしい。
このような認知心理学や脳生理学の分野での知見を、社員の育成問題に投影してみるとどういうことになるであろうか。
誤った認識のうえに積み重ねられた知識は、発想や行動のズレにつながる。能力育成の基礎は対象の正しい認識にあり、問題分野ごとの認識の形成時期やそのプロセスが大変重要な要件になるようである。日常の業務活動から意識・無意識のうちに得ている種々の情報に対する、頭の中での“情報処理”が認識の形成、能力育成の大切なプロセスともいえる。このプロセスを、外からどうコントロールするかといった観点で考えてみる。
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