自力で社内の埋蔵金を発掘するためのノウハウ公開!最先端BPM実践講座(3)(1/3 ページ)

企業の業務改革は“社内の埋蔵金探し”に通ずる。この考えに基づくと、業務改革の第1ステップは埋蔵金の在りかを特定することだ。在りかを見つけてしまえば、後は掘るだけである。今回は、埋蔵金探しで重要な“埋蔵金の在りかを的確に探し出すノウハウ”を紹介する。

» 2005年09月02日 12時00分 公開
[大川原文明,IDSシェアー・ジャパン株式会社]

 筆者は、「業務改革は、社内の埋蔵金を探し出すことと同じだ」と考えています。この考え方に従うと、業務改革の第1ステップは埋蔵金の在りかを特定することから始まります。埋蔵金の在りかが特定できたら、次に埋蔵金を掘り起こすわけですが、埋蔵金の在りかさえ特定できれば、掘り起こす手段はさまざまな方法があります(プロセス見直しやシステム導入、組織改編などなど)。今回は業務改革で特に重要となる、第1ステップの埋蔵金の在りかを的確に探し出すノウハウを中心に紹介します。

なぜ業務改革は、埋蔵金探しなのか?

 これは“いわずもがな”かもしれませんが、業務改革とは「社内ならびにビジネスチェーン上の無駄なルートやプロセスを見直し/排除したり、新たなビジネスチャンスを獲得するためのルートを新設したりすることで、売り上げ・利益の飛躍的向上を図る経営に必要不可欠な活動」です。従って、社内に埋もれた無駄なコストや、売上機会損失を見つけ出すことから、『埋蔵金探し』といえるのです。

 すなわち、業務改革推進活動は、決して「コストセンター的活動」ではなく、売り上げ・利益に貢献する立派な「プロフィットセンター活動」であり、業務改革推進リーダーは、プロフィットセンター長としての重責を担っていることになります。

業務改革推進リーダーの悩みの種は?

 「業務改革推進活動」は重責であるが故に、一朝一夕でできるものではありません。筆者が実際に相談を受けている「業務改革推進リーダー」(以下、業革リーダー)の悩みは、主に以下のような内容です。

(1)社長からは、「短期間に自力でやれ」や「当然効果を出せ」と求められているが、どこから手を付けてよいのか分からない

(2)実務部門に聞いても、「もう改善はし尽くしている」と切り返される

(3)そもそも実務部門が忙し過ぎて、ヒヤリングの時間を取ってももらえない

 このほかにも、まだまだたくさんあります。上記のような状況で、業革リーダーは、「うちの会社は特殊で、忙し過ぎるから」と半分あきらめていらっしゃいませんか? しかし、あきらめるにはまだ早いです。筆者が実践して効果を上げている「効果的改革ポイントを素早く見つけ出すノウハウ」を以下に紹介します。

大切なポイントは1つ=“金脈”を正しくとらえること

間違って“金脈”をとらえている例

 業革リーダーに任命されたあなたが、まず各部の部長へ相談すると、返ってくる答えは決まって、「うちの部は、尽くす手はすべてし尽くしているから、改善の余地はないよ」ではありませんか? 筆者も部長のいい分は、正しいと思います。すなわち、部ごとの業務をどんなに丁寧にトレースしても、埋蔵金は見つからないでしょう(図1)。見つかったとしても、小判数枚程度でしょう。

ALT 図1 各部の業務をトレースしても(莫大な)埋蔵金は見つからない

なぜ、部門内の業務の流れは“金脈”でないのか?

 部門内の業務改善は、各部門長の責務です。もし、図1で改善点が見つかれば、それは部門長の職務怠慢です。一般的には、日々の業務の中で何度も繰り返されている業務については、部門長のみならず、マネージャ以下実務担当者が、自らより良い手順を考えて、サークル活動などで実行していることでしょう。つまり、すでに採掘し尽くされているのが、図1のルートです。

“金脈”はどこか?

 実は、金脈はビジネスチェーン上の「部門間」と「会社間」にあります。業革リーダーは、視点を変えて見ることが必要です。すると、図1で改善し尽くされていたと思っていた業務プロセスも、会社全体においては決して最適ではないということが往々にしてあります。なぜでしょうか?

 それは、会社が組織(部)で成り立ち、組織の各部門に権限と責任が振り分けられているためです。例えば、営業部は、受注ノルマを達成する責務があります。そのために営業活動し、社内に必要な手配を掛けます。製造部は、販売計画に基づく製造計画において、欠品しないように、かつ余剰在庫にならないように、納期を守れるようにリソースを平準化した製造計画を立て、実行する責務があります。資材は、調達計画に基づき、購入費を低減する責務があります。これは一見、上記の各部門がそれぞれの責務を全うすればビジネスが最適になると思いがちですが、そこに見落としがあります。部門間や会社間こそ、手付かずの金脈であり、業革リーダーが埋蔵金を掘り当てることのできる採掘現場となるのです(図2)。

ALT 図2 “金脈”は、ビジネスチェーン上の「部門間」と「会社間」にあり

埋蔵金発見の成功事例

 ある加工会社のオーダー受付部門は、VANとFAXの2種類のオーダーを扱っていました。業務量をシミュレーションしてみたところ、予想どおり、FAXを扱うことによる業務量が上位を占めていました(図3)。このオーダー受付部門の業務の流れ/手順を見る限りにおいては、特に無駄は見つからなかったのですが、FAXオーダーの発行元を調べたところ、なんと関連工事子会社からのオーダーが半数を占めていました。

 会社間のビジネスチェーンは図4のとおりで、関連工事子会社からはVANでオーダーするルートもあるのですが、使われていなかったのです。以後、関連会社からはVAN入力のみとするビジネスルールを徹底することで、業務量を半減することができました。もちろん、関連工事子会社側も手書きでオーダー記入してFAXするより、直接VAN入力することで業務量削減につながったことはいうまでもありません。これは、VAN導入前からあったFAXでオーダーする慣習がそのまま残ってしまい、お互いがお互いの業務量を増加させていた会社間の問題(埋蔵金)を発見した事例です。

ALT 図3 オーダー受付部門の業務量半減を目指した業務分析
ALT 図4 問題ルートの発見
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