IT業界記者によるリレーコラム
IT Business フロントライン(116)
楽天に騒動、再び?
巨大モールとプロ加盟店の温度差
高橋智明
2003/5/16
電子モール事業で一人勝ちを続ける楽天だが、今春も出店企業に不穏な動きが出ている。「今春も」と書いたのは、昨年も「楽天市場」の料金体系の大幅変更で、大いにもめたからだ。
■繰り返される加盟店との摩擦
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そして今年は、楽天市場のポイント・サービスとアフィリエイト・サービスが火種となりそうなのだ。どちらも昨年、「従量制による料金の値上げ分は、楽天市場の売り上げを増加させるための新しいサービスや仕組みの開発など、出店企業のために投資する」として、新規に導入された経緯がある。
これまでは、ポイントの原資とアフィリエイトの提携サイトに支払う報酬を楽天が負担してきた。それが5月1日からは、出店企業が負担するように変更された。「われわれにはコスト増になるのに、知らされたのは4月の初め。昨年の料金体系変更の時、通知から実施まで期間が短すぎるとあれほど苦情を言ったのに、また同じことをやられた」(ある有力加盟店社長)との点もさることながら、サービス内容そのものにも不満の声が上がっている。
■加盟店側の不満と行動
楽天市場のポイント制度は、料率が購入価格の1%で、利用者が貯めたポイントはどの店舗でも使える仕組みだ。「家電量販店では10%や20%のポイントが当たり前の時代に、1%では客の購買意欲を刺激しない。しかも、ほかの店で使えるのでは、客の囲い込みにもならない」(前出の社長)と手厳しい。
またアフィリエイト・サービスについても別の有力加盟店の社長は、「通常のアフィリエイトでは利用企業は提携サイトを選ぶことが可能だが、楽天のアフィリエイトはそれができない。そのため、提携したくないサイトでも、リンクを貼られるのを拒否できない。この点は、楽天のアフィリエイトの大きな欠陥だ」と指摘する。
加盟店側の言い分を総合すると、「ポイントにしてもアフィリエイトにしても、もっとメリットを実感できるような状態になってから、負担を要請すべきだ」となる。
こうした加盟店の不満の象徴ともとれる動きがある。4月に設立された、日本ネットビジネス協会がそれ。構成メンバーは、カニ販売の「北国からの贈り物」やハム販売の米久など、楽天市場の有力出店企業が中心となっている。会長には、楽天市場で月間5000万円のワインを売り上げる「ワイナリー和泉屋」の新井治彦社長が就いた。キリンビールやグンゼ、トリンプインターナショナルなど、大企業も参加している。
各参加企業は、すでに昨年から何度か会合を持っていた。今年秋には、共同で電子モールを開設する計画。楽天とは異なるデザインのWebサイトや楽天にはない販促ツールなどを利用して、オンライン販売を試してみる。参加企業はなかなか認めたがらないが、この協会の目的の1つは、年々出店企業への課金を強化する楽天から、いざというときに脱出できる体制を作り上げることであるはずだ。
■誰がための電子モール
こうした動きは、これが始めてではない。2000年末に、楽天市場の有力加盟店が集結して、市場内に共同店舗を構えようとしたことがある。共同店舗で、プレゼントなどの販促キャンペーンを行って集客。客の電子メールアドレスも、参加企業が相互利用する計画だった。加盟店の中には、「多くのメールアドレスが集まれば、楽天を抜けても十分に商売が成り立つ」と目論むところもあった。ところが、“脱楽天市場”の前例ができることを恐れた楽天側が、開店後数日でこの共同店舗を閉鎖してしまったのだ。
実はこの共同店舗にかかわっていた加盟店のうちかなりの店舗が、ネットビジネス協会にすでに参加しているか、あるいはこれから参加しようとしている。売れている加盟店ほど楽天への依存度を下げようとする傾向は、3年前と変わらないということだろう。
もともと楽天市場は、電子モールとしては超格安料金でスタートしている。そのため料金改定や新サービスの追加は、加盟店にとっては値上げとなることがほとんどだ。ただし気になるのは、通知の時期が遅い、説明が十分でないなど、値上げそのものと同様かそれ以上に、値上げ実施までのプロセスに対する不満の声が強いこと。三木谷社長を含め一流大卒の経営陣と、小売りのプロである加盟店との間に、少しずつすき間が広がりつつあるように思うのは、うがちすぎだろうか。
| Profile |
| 高橋智明(たかはし ともあき) 1965年兵庫県姫路市出身。某国立大学工学部卒業後、メーカー勤務などを経て、1995年から経済誌やIT専門誌の編集部に勤務。現在は、主にインターネットビジネスを取材している。 |
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