特別企画:ITSSの現状を探る

ITSSを経営に100%生かすポイントとは?

井上 実
2005/5/19

5 ITSSがより経営に有効活用されるためには

 ITSSを活用した人財開発戦略を立案し、施策の実施、評価することによりITSSを経営に効果的に活用することができるが、より有効に活用するためには、次の2つの点に留意する必要がある。

(1)人材から人財への経営者の意識改革

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 経営者が、人を材料・資源として見るのか、資本として見るのかによって、人財開発に投下する資金は費用として見るか、投資として見るかという相違が発生する。当然、費用として考える資金と投資として考える資金とでは、金額面で大きな差が出てくる。

 また、投資であれば回収しなければならない。人財開発に投下された投資は教育結果だけで回収することはできず、バランスト・スコアカードの内部プロセス、顧客の視点を経て、財務の視点に至ることにより、初めて回収されるものである。回収に至るまではKPIとして途中経過を評価していくことも必要である。

 人材から人財へ経営者が意識を変えることで、投下される資金も費用から投資に変わり、投資回収が経営戦略の中でモニタリングされることにより、ITSSをより経営に有効活用することができるようになる。

(2)場当たり的な人材開発から中長期での人財開発へ

 従来は、ITの新しい技術や資格を追うことがIT人材開発であるという傾向があり短期的なIT人材開発が主体であったが、それでは経営戦略に合致した人財を開発することはできない。中長期で策定された経営戦略が毎年見直されてローリングされるのに合わせて、人財開発戦略も中長期で策定され、毎年見直し、ローリングされる必要がある。

 景気が悪くなると真っ先に削減対象となる3K(広告費、交際費、教育費)の1つとしてではなく、中長期で人財開発に取り組む姿勢がいま企業に求められている。

 ITSSが本来の目的に沿った導入が日本の多くの企業で進み、日本企業の競争力の強化に効果を上げることを期待したい。

<参考文献>
  1. 経済産業省、「ITスキル標準V1.1」、2003年7月
  2. IPA、「ITスキル標準概説書第2版」、ITスキル標準センター、2004年3月
  3. 日経コンピュータ2005年3月7日号、「特集 離陸するITスキル標準」、日経BP社、2005年3月7日

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index
ITSSを経営に100%生かすポイントとは?
  Page 1
本格化するITSS導入
  Page 2
ITSS導入の一般的な問題点
本質的な課題を抱えるITSS導入
  Page 3
ITSSを経営に100%生かすためには
Page 4
ITSSがより経営に有効活用されるためには

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■要約
ITSSが発表されてから、2年半が経過した。その間、大手ITベンダを中心にユーザー企業やシステム子会社でも導入が進んできている。一方で、ITSS本来の目的とは異なり、顧客企業との人月単価交渉に利用しようとする事例も目に付き始めている。現在のITSS導入の現状や経営に生かすポイントはどこか考えてみる。

ITSSは大手ITベンダを中心に導入が本格化し、中堅規模ベンダにも広がりつつある。一方で、「ITSSの職種分類が細か過ぎる」「ITSSで未定義のスキルが必要になる」「スキルを第三者が評価する仕組みがない」といった問題も浮上してきた。また、人材棚卸しを優先させたITSSの導入の問題も起きている。

このような問題から、人を資源としてではなく資本として見るべきであるという考え方が広まりつつある。また、ITSSを活用した人財開発戦略を立案し、施策の実施、評価をすることによって、ITSSを経営に効果的に活用することができる。さらに、従来の短期的なIT人材開発といった場当たり的な人材開発から中長期での人財開発への変更が必要だ。

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profile
井上 実 (いのうえ みのる)

横浜市立大学文理学部理科卒。
多摩大学大学院経営情報学研究科修士課程修了。
グローバルナレッジネットワーク株式会社勤務。

▼専門分野など
人財開発戦略コンサルティングを担当。中小企業診断士、システムアナリスト、ITコーディネータ。第4回清水晶記念マーケティング論文賞入賞。平成10年度中小企業経営診断シンポジウム中小企業診断協会賞受賞。


▼著書
「システムアナリスト合格対策(共著)」(経林書房)
「システムアナリスト過去問題&分析(共著)」(経林書房)
「情報処理技術者用語辞典(共著)」(日経BP社)
「ITソリューション 〜戦略的情報化に向けて〜(共著)」(同友館)


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