
| 連載 | 有能プロジェクトマネージャ育成術(5) |
“できるPM”の組織的総合育成策を考える
大上 建株式会社プライド
2004/12/18
| - | (3)PMノウハウを意識したOJT |
- - PR -
しかも厄介なことに、この勘所と達成水準は事前にすべてを挙げて説明できるようなものではなく、有能者自身、PMノウハウを使うその場で状況に迫られて決断したり、新たなものを生み出したりしているのである。
これを伝えるのに最も適した方法がOJTである。しかし「はしの上げ下ろし」レベルのOJTでは育成することはできない。教えるのはコンセプトである。最初にPMノウハウのコンセプトだけを教え、矢面に立たせて自分で考えさせ、そして失敗させるのである。失敗といっても取り返しのつかないところまで放置するのではない。一般PMが使おうとしたPMノウハウの実践において、「自分ならこうするのに」と思うその差を、その実践から時間を置かずに、コンセプトに再度照らし合わせて差を解説し、この場合どうすべきだったかを問うようなOJTを行うのである。
このようなOJTを実現するために、有能PM1人に対して重点育成対象のPMを2人までセットにしてOJT体制を取ることにした。
| - | (4)PMノウハウのメソドロジ化 |
先に全PMにレビューを実施して確認したように、PMノウハウをメソドロジ化して普及することが有効である。いまの時点ではプロトタイプができているだけなので、今後整備していく必要がある。
そこで、選抜された有能PMから抽出したPMノウハウに加えて、今後PMノウハウ拡充会議やPMノウハウを意識したOJTの現場で生み出されたノウハウを対象に、手順化しやすく重要なものを継続的にメソドロジとして整備・普及することとした。
継続的なメソドロジの整備・普及には、これを担当する体制が必要となる。E社ではこれをすでに設置していたPMO(プロジェクトマネジメント・オフィス)で行うこととした。PMOをPMノウハウのセンターとするのである。
E社では、これまで設置したPMOの位置付けがいまひとつ不明確であり、各PMやライン部門長からは中途半端だとの指摘も上がっていた。しかしPMノウハウ拡充会議を主催し、その場においてOJT成果も含めて新たなPMノウハウおよび既存PMノウハウに対する勘所や達成基準の充実されたものの収集を行い、これをメソドロジに反映し、PMへの提供と個別プロジェクト支援を通じて普及を図っていくのである。これによって社内でのPMOの位置付けも明確になる。
| - | (5)活動のPDCA |
E社では、これらの活動を3カ月後に評価し、改善することとビジョン評価を行うこととした。当面の活動目標は、OJTでの重点育成対象のPMが、最低2つ以上のPMノウハウを使いこなせるようにすることである。
今後は基本的に3カ月サイクルのPDCAを回し、目標の再設定と必要であればビジョンの改定を行い、活動を点検して効果を上げていくこととした。
◇
これまで5回に分けて、PMノウハウをえぐり出し、体系化し、組織的に共有する方法について、モデルケースを例に紹介した。この方法は、メソドロジのフレームワークを用いた技術である。しかし技術論だけでは育成は成功しない。モデルケースからも理解できるように、トップがリーダーシップを執って推進し、育成対象のPMが本当に自らの成長のために執着心を持って取り組むうえで技術が生きるのである。
本稿執筆中に、われわれは多くの顧客とPM育成問題についてディスカッションを行ってきた。そこで新たに分かったことは、一部の企業にとって2007年問題が人材育成の面で大きくのしかかっている実態である。特に1990年代初頭に先進ユーザーと呼ばれた企業では、情報システム部門やその情報システム子会社で、後進の層が薄く育成が十分でないままに、常に先頭に立って切り開いてきた人材が残り数年でリタイアしようとしている。独立系のSI企業では比較的若い人材が多いが、それでも総合的に一貫した工程を経験し、優秀なPMとなった人材が、そのノウハウを伝え切らないまま管理職に上がってしまっている現状がある。過去には仕事が人を鍛えたが、いまでは人がうまく鍛えられるような、総合的で一貫した仕事は極めてまれになっているのである。
このような重大なノウハウ継承問題に対して、PMノウハウの組織的共有技術は有効である。
本連載は今回で終了です。ご愛読ありがとうございました。
| 3/3 |
|
||||||
|
||||||
|
|
| ■要約 E社の経営陣はプロジェクトHKに対して、PMを育成する方策を練るよう指示を下した。プロジェクトHKでは、PMノウハウに関して全PMで共有・合意する会議を行い、気付きを得た人たちの自律的なPMノウハウの創造と活用をスタートした。 会議でのやり取りから、どんなPMノウハウも見聞きしただけでは自分のものとならず、自分なりに組み立てて実践し、経験を積むことの必要性が認識され、各一般PMはそれぞれ、いくつかのPMノウハウを重点的に選び、自律的に取り組むこととした。 また、有能PMが意識せずに実施しているインフォーマルなノウハウの交換(立ち話など)を、公式な会議体に引き上げることにもなった。 PMノウハウを伝えるのに最も適した方法がOJTである。有能PM1人に対して重点育成対象のPMを2人までセットにしてOJT体制を取ることにした。 またE社では、PMノウハウをメソドロジ化して整備・普及する活動を継続的に行う組織として、PMO(プロジェクトマネジメント・オフィス)を整備すると共に、これらの活動を3カ月後に評価し、改善することとビジョン評価を行うことにした。 |
|
|
| ▲記事の先頭<Page1>に戻る |
| profile | |
|
有能プロジェクトマネージャ育成術 バックナンバー
- 第1回 ハイ・パフォーマーの“知”は、移転・共有できるか?
- 第2回 できるプロジェクトマネージャのノウハウとは?
- 第3回 「できるPM」と「それなりPM」との差とは?
- 第4回 できるPMのノウハウを形式知化する“メソドロジ”
- 第5回 組織的、総合的に“できるPM”を育成する方法
| 「有能プロジェクトマネージャ育成術」 |
|
ホワイトペーパー(TechTargetジャパン)
|
|

