ここからは、日本企業にとっての中国オフショア開発に特化して話を進めます。 まず、中国ITアウトソーシング全般について考えてみましょう。中国へのアウトソーシングビジネスは、大きく2種類に大別されます。
技術者派遣モデルとは、技術者1人当たりの人月単価を定めて、一定期間確保する業種です。研究室のように一定の技術者を確保することから「ラボ」とも呼ばれます。一方、サービスプロバイダ・モデルとは、受託開発や保守運用、さらには付加価値の高い業務サービスを提供する業種のことを指します。現在のサービスプロバイダ・モデルでは、次のような業務が対象となります。
一般に日本企業になじみが深いのは、前者の技術者派遣モデルです。
しかしながら、現在の中国ソフトウェア業界の人材分布をかんがみると、“均一な人材”を大量に要する対日ITアウトソーシング業務が確立されるのは、もう少し時間がかかりそうな気がします。なぜなら、中国ベンダが一丸となってプロジェクトを推進するには、まだ個人の協調性が成熟しているとはいい難いからです。
その一方で、サービスプロバイダ・モデルは魅力があります。このモデルは、少数精鋭のリーダー層と普通の保守運用要員の組み合わせでも十分に運営が成り立つからです。実際、欧米やインドでは、こちらの方が主流になっています。しばらくは、中国市場の動向に歩調を合わせながら着実に成長を続けるでしょう。
総務/人事に関するサービスプロバイダ・モデルの事例を1つ紹介します。
2004年7月、人事・給与パッケージで有名なワークスアプリケーションズは、中国系企業とパートナーシップを結び、中国大連にBPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)とASPサービスを提供する合弁会社を設立しました。生産拠点の中国移転に伴い、生産管理ソフトベンダが中国進出する例はよく耳にします。ところが、人事・給与パッケージベンダの中国進出は珍しいといえるでしょう。BPOは大連を中心に盛り上がっており、同社の初年度販売目標は3億円で、5年後に100億円以上を目指しています。なお、この分野では外資系企業が先行しています。
一足先に中国進出を果たした製造業では、国際的なサプライチェーン・マネジメントシステムを軸にして、経済レベルの上位国でルール作りを行い、下位国では生産を行いつつマーケットを形成していくことが成長モデルとなっています。
将来的には、わが国のソフトウェア業界でも、単純な受託案件を中国オフショアで開発するだけではなく、自社製品を中国市場で販売したり、他製品と連携させるなどさまざまな可能性を探りながら展開していくべきでしょう。
大規模プロジェクトを通じて大幅な原価削減を図る際には、中国オフショア開発は大きな魅力があります。しかし、単に費用削減を狙った中国オフショア開発では、期待どおりの効果が上がらないこともあります。
近年、加熱気味の中国シフトに対して、各方面からさまざまな警告がなされています。最悪の場合、中国人社員の定着率の悪さから、事業継続が困難になるという事態が発生します。以下に代表的な問題点を4つ挙げます。
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