連載 オフショア開発時代の「開発コーディネータ」(3)

なぜ、中国オフショア開発の見積もりは高いのか?

幸地 司
アイコーチ有限会社
2004/11/12

- リスクを考慮したプロジェクト計画を策定する

 オフショア開発にはさまざまな形態がありますが、基本的には以下の流れに沿って進められます。今回は、特に立ち上げの段階で注意すべき点を整理します。

■中国オフショア開発の目標、範囲と前提条件を明確化する

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 中国オフショア開発では、中期的な目標を詳細に打ち出し、当該プロジェクトの委託範囲や前提条件などを定め、プロジェクト計画書に記載します。中国オフショア開発に必要な条件はすべて明確に文書化することが第1のポイントです。

 プロジェクト計画書は、社内だけで用いる形式的な帳票ではありません。開発委託契約を交わす前に、中国ベンダに対して十分に説明する義務があります。そして、双方が納得したうえでプロジェクトをスタートする方が望ましいでしょう。

(中国オフショア開発プロジェクト計画書の作成)

 通常、中国オフショア開発の方針が決定してから実際に発注に至るまで、2カ月程度はかかります。ベンダ選定に手間取ると、その期間が半年以上になることも珍しくありません。その間は、発注元、契約や輸出手続きの管理部署、および中国オフショア開発コーディネータの3者で意識合わせを行うことにより、立ち上げ作業の円滑化を図ります。

 発注対象となるプロジェクトの概要、開発技術、発注工程、阻害要因などを洗い出して、中国オフショア開発のプロジェクト計画書にまとめましょう。

プロジェクト計画書の内容
1. プロジェクト概要
2. 適用範囲と適用期間
3. スケジュール
4. 体制と役割分担
5. コミュニケーション計画
6. 品質計画
7. セキュリティ計画
8. サービスレベルの管理項目・管理指標

- オフショア開発をスムーズに立ち上げるアプローチ

■質問
 中国ベンダから見積もり回答がありましたが、日本企業の感覚とは少し違うようです。どのように評価すればよいでしょうか?(東京都Nさん、ほか多数)

■回答
 中国ベンダが作成した見積もり/スケジュールを評価する際には、必要な作業がすべて洗い出されているか、それらがスケジュールに反映されているかどうかを確認します。中国固有のコスト/工数の一覧表を作成して、中国ベンダと共同で漏れがないかどうかをチェックしてください。

●留意すべき中国オフショア開発固有のコスト

  • ブリッジSE/開発コーディネータ費用
  • 中国側の開発環境構築費用
  • 日本側技術者の訪中費用
  • 仕様変更管理費用

●忘れがちな作業項目

  • 納入ドキュメントや定型帳票のサンプル(記入凡例)の整備
  • Q&A/レビューに迅速に対応するための日本側の体制構築
  • 中国ベンダ教育工数
  • 輸出管理工数

■解説
 オフショア開発の委託先を「パートナーではなく格下の部品調達先」としてとらえていると、相手方が提示した見積もり/スケジュールを共同レビューするという発想は生まれないかもしれません。

 正式発注前に共同レビューを必要とする背景には、現状の中国ベンダの見積もり能力は、日本企業と対等に議論する域に達していない、という考えがあります。中国オフショア開発では、長期的な取引の後で初めてコストメリットにありつけます。中国ベンダが妙な悪知恵を付ける前に、自社好みの契約方針を教え込んだ方が賢明だというわけです。

 株式会社エス・キュー・シーの倉田克徳氏は、現在のオフショア開発は「グローバル・ソーシング・モデル」と呼ばれる『世界規模の調達モデル』に発展すると予想しています。そこは、従来の「お客さまvs.業者」といった枠組みを超えた新しい価値観が支配するマーケットです。先進的な欧米企業の一部は、グローバル・マーケットを見据えた戦略的な取り組みに着手しています。オフショア開発に活路を見いだす日本企業にとっては、また新しい挑戦が始まろうとしているのです。

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日本の甘え体質では、やっていけなくなる
中国ベンダの見積もりは高過ぎるのか?
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オフショア開発をスムーズに立ち上げるアプローチ

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■要約
「コスト削減のためにオフショア開発を取り入れたものの、実際には納期と品質を確保するだけで精いっぱい」、このように訴える日本企業は多い。今回は、オフショア開発の隠れたコスト要因を明らかにして、効果的なプロジェクト計画書の作り方やスムーズなオフショア開発立ち上げを実現するアプローチを紹介する。

中国ベンダの見積もり回答は、予想以上に見積もり工数が多いことがある。これは、日本のベンダ相手では発生しない、中国オフショア開発ならではの工程が含まれるからだ。具体的には、「作業工程の違い」や「翻訳作業」「オフショア開発終了後の保守作業費用に関するもの」が挙げられる。中国ベンダに発注する際にはこのような特殊事情も考慮する必要がある。

このような特殊事情も考慮したオフショア開発立ち上げ時には、「中国オフショア開発の目標、範囲と前提条件を明確化する」ことが重要となる。さらに、計画書の作成に当たっては、プロジェクトの概要や発注工程、阻害要因などを洗い出して明記する必要がある。今後、オフショア開発は「グローバル・ソーシング・モデル」と呼ばれる『世界規模の調達モデル』に発展すると予測されている。日本企業には、さらなる新しい挑戦が待ち受けている。

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幸地 司(こうち つかさ)
アイコーチ有限会社 代表取締役
沖縄生まれ。九州大学大学院修了。株式会社リコーで画像技術の研究開発に従事、中国系ベンチャー企業のコンサルティング部門マネージャ職を経て、2003年にアイコーチ有限会社を設立。日本唯一の中国オフショア開発専門コンサルタントとして、ベンダや顧客企業の戦略策定段階から中国プロジェクトに参画。技術力に裏付けられた実践指導もさることながら、言葉や文化の違いを吸収してプロジェクト全体を最適化する調整手腕にも定評あり。日刊メールマガジン「中国ビジネス入門 〜失敗しない対中交渉〜」や社長ブログの執筆を手がける傍ら、首都圏を中心にセミナー活動をこなす。
http://www.ai-coach.com/


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