データウェアハウス最前線(4)

アプライアンスを基盤にした「情報分析システム」

吉村 哲樹
2010/12/6

汎用サーバとデータベース管理システム「IBM DB2」を組み合わせたDWHアプライアンスを提供しているIBM。同社の狙いは汎用品の組み合わせで導入コストを下げるだけでなく、業務用ソフトウェアまで組み合わせた分析システムを作ることにある(編集部)

Smart Analytics Systemを基盤に分析システムを構築

 近年のデータウェアハウス(以下、DWH)市場では、専用のハードウェアとソフトウェアで構築した高性能アプライアンス製品が注目を集めている。その一方で、汎用のソフトウェアとハードウェアを組み合わせたアプライアンス製品や、そのアプライアンスを基盤にした情報分析システムを前面に押し出しているベンダも少なくない。日本IBMもその一社だ。汎用のリレーショナルデータベース管理システム「IBM DB2」と、同社の汎用サーバや汎用ストレージ機器を組み合わせ、DWH用途向けに最適な設定を施した「IBM Smart Analytics System」(以下、ISAS)を提供している。

 汎用製品の組み合わせと聞くと、専用ハードウェアを利用したアプライアンス製品に比べて性能が劣るのではないかと懸念する方もいるかもしれない。しかしISASは、「DB2がもともと備えている分散処理技術により十分な性能を発揮する」という(日本IBM ソフトウェア事業 インフォメーション・マネジメント事業部 InfoSphere営業部の部長を務める森英人氏)。

 また、メインフレームからPOWERプロセッサ搭載サーバ、インテルアーキテクチャのサーバとさまざまなハードウェアを使用した製品を用意しているのも特徴だ。最も安価な製品は、インテルアーキテクチャを採用したもので、400万円台という値付けになっている。

 そして、ISASは汎用製品のみで構成しているため、システムを柔軟に構築できるというメリットがある。ISASはハードウェアとリレーショナルデータベース管理システムだけではなく、BIツール「Cognos 8 Business Intelligence」やデータマイニングツール「SPSS」などとの組み合わせで提供される。しかも、個々のパッケージ製品をそのまま提供するのではなく、あらかじめシステムとこれらのツールが最適な形で連携するように設定を済ませた形で提供されるという。

 ISASと統合するソフトウェアは、BIツールやデータマイニングツールに限らない。近年は、特定の業種・業態に向けたソフトウェアと組み合わせたシステムの基盤としてISASを提供する例が多いという。特に最近は、病院向けのシステムとしてISASを提供する例が増えてきているという。森氏は、次のように説明する。

 「近年、経営状態が悪化して倒産する病院が増えてきているが、病院を訪れる患者の数自体は全体としては増えている。経営分析さえきちんとやれば、多くの病院は黒字化できるはず。そういう問題意識を持つ病院からの引き合いが多い」(森氏)

 病院向けには、IBMがもともと持っている病院向け経営管理ソフトウェアのテンプレートとISASをあらかじめ統合して、分析システムとして提供する。ISASの最も安価な製品は400万円台で導入できる。これにソフトウェアやシステム構築の費用を加えても、1000万円を切る価格で提供できるという。経営がひっ迫している病院でも、この価格ならば十分に検討できるだろう。

 しかし、それ以上に重要なのは、すぐに使えるシステムとしてユーザーに価値を提供できる点にあるのだという。病院が本当に必要としているのは、診療報酬やスタッフの勤務状況などのデータから、正確に経営状態を分析するシステムだ。どのデータベースを使うか、どのハードウェアを採用するかは、ユーザーにとって重要なことではない。

 「結局ユーザーが求めているのは、決して高性能なデータベースマシンではなく、システム全体をパッケージとして早く、安く提供してほしいということだ。病院におけるISASの導入事例は、そのことを如実に表している」(森氏)

「InfoSphere Warehouse Pack」を組み合わせる

 先に紹介した病院の例は、ISASをソフトウェアと組み合わせた分析システムの一例だ。IBMではほかにも、多様な業種・業態にそれぞれ合わせたシステムを提供する「Industry Frameworks」を展開しており、ISASがその基盤となるデータベースの役割を果たすケースも多いという。

 その一方で、各業種・業態に共通するシステムもパッケージとして提供している。それが、「InfoSphere Warehouse Pack」(以下、Warehouse Pack)だ。業種・業態間で共通する用途としては、例えば顧客データから何らかの洞察を得て、仮説を導き出すようなデータ分析のニーズがある。Warehouse Packでは、これを「InfoSphere Warehouse Pack for Customer Insight」というパッケージとして、顧客データ分析のために必要なデータモデルをあらかじめISASに実装して提供している。ユーザーはISASを導入する際に、実装済みの各種テーブルにデータをロードするだけで、顧客データの分析作業を始められる。

 InfoSphere Warehouse Pack for Customer Insightのほかにも、Warehouse Packには「InfoSphere Warehouse Pack for Market and Campaign Insight」「InfoSphere Warehouse Pack for Supply Chain Insight」といった製品がある。それぞれ、マーケティング・キャンペーン業務やサプライチェーン管理業務用のデータモデルや分析モデルを、ISASに実装してユーザーに提供される。

図3

ハードウェアとDWHソフトウェアだけを提供するのではなく、業務に適したソフトウエアを組み合わせて、すぐ使える形で提供している

 こうしたIBMのDWHシステム戦略について、森氏は次のように述べる。

 「ISASは従来、CognosやSPSSなどの分析ツールをあらかじめ統合し、ユーザーのシステムインテグレーションリスクを最小化した形で提供されてきた。しかし今後は分析ツールだけではなく、その上位のソフトウェアも含めて提供していく。Warehouse Packはそうしたシステムを、分析業務の種類ごとにパッケージとして提供するものだ。DB2やCognos、SPSSなどは、それらシステムを裏で支える存在にすぎない」

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アプライアンスを基盤にした「情報分析システム」
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Smart Analytics Systemを基盤に分析システムを構築
「InfoSphere Warehouse Pack」を組み合わせる

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さまざまな業種・業態に合わせたシステム
ネティーザの買収で明確になったISASのシステム志向

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