Database Watch 7月版

データベース業界の戦国地図をウォッチ!
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加山恵美
2004/07/16

 本連載はデータベースに関連するトピックやイベント、ベンダやコミュニティの動向などをコラム形式で毎月お届けします。範囲は広いですが頑張りますので、温かく見守ってくださると幸いです。私のエンジニア時代はグループウェアが中心で、本格的で大規模なRDBMSの経験があるとはいえませんので、新たに学び直す気持ちで動向観測に励みたいと思います。どうぞよろしくお願いします。まず初回は観測範囲のご案内から。

商用RDBMS

 ソフトウェア企業の製品として販売されている商用RDBMSには、まずIBM製品と親和性の高いIBMのDB2 Universal Database、基幹業務での普及率や資格制度などでエンジニア側からの認知度の高いオラクル社のOracle Database、運用管理の手軽さにより中小規模での導入率が高いマイクロソフト社のMicrosoft SQL Serverがあります。

 各製品の最新バージョンは、DB2 UDB V8.1、Oracle Database 10g、Microsoft SQL Server 2000であることはご存じでしょう。Oracle 10gは2004年春にリリースされました。DB2の次期バージョンはStingerと呼ばれ、2004年内にリリースされるといわれています。マイクロソフト社のSQL Serverは現行バージョンが2000といかにも出遅れ気味の印象ですが、2005年中には待望の次期バージョンYukon(SQL Server 2005)がリリース予定です。

 この3製品の最新バージョンあるいは次期バージョンでは、各ベンダがそれぞれ個性的なコンセプトを打ち出して、ライバル製品に対する優位性をアピールしています。

 IBMは従来打ち出してきた「オートノミック(自律型)コンピューティング」という思想をStingerではさらに推し進め、豊富なGUIツールを用意することでデータベースの運用管理コストを低減できるとしています。オラクル社はOracle 10gより「エンタープライズ・グリッド・コンピューティング」という思想を前面に打ち出すようになりました。これは「ストレージとサーバのプールをビジネスに不可欠なアプリケーションや情報サービスに割り当て可能なように配置および管理する方法」と定義されているようです。マイクロソフト社は、データ分析やレポーティング機能といった、従来はBI(ビジネス・インテリジェンス)製品が提供するビジネス寄りの機能をYukonに基本機能として搭載し、「次世代情報管理ソリューション」を実現しようとしています。

 日本企業も頑張っています。日立のHiRDBや富士通Symfowareの国産RDBMSもあります。どちらの製品も地味な印象はぬぐえませんが、ミッションクリティカルな基幹業務を支えている実績があります。まだあります。金融業界に強いSybase社にはAdaptive Server Enterpriseがあり、同社から独立したiAnywareにはモバイル向けで高いシェアを持つAdaptive Server Anywhereがあります。

 商用RDBMSは大規模な基幹業務に耐え得るほどの信頼性や機能を保有し、サポートや技術情報などの企業からのバックアップも強力です。近年ではセキュリティやモバイルでの利用に注目が集まっています。

 また各種商用RDBMS製品はその企業のビジョンが開発を主導し、特徴に影響してきます。そうしたビジョンは適した運用方法やバージョンアップ時の機能強化点に現れるだけではなく、新しい使い方やソリューションのトレンドを生み出すこともあります。

オープンソースRDBMS

 ネットのユーザーコミュニティを中心に構築されたオープンソースのRDBMSもあります。商用RDBMSと違い、ユーザーが必要とする機能が優先的に盛り込まれているので、それが特徴となって現れてきています。

 FreeBSDも生み出したカリフォルニア大学バークレー校で長年開発されている本格志向のPostgreSQL、主に問い合わせで使うことを考え検索速度向上に優先度を高くしているMySQL(日本の代理店はソフトエイジェンシー社)、Inprise社(現ボーランド社)の商用RDBMS製品「InterBase」がオープンソース化されたのがFirebirdです。システム開発の現場では、開発ツールからサーバアプリケーション、ミドルウェアまでオープンソース化の波が打ち寄せています。バックエンドのデータベースもいずれは、オープンソースRDBMSが活躍することになるのかもしれません。

 なぜかオープンソースのRDBMSにはどれも動物をモチーフにしたマークが見受けられます。PostgreSQLは象(日本ではカメ)、MySQLはイルカ、Firebirdはいうまでもなく火の鳥です。それぞれのマークはユーザーの愛着や独自性を象徴しているようにも見えます。

 次ページでは個性派データベースと呼べるオブジェクト指向/XMLデータベース、開発や管理を容易にするツール製品、開発者が集まるコミュニティサイト、ベンダ試験を見ていきます。(次ページへ続く)

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 Index
連載 Database Watch 7月版
データベース業界の戦国地図をウォッチ!
Page 1
商用RDBMS
オープンソースRDBMS
  Page 2
オブジェクト指向/XMLデータベース
データベース関連ツール
開発者コミュニティ
各種試験情報


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