Database Watch 9月版 Page 1

SMB市場、コミュニティ活性化でも
火花を散らすビッグ3


加山恵美
2004/09/18

 夏の暑さと台風の発生数って関係があるのだろうか? と疑問に思う今日このごろです。近年のデータベース市場といえば、商用データベースは中小企業に、オープンソース系データベースは大規模運用に向かい、両者が両側から攻めていますよね。もっと近づいたらどうなるのでしょうか。

SMBが新たな主戦場となりつつあるビッグ3

 商用RDBMSというと、当初は「高価だけど大規模での運用に強い」というイメージがありました。しかし近年はどの商用データベースベンダも中小企業での採用に本腰を入れ、これまで本格的商用RDBMS導入に踏み切れずにいる中小企業へも積極的にアプローチしています。

 もはや商用RDBMSベンダがアプローチする顧客は大企業だけではなくなりました。大企業には大規模な運用でも堅牢性が維持されるように、中小企業には気軽に手軽に使えるようにと戦略を分けるなど、多様な提案がなされています。ビッグ3のSMB(Small and Medium Business)へのアピールはどうでしょうか。

 SQL Serverは当初からSMB市場で有利とされてきました。特に見慣れたWindowsのGUIが最初の敷居を低くするなど「手軽な」イメージが定着しています。ライセンス体系を見ても「SQL Server 2000 Standard Edition」という標準的な製品が中小企業での利用を想定しています。ほかにも中小企業向け活動とはいい切れませんが、同社製品であるAccessからSQL Serverへの移行など、小規模からの「アップサイジング」を提案することもしています。

 オラクルはOracle 10gでより本格的にSMB市場へ乗り出しました。Oracle 10gの特徴である「Oracle Enterprise Manager」はGUIで運用管理ができる機能で、技術的な敷居を下げています。またOracle 10gでは中小規模向けに「Oracle 10g Standard Edition One」という10万円を切るライセンスが発表され、低価格、導入の容易さを売りとしています。

 それからDB2。IBMでは中小企業向けにExpressポートフォリオ製品を展開しています。これは1000人規模程度までの運用を想定し、必要な機能を絞って低価格化を実現し、オートノミック機能により管理コストを下げることが期待できる製品群です。その中に「DB2 Universal Database Express Edition」があり、Workgroup Server EditionとPersonal Editionの中間に位置しています。

 商用RDBMSは大規模システムへの対応を追求しつつ、同時に中小規模市場へも確実に手を広げています。

エンタープライズ市場への浸透を目指すPostgreSQLとMySQL

 逆にオープンソースRDBMSは研究開発用途で小規模に利用するだけではなく、企業で大規模に利用する方向へも広がりつつあります。

 近年ではコスト削減という切実な課題への切り札として、オープンソースが注目されるようになってきました。そうはいっても、当初は運用者や開発者の知識不足、信頼性、導入実績などで採用に踏み切れずにいる企業もありましたが、壁は徐々に取り除かれてきています。いまではオープンソースのソフトウェアまでも守備範囲に含めるSIベンダも増えてきて、ソリューションやサポートでビジネスが成り立つようになってきました。最近ではMySQLやPostgreSQLを大企業や官公庁へ導入した事例も見かけるようになってきました。今後はライセンス料を低く抑える目的でオープンソースRDBMDを採用し、技術力のあるSIベンダに任せるというパターンも増えてくるでしょう。

 企業導入への流れはエンドユーザーの利益追求だけではなく、コミュニティの意向もあると思います。ポリシーは多少の差があるかもしれませんが、コミュニティは自分たちが育ててきたソフトウェアが高く評価されて広く普及するのを願うものです。企業への導入を足場にすれば普及を大きく後押しすることになります。

 そのためにオープンソースRDBMSの開発は、企業導入への対応を意識しています。例えば最近新しいバージョンに向けて着々と準備しているPostgreSQLは8月10日にPostgreSQL 8.0.0 Beta 1、9月8日にBeta 2をリリースしました。主に8.0.0ではWin32ネイティブサポートや障害発生時にログから任意の時点にロールフォワードするPITR(Point in Time Recovery)に対応するなど、企業で求められる機能が強化されています。

 オープンソース技術に企業が参画するようになると、コミュニティではカバーしきれない大規模導入における検証や対応も可能となってきます。いまやオープンソースといっても研究開発や業務時間外の趣味的な領域だけではなく、企業によるビジネスとも密接にかかわるようになってきました。

 例えば2004年6月に日本PostgreSQLユーザ会が主催したPostgreSQL Conference 2004を見ても、多数の企業が参加し、企業への導入を前提にした解説も多くなされました。

 また興味深いのはこうしたオープンソースRDBMSを基にした企業向け発展形といえるようなソフトウェアも登場しています。例えばNTT DATAからはPostgreSQLに並立・分散機能を追加した「PostgresForest」、また富士通がSymfowareの技術を供与したPostgreSQLの機能拡張版「PowerGres Plus」などがあります。

 商用RDBMSは廉価版を出して小規模システムに手を伸ばしているのに対して、オープンソースRDBMSはエンタープライズ版を出して大規模システムに手を伸ばしています。両者の動きは対照的です。

 ついでですが、9月末に開催される「LinuxWorld C&D/Tokyo 2004」のロゴを見るとネクタイを付けたペンギンがいます。オープンソースの象徴であるペンギンがネクタイをすると、オープンソースのエンタープライズ化がよりいっそう現実味を帯びて見えてきます。(次ページへ続く)

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 Index
連載 Database Watch 9月版
SMB市場、コミュニティ活性化でも
火花を散らすビッグ3
Page 1
・SMBが新たな主戦場となりつつあるビッグ3
・エンタープライズ市場への浸透を目指すPostgreSQLとMySQL
  Page 2
・Oracle対応のデータベース関連ツール
・ユーザーコミュニティ育成に力を注ぐ大手ベンダ


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