Database Watch 1月版 Page 1/2

基幹データベースだってオープンソースが常識


加山恵美
2007/1/19

 新年最初のDatabase Watchでは昨年を振り返り、今年を展望します。2006年はオープンソースRDBMSのバージョンアップがあり、XMLデータベースが再び活気づいた年でした。

エンタープライズ向けに近づいたPostgreSQL 8.2

 2006年はオープンソースRDBMSのPostgreSQLとFirebirdが新しいバージョンをリリースしました。まずはPostgreSQLから。

 PostgreSQLは2006年12月5日にPostgreSQL 8.2をリリースしました。追って12月13日にはPostgreSQL 8.2.0の日本語Windows版もリリースとなりました。ソースや日本語マニュアルは日本PostgreSQLユーザ会のサイトからダウンロードできます。

 近年オープンソースRDBMSではエンタープライズ環境での利用を強く意識して機能強化を続けていますが、PostgreSQL 8.2には顕著にその傾向があります。性能向上には特に力が入っており、8.2ではオンライン・トランザクション処理の性能が20%向上したと報告されています。メモリ上およびディスク上のソート処理の高速化やマルチプロセッサ環境のスケーラビリティ改善などが性能向上につながったようです。

 8.2を象徴するキーワードとなりそうなのがウォームスタンバイデータベースです。かつて8.0でポイントインタイムリカバリ機能が追加されましたが、これに輪をかけて便利になり、不測の事態に備えることができるようになりました。詳しくはPostgreSQLの広報blog「8.2のウォームスタンバイ」に解説がありますが、アーカイブの間隔をパラメータで調整できるようになったのがポイントです。

 ほかにもアプリケーションがデータベースに書き込み中でもインデックスを構築できるようになるなど、エンタープライズ向けの機能強化が目立ちます。

 また標準技術への準拠もいっそう強化されています。統計処理集約、複数行のVALUE文、UPDATE RETURNING、複数列集約など、SQL 2003(ISO/IEC 9075-X:2003)の機能が追加となりました。

 PostgreSQL 8.2にはエンタープライズ向けの機能を中心に、200以上の新機能や改良が盛り込まれています。前回のメジャーバージョンリリースから約1年の間でこれほどまで精力的に機能強化が行われたことは、コミュニティ内の活気や熱意を感じます。

Firebird 2.0の機能と今後の予定

 もう1つ、Firebirdも2006年にメジャーバージョンアップを行いました。チェコで開催されたFirebird Conference 2006の初日となる2006年11月12日、Firebirdは待望のFirebird 2.0をリリースすると発表しました。

 FirebirdはオープンソースRDBMSの仲間であるPostgreSQLやMySQLに比べると地味ですが、その「こぢんまり」したところに定評があります。どのデータベースも大規模化や機能強化が進む中、「小さくて扱いやすい」と重宝がられています。

 最新版Firebird 2.0ではガベージコレクションなど細かな機能強化が施されており、確実に性能が向上しているようです。また、データベースを稼働したまま増分バックアップ(nBackup)が可能となったのもポイントとなりそうです。マニアックなところではRawデバイスにデータベースを格納することが可能となりました。

 今後についてはFirebirdサイトのRoadmap 2007で明示されていますが、まずリリースの間隔が短くなるようです。2007年の前半には2.1、また年内には3.0のリリースが予定されています。

 2.1はこれまでの延長となり、トランザクション処理やデータベースへのアタッチ/デタッチのトリガー、テキストBLOBと[VAR]CHAR間の互換性、PSQLでのドメイン利用などの機能強化が行われるもようです。

 3.0では「Vulcan Project」(Firebirdの新しいアーキテクチャを開発しているプロジェクト)と合流することが大きな転換点になります。機能面ではSQLでのユーザーアカウント管理、SQLのトレースやログなど、SQL関係の機能強化が予定されています。外部データソースとクロスデータベースクエリなども期待されています。とはいえ、まだ先なので少し気が早いかもしれません。

 直近の話題といえば、1月25日には定例セミナーとして「Firebirdセキュリティ設定あれこれ」があります。

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 Index
連載 Database Watch 1月版
基幹データベースだってオープンソースが常識
Page 1
・エンタープライズ向けに近づいたPostgreSQL 8.2
・Firebird 2.0の機能と今後の予定
  Page 2
・エンタープライズ向けMySQL
・夏にはDB2とHiRDBがバージョンアップ
・2006年はXMLデータベースが復興を始めた年
・ネイティブXMLデータベースは年末に続々出荷


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