Database WatchDatabase Watch 2009年6月版

Break FreeにUnbreakable……さあどれを選ぶ?

加山恵美
2009/6/22
IBMがDB2 V9.7を発表しました。新しいDB2はPL/SQLをサポートするなど「打倒、オラクル」という意気込みを感じます。

Break Free! で障害なんて怖くない

 IBMは2009年5月21日、IBM DB2 V9.7を発表しました。ダウンロード開始は6月19日から、製品出荷は8月28日です。

 バージョン番号を見ると、V9.5からV9.7となっています。一気にV10に上ることなく、ちょっと遠慮気味かと思えますが、いやいやとんでもない。IBMはものすごく気合いが入っています。

 記者発表会で登壇した日本アイ・ビー・エム 理事 ソフトウェア事業 インフォメーションマネジメント事業部長 下垣典弘氏はV9.7のキーワードとして力を込めて「Break Free」と掲げました。

 実はこれ「Unbreakable」を掲げるオラクルへの対抗意識が強く込められているのだとか。「壊れない(Unbreakable)」を超え、壊れること、つまり障害(Break)の懸念から解放(Free)……というニュアンスみたいです。

 V9.7では機能改善や追加が盛りだくさんです。同社 ソフトウェア・エバンジェリスト 中林紀彦氏はV9.7を「V9技術の集大成、完成形」と評しています。運用管理機能や信頼性を高め、低コストでの運用を可能にし、XML機能など先進性をより完成形に近づけました。

>>>【参考】 日本アイ・ビー・エム 中林氏による連載
Viper 2で学ぶXMLデータベース最新事情
http://www.atmarkit.co.jp/fdb/rensai/viper01/viper01_1.html

 では、V9.7の新機能を4つのキーワードで分けて概観します。

●「低コスト」――管理機能強化

 先進のオートノミック機能により、V9.7ではモニタリングの基盤が刷新されています。これまで平時にはモニタースイッチをオフにして負荷を軽減し、障害が起きたときにオンにするという運用が一般的でした。今後は負荷の低いモニタリング基盤を使い、常時必要最低限の情報を収集し、必要に応じて調節するようになります。監視機能で新しいところではモニタリング表関数が有用となりそうです。SQLの形式で関数をコールしてモニタリング情報を取得します。

 管理機能に大きく関係があるのが、圧縮機能の強化です。もともとDB2は高い圧縮技術を持っていたのですが、これをさらに高めました。先行導入したSunTrust Bankでは、83%以上のデータ圧縮率を実現したそうです。IBMは「Oracle Databaseと比較して30%のストレージコストが削減」可能としています。

●「信頼性」――パフォーマンス向上

 容易な高可用性、ワークロード管理により信頼性を高めています。パフォーマンスに関して面白い新機能が「Scan Sharing」です。例えるなら「新聞を読みたい」と思ったとき、「隣で読んでいる人がいるので一緒に読ませてもらおう」という感覚です。ただし隣人は15ページまで読んでいたので、一緒に読むのは15ページ以降です。未読のページはあらためて読み込みます。

 つまり複数のセッションから同じ表に読み込みが起きるとき、その読み込みを共有することでI/Oを削減してクエリーの応答時間やスループットを向上させます。ほかにも参照処理はロック待機せずコミット済みの最新データを読むようにして同時実行性の向上、LOB(Large Object)性能の向上など、パフォーマンス向上のための改善点が見られます。

●「使いやすさ」――開発のしきいを低く

 最も注目が集まるのがこのポイントです。V9.7はOracle Databaseに使われるPL/SQLに対応するようになりました。データタイプや関数などの機能にも対応します。つまりオラクルのエンジニアが容易にDB2を扱えるようになったのです。Oracle DatabaseからDB2への移行で障壁となるスキルの敷居を下げました。

 互換性の秘密ですが、V9.7では従来のSQL PLコンパイラに加え、新しくPL/SQLのコンパイラを持ち処理します。またオラクルのSQL*Plusに似た「CLPPlus」が提供され、Oracle Databaseを使う感覚でDB2にアクセスできるようになります。ただし完全な互換性が保証されるわけではないので念のため。関係者によると「ほとんどそのまま動く」そうです。

●「先進性」――pureXMLやセキュリティ機能強化

 DB2 V9.xの斬新な特徴といえば「pureXML」です。RDBMSでありながらXML文書をツリー構造で格納し、XMLデータベースとしての側面を持つことでした。V9.7ではDWHでもこの機能を使えるように性能を強化し、機能を拡張しました。IBMの発表によると「1TBのXMLベンチマークで6763トランザクション/秒」を実現し、先行導入したSkytideは「pureXMLの処理能力によって、わが社のお客様のシステムは5倍から10倍もパフォーマンスアップしました」と話しています。


 これらの特長は、なかなか興味深いところです。より詳しく知りたければ7月7日開催の「DB2 Star Festival 2009」をどうぞ。もしくはV9.7の詳細を記した書籍「DB2 9.7エバリュエーション・ガイドブック」(Amazon.co.jpへのリンク)が参考になりそうです。


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オラクルが管理ツールの新版を出荷開始
HiRDBはV8.5をリリース


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