Database WatchDatabase Watch 2010年3月版

春だからデータベースの基本を押さえよう

加山恵美
2010/3/23
そろそろ桜が咲き、新年度を迎える季節です。ここでまた気持ちを新たにデータベース製品群を見渡してみましょう。

大昔からあるけど、進化を続ける「データベース」

 このDatabase Watchは、主にリレーショナルデータベース(RDB)製品の動向や話題を提供する連載です。データベースの専門家ではない筆者があちこちお邪魔しつつ、データベースを学ばせてもらっています。

 IT業界でデータベースというと、けっこう古い技術に分類されます。円熟したという意味で「枯れた技術」ともいわれます。どんなにITに疎い普通の人でも、「データベース」とはIT用語であり、「データを蓄積するもの」と、おおよその意味を知っているくらいです。これって考えてみると驚異的です。それだけ定着し、成熟した技術分野といえます。

 それなら成長は止まっているかというと、そうでもないのです。データベースの世界はまだまだ進化し続けています。例えばデータ量について考えてみてください。年々システムが扱うデータ量、インターネットで行き交うデータ量は増加していきます。その増加率はまさにうなぎのぼりです。けたがどんどん上がっていきます。

 そうしたデータ量の増加を受容できるということは、データベースがそれに見合うように進化しているということでもあります。扱えるデータの量や処理の速さはハードウェアの後押しもありますが、それだけではなくデータベースのソフトウェアも進化しているからなのです。

 具体的にはどのように進化しているのでしょうか。それを探るのがこの連載だと思ってください。データベースってけっこうすごい工夫や仕組みがあるんですよ。それからトレンドもあります。近年のトレンドはやはり「クラウド」です。どのプレイヤーもクラウドの世界を想定したデータベースの姿を追求しているようです。

ますます性能を強化する商用データベース

 データベース製品とひと言でいっても、いろいろな製品があります。本連載では主にIT業界で働くエンジニアになじみのあるデータベース製品を中心に動向を追っていきます。まずは、商用データベース製品から。

 商用データベースは企業の基幹システムで使われることが多く、数あるデータベース製品群の中でも最も性能や信頼性に優れています。代表的なのが、以下の3つです。

Oracle Database

  オラクルのOracle Database。最新版は11g Release 2です。バージョン番号が11で、技術のコアとなるグリッドを意味する「g」がついていて、11gをベースに改良を加えたRelease 2(第2版)と思ってください。とてもパワフルなデータベースです。

 パワフルさの象徴となるのがOracle Exadata。Oracle Database(ソフトウェア)にHPやSunのハードウェアを一体化させた強力なデータベース専用機(アプライアンス)があります。オラクル自慢の最速マシンです。

 オラクルといえば、同社は去る2月9日に「データベース・アーキテクト・サミット - ask Tom Live -」を開催しました。オラクルデータベースのアーキテクト、技術の中枢で仕組みを考えるトム・カイト氏が来日し、エンジニアに向けた講演をしました。そのときの様子は「トムが説く、エンジニアがしてはならないこと」でレポートしています。

 オラクルはOracle Databaseだけではなく、データベースに関連した製品も提供しています。かつてオラクルといえば「データベース」のイメージが強かったのですが、近年では買収を重ねたこともあり、広範なソフトウェアを提供する企業になっています。

IBM DB2

 IBMが提供するデータベースの代表格となるのがDB2です。最新版はV9.7です。生きた歴史といえるほど、脈々と続く長い歴史を持つデータベースです。V9では「pureXML」と銘打ち、XML機能を大幅に拡張してきました。商用データベースとしてはけっこう意外で特徴的なことなのです。

 なぜなら、商用データベースというとリレーショナルデータベースが中心です。基本は行と列から成るテーブルにデータを格納します。しかしXMLは1つの根元から次々と枝分かれをするツリー構造をしています。そのXMLをテーブルにそのまま格納できてしまうのですから、斬新なことなのです。

 その一方、昨年には拡張性に優れた「pureScale」というオプション製品も出し、拡張性にも力を入れています。歴史の長さと斬新さ、リレーショナル・データベースでありながらもネイティブのXMLデータベースでもあり、とても幅の広いデータベースです。4月にはIBMのデータベース製品に関するイベントと、DB2のコミュニティ 「Club DB2」で新人向けの勉強会が2つ開催されます。

【関連リンク】
Information On Demand Conference Japan 2010(4月13〜14日)
http://www-06.ibm.com/software/jp/data/events/iodc2010/day1.html

Club DB2 ナイトサークル
https://www.ibm.com/developerworks/wikis/display/clubdb2/Home

SQL Server 2008 R2

 マイクロソフトが提供するリレーショナル・データベースというと、Microsoft SQL Serverです。商用データベース群の中では比較的後発ですが、機能や性能ではひけをとりません。

 特徴となるのがマイクロソフトゆえの強みではないでしょうか。つまりマイクロソフト製品との親和性です。企業のサーバやユーザーのPCには、WindowsやOfficeが多く使われています。開発や管理などユーザーが慣れ親しんだ画面で使えるのが有利なところです。

 さて最新版ですが、次期バージョンの出荷日がついに決まりました。マイクロソフトは2月18日、Microsoft SQL Server 2008 R2を5月1日に出荷すると発表しました。2008をベースに性能を向上させ、Azureに対応し、ExcelやSharePointなどとの連携を強化した製品です。

【関連記事】
「課金はソケット単位で」SQL Server最新版5月1日発売(@IT NewsInsight)
http://www.atmarkit.co.jp/news/201002/18/sqlserver.html


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