Database WatchDatabase Watch 2010年6月版

XMLDBやKVSは破壊的技術になり得るか?

加山恵美
2010/6/21
夏が迫ってきましたね。今月はMySQL 5.5、Club DB2に登場したミックさん、それからVoltDBなどについてお伝えします。

性能と利便性ともに向上 MySQL 5.5

 2010年4月にアメリカで開催されたMySQL Conference & Expoの基調講演で「MySQL 5.5」が紹介されて以来、次第にMySQL次期バージョンの姿が明らかになりつつあります。MySQLはオープンソースではありますがエンタープライズ版もあり、オープンソースと商用の2つの顔を持つRDBともいえますね。

 さて現在開発中のMySQLについて。現行のGA(Generally Available)版は5.1です。少し前に5.4も出ましたが、現在は5.5で開発が進んでいます。「5.4はどこへ?」と心配しなくても大丈夫。5.5にはInnoDBの性能を向上させた5.4の改善事項も盛り込まれています。

 まだ開発中なので、正式版までに何らかの変更がある可能性はありますが、新しいMySQL 5.5は性能を向上しつつ、利便性も向上したものになりそうです。5月14日にサン・マイクロシステムズで開催された「MySQL Conference & Expo 2010レビューイベント」では、サン・マイクロシステムズのMySQLビジネス統括本部 MySQLシニアエバンジェリストの梶山隆輔氏がMySQL 5.5について、「正しい進化」とあるべき方向性をきちんと進んでいるとの見解を示していました。

 まずはストレージエンジンのInnoDB。MySQL 5.5ではInnoDBプラグインのバージョンが1.1となり、デフォルトのストレージエンジンとなります。ロックの競合を徹底的に回避する工夫や、パージスレッドを独立させるなどの改善により、飛躍的な性能向上が期待できます。

 性能でいえば、「Semi-Synchronous Replication」も注目です。これは以前より新しいバージョンに搭載されると話題になっていた、新しい同期の仕組みです。従来のレプリケーションでは、マスターとスレーブは非同期で、少し遅れてスレーブが更新されていました。スレーブの更新状況をマスターが関知しないため、マスターがクラッシュするとデータが消失する可能性がありました。しかしこのSemi-Synchronous Replicationでは、コミットが完了した段階でスレーブへのバイナリログ転送が保障されます。このため性能を引き替えにすることなく、安全性を確保することができるようになります。

 ほかにもパーティショニングの改善などもあり、5.1と性能を比較するベンチマークでは、数倍の性能向上が報告されています。あらゆる観点から見ても「とにかく速くなる」のは確実のようです。地味な話になりますが、4バイトUTF-8にも対応します。これは日本のユーザーには朗報です。正式なリリースが楽しみですね。

ミックさんが語る“リレーショナル”

 5月28日のClub DB2に、ミックさんがゲスト講師として登場しました。ミックさんはデータベースの世界では有名人で、自身のサイト「リレーショナル・データベースの世界」や自著「達人に学ぶ SQL徹底指南書」(→Amazonで購入)などは多くのデータベースエンジニアから高い評価を受けています。今月末には、より初心者に向けた新著「SQL ゼロからはじめるデータベース操作」(→Amazonで購入)が出版されるところです。

 ところでIBM製品のコミュニティにミックさんが登場するなんて意外ですよね。ミックさんはDB2の専門家ではなく、むしろほとんど使わないそうです。なのになぜ講師になったかというと、実はClub DB2の主催者がミックさんの著作に感銘をうけ、ミックさんをお誘いしたのだとか。数多くの著作を持つ「ミックさん」が登場するということで、Club DB2はいつもより多くの人がつめかけました。

 さてミックさんが講演したのは「リレーショナルとはどんなことか」で、プレゼン資料はミックさんのWebサイトで公開されています。興味のある方はぜひダウンロードして読んでみてください。

 内容はRDBとSQLの本質に迫る深い話でした。RDBはいまでこそデータベースの中では主流ですが、それ以前には「階層型DB」がありました。RDBは階層型DBと比較するとガソリン車に対する電気自動車のようなもので、新しい価値基準に照らし合わせると既存技術を凌駕(りょうが)する技術であり、これをミックさんは「破壊的技術」と呼んでいました。

 そしてRDBやSQLを理解する上で欠かせないのが、集合論を基にした考え方です。ミックさんはテーブルから特定の条件でレコードを抽出するときに、手続き型言語と集合指向言語ではどうするか、特性関数、全単射、冪等性(べきとうせい)などを使って解説していました。

 最後にミックさんは「今後のデータベース界は汎用性の高いRDBを中心に、1つの軸に特化した専門DBが割拠する」と予想を示しました。XMLDBやKVDB(KVS)などはかつてのRDBのように破壊的技術にはまだ到達していないが「可能性はある」そうです。

 なお7月9日はClub DB2 4周年記念企画となるようです。


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XMLDBやKVSは破壊的技術になり得るか?
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性能と利便性ともに向上 MySQL 5.5
ミックさんが語る“リレーショナル”

Page 2
次世代のSQL DBMSとなるか、VoltDB
XMLDBがSaaSデビュー



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