Database WatchDatabase Watch 2010年11月版

いよいよ動き出すExadata X2シリーズ

加山恵美
2010/11/24
日本オラクルの新しい社員犬「キャンディ」、もうご覧になりましたか?入社式で社員証をかじってしまう姿はとてもかわいかったですね。あのときは生後3カ月の子犬でしたが、数カ月もすると大きくなるそうです。成長が楽しみです。

これはもう工業製品

 まずはキャンディがいる日本オラクルの話題から。高速データベースサーバ「Oracle Exadata X2」シリーズの出荷が10月20日から始まっています。「Oracle Database Summit 2010」などのイベントを通じて技術的な詳細が明らかになってきました。

 10月版で述べたとおり、このX2はオラクルが持つソフトウェア技術と、サン・マイクロシステムズから受け継いだハードウェア技術を結集した製品です。まさにオラクルが言うところの「Hardware and Software Engineered to Work Together」を体現している製品と言えるでしょう。これを日本オラクルの常務執行役員 テクノロジー製品事業統括本部長である三澤智光氏が「意訳」として「工業製品化」と表現していました。

 端的な表現ですが斬新です。これまでのオープンシステム環境を考えると、各自がそれぞれ好みのハードウェアやソフトウェアを組み合わせてるようなものでした。車に例えるなら、エンジンやブレーキなどをあちこちのメーカーから寄せ集めて、組み立てるようなものです。しかしExadataは違います。完成した車を買うような感覚に似ています。それで「工業製品」というわけです。

 ユーザーはただ製品のサイズを選べばよいのです。Exadataのハーフサイズかフルサイズか、そして個数は……コーヒーショップで飲み物をオーダーするような感覚かもしれません。米オラクルコーポレーションでデータベース・サーバーテクノロジー担当シニアバイスプレジデントを務め、データベース製品開発総責任者でもあるアンディ・メンデルソン(Andy Mendelsohn)氏は「ユーザーにとってまったく同じ構成で使っているユーザーがほかにたくさんいることが安心感につながる」と「工業製品化」の利点をアピールしていました。

 Exadataの特徴は、とにかく処理が速くなるということに尽きます。夜間バッチ処理が4時間から10分に短縮できた事例もあるそうです。こうなると、データの集計作業はもう夜間にバッチでやらなくてもいいという発想も出てきます。「明日にならないと分からなかった」データを今知ることができれば、ビジネスの流れが変わりますね。

ソフトとハードの両方を工夫してボトルネックを排除

 オラクルはExadataの処理性能を向上させるために、ストレージとデータベースサーバの間にあるボトルネックの排除に努めました。そのために、ソフトウェアには「Exadata Smart Scan」と「Exadata Hybrid Columnar Compression」という機能を盛り込みました。

 Exadata Smart Scanは、クエリの処理の一部をストレージサーバに肩代わりさせる機能です。一般的なリレーショナルデータベース管理システムでは、データベースサーバは検索対象のテーブルを全件メモリに読み出して、そのデータの中から目的のデータを探します。しかし、この方法では全件のデータをストレージからデータベースサーバに送り出す処理がボトルネックになっていました。ストレージを構成するディスクはどう工夫しても動作が遅く、大容量のデータを送信しようとすると、読み出しに時間がかかる上、データベースサーバとの接続インターフェイスがボトルネックになっていました。

 そこで、オラクルはストレージにx86プロセッサやメモリを搭載し、Oracle Databaseをインストールし、それぞれのストレージでクエリを処理できるようにしました。Exadataのデータベースサーバがクエリを発行したら、そのクエリの一部をストレージ側で処理し、絞り込んだデータのみをデータベースサーバに送るようにしました。これで、ストレージとデータベースサーバをつなぐインターフェイスを有効に使えるようになります。

「Exadata Smart Scan」の仕組み。一般的なデータベースサーバはクエリの処理に必要なデータをすべてメモリに展開する(左)。一方、Exadata Smart Scanでは、ストレージ側でクエリの一部を処理して、メモリに転送するデータが少なく済むようにしている。クリックすると拡大

 さらに、「Exadata Hybrid Columnar Compression」というデータ圧縮機能を使って、送信するデータを圧縮しています。この圧縮機能は、データの使用状況に応じて圧縮率を調節できるようになっています。リアルタイム更新が可能なOLTP圧縮では約3倍、アクセス頻度が少なく圧縮重視のArchivalモードでは15〜50倍の圧縮が可能だとのことです。

 Exadataでは、ソフトウェアを工夫するだけでなく、ハードウェアも工夫してインターフェイスがボトルネックにならないようにしています。まず、ストレージとデータベースサーバを接続するインターフェイスに超高速インターコネクト機構である「InfiniBand」を利用しています。さらに、フラッシュメモリをキャッシュメモリとして利用する「Exadata Smart Flash Cache」機能を搭載して、ランダムアクセス時の性能向上を図っています。

 加えてX2の新機能にはQoS管理によるリソース管理があります。Exadataは巨大で超高性能なデータベースマシンなので、会社のあらゆるシステムを稼働させることができる統合データベース環境となっています。そこで例えば営業時間には販売システムの優先度を上げ、就業後には集計システムの優先度を上げるなど、優先度や時間帯によってリソースを調節することが可能です。

 そしてハードウェアです。X2-2モデルのフルラック品はデータベースサーバが8台(プロセッサコアが合計で96個、メモリは合計768Gbytes)にストレージサーバ14台となり、その半分のハーフラックや1/4のクオーターラックも用意されています。より大規模向けのX2-8モデルとなるとフルラックでデータベースサーバに「Sun Fire X4800」を2台(合計128コア、メモリ2Tbytes)使用しています。

 ハードウェアのスペックを見ただけでも圧倒的なものがありますが、このハードウェアの能力を最大限引き出すようにソフトウェアが設定済みであるというのもExadataの特徴です。こうした工業製品化は今後の流れになっていくかもしれません。


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これはもう工業製品
ソフトとハードの両方を工夫してボトルネックを排除

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