モバイルを核に個性的なミドルウェアを展開するiAnywhere

[DB Interview]
モバイルを核に個性的なミドルウェアを持つiAnywhere

@IT編集部
平田 修
2006/12/22

2000年にサイベースから分社独立したアイエニウェア・ソリューションズ(以下、iAnywhere)は、モバイル向けのデータベース/ミドルウェア分野で実績のあるベンダだ。モバイル端末の重要性がますます高まっているIT市場において、iAnywhereは大手データベース・ベンダとはひと味違った個性的な製品群を開発し、独自の地位を築いている。今回は、同社の代表取締役社長、テリー・ステピアン(Terry Stepien)氏、エンジニアリング統括部、森脇大悟氏にiAnywhereの主要製品についてお話を伺った。

フラッグシップ製品「SQL Anywhere Studio 9」のコンセプト

 ステピアン氏は、同社のフラッグシップ製品「SQL Anywhere Studio 9」のコンセプトについて、次のように語った。「iAnywhereのソリューションは、オフィスの外に出てモバイル機器を使って情報を収集したり、商品カタログなどのデータベースを利用するような人たちを支援するためにあります。つまり、バックオフィスでの基幹データベースソリューションではなく、企業のフロントラインで働く人たち向けのソリューションですね。モバイルアプリケーションを中核として、それを支援するさまざまなミドルウェア製品を提供するのが、当社のビジネスです」

 
米iAnywhere Solutions
代表取締役社長
テリー・ステピアン氏
 

 SQL Anywhere Studio 9は、モバイル機器を使って担当者が顧客と対面し、商品の選択や注文、決済、問い合わせなどを行うような、顧客と直結したフロント業務を想定し、そこで必要なソリューション開発をサポートする。対象となるのは、モバイル端末からサーバプラットフォームまでと幅広い。

 メインのリレーショナル・データベースである「Adaptive Server Anywhere」(以下、ASA)は基幹システムのデータベースとして機能し、省リソースで稼働する小型の組み込み型データベース「Ultra Light」はモバイル端末のデータベース処理を行う。この2つは単体でも動作するが、同期テクノロジである「Mobile Link」で連携することにより、モバイルソリューションに対応した柔軟なデータ管理を実現する。

 SQL Anywhere Studioの主要コンポーネント3つについて、以降でその詳細を紹介しよう。

SQL Anywhere Studioの基幹RDBMS
  〜Adaptive Server Anywhere〜

 ASAはSQL Anywhere Studioのメイン・コンポーネントのデータベースであり、競合する基幹系データベース(DB2、Oracle、SQL Serverなど)と同等の機能を備えているが、同製品の個性的な点は同一のエディションで基幹システムから部門システム、さらにパッケージ製品に組み込まれるスタンドアロンデータベース、Windows CE/Windows XP Embedded上で稼働するPOSシステムなど、カバーしているシステムの規模が非常に幅広いことだ。

 図1 サーバプラットフォームからモバイル端末までをサポートするASA

 一般に、専門のデータベース管理者を置けるのは基幹システムに限られ、部門サーバ以下のシステムでは、データベース専門ではない一般の管理者に運用を任せるしかないのが現実だ。そこで同製品は、管理者の運用コストを削減するための機能を搭載している。その1つに、データサイズが増加すれば自分自身でエリアを拡張し、利用可能な空きエリアが出れば再利用するという、データベースサイズの自動拡張機能がある。ほかにも、パフォーマンスへの影響を判断して、自動的にキャッシュサイズを拡張および縮小したり、不意の電源断があっても、次回のデータベース起動時に自動リカバリする。さらに、最適なアクセス・プランを自動で計算する自己学習機能などを備えている。

 また、アプリケーション開発者の負荷軽減を狙った機能も用意されている。チューニングのサポート機能では、アクセス・プランや統計情報をグラフィカルに表示したり、ストアド・プロシージャ、関数、イベント、トリガの呼び出し回数と実行回数についてのプロファイル情報が管理画面に表示される。これらの情報を基に、ボトルネックとなっているプロシージャを簡単に特定できるのだ。

 さらに、インデックス・コンサルタント機能では、アプリケーションの実行中にパフォーマンス向上のための推奨インデックスを分析し、これに基づいたDDL文を自動的に作成する。プログラミング・インターフェイスとしては、ODBC、OLE DB、JDBC、Perl、Embedded SQL、Sybase Open Client、.NETなどをサポートしている。

組み込み向けデータベース 〜Ultra Light〜

 Ultra Lightは、ASAと同じデータベースエンジンを持ちながら、そこからデバイスに合わせて必要なフィーチャーを選択してリソースを絞り込める、組み込み機器に最適化されたデータベースである。例えば、Ultra LightをWindows CE機に搭載した場合、メモリ必要容量500Kbytes、動作時の最小消費メモリサイズ150Kbytesという省リソースを実現している。

 Ultra Lightはデバイスへの配布方式がユニークだ。アプリケーションとデータファイルは一体化されており、通常のインストーラを使ったインストール作業は不要である。つまり、使用したいデバイスにアプリケーション(.exe)ファイルとUltra Lightスキーマファイル、各プラットフォーム用のUltra Lightコンポーネント(Windows CEであれば.dllファイル)の3つを単純にコピーすれば稼働してしまう。これを使えば、使用するデバイスの入れ替えもスムーズになるだろう。

 対応する開発言語はJava、ActiveX-eVB、Embedded SQL、C++、.NET Compact Frameworkなど、プラットフォームはWindows CE、Windows XP/XP Embedded、Windows Mobile、PalmOS、Java2/Personal Java、Symbianに対応している。また、スキーマファイル編集用GUIツール「Ultra Lightスキーマ・ペインタ」や、Ultra Lightに対して直接SQLを実行できる「Ultra Light Interactive SQL」を備えるなど開発面のサポートも備わっている。Ultra Lightの詳細については、下記の記事も参照してほしい。

モバイル機器と基幹データベースとの同期テクノロジ
  〜Mobile Link〜

 Mobile Linkは、企業内にある基幹データベースとUltra LightなどのMobile Linkクライアント・データベースとのデータ同期を取るためのコンポーネントである。同期先のデータベースとはODBC経由で通信するため、同社のASAに限らず、Oracle、Microsoft SQL Server、IBM DB2など主要なデータベースにも対応する。また、Mobile LinkクライアントとしてUltra Light、ASA for Windows、ASA for Windows CEに対応する。

 Mobile Linkには「セッションベース・シンクロナイゼーション」と呼ばれる同期テクノロジが搭載されている。これは同期要求の発生時に、Mobile Link同期サーバを介して、モバイル機器側のリモート・データベースに蓄積された変更と、企業内にある統合データベースに蓄積された変更を双方向で同期するというもの。同期セッションが終了した時点で、統合データベースとリモート・データベースの一貫性が保証される。

図2 セッションベース・シンクロナイゼーション
ネットワークを介して、同期要求時にリアルタイムでセッションベース・シンクロナイゼーションを実行する。各同期セッション終了時には、統合データベースとリモート・データベースは一貫性が保たれる。

 もちろん、特定の時間/間隔で同期を実行するようにスケジューリングすることも可能である。また双方向の同期を必要としない場合、アップロードまたはダウンロードのみ同期するように設定したり、同期させたい優先度(頻度)の違うデータを、1つのグループとして、別々のタイミングで同期させることもできる。

 SQLはベンダごとに違いがあるが、「標準のSQLを発行すると、Mobile Linkがそれを解析して各ベンダのSQLに書き換える仕組みになっている」(森脇氏)ということだった。

 SQL Anywhere Studio以外にも、同社には個性的なミドルウェアが存在する。次ページで紹介していこう。(次ページへ続く)

  1/2

 Index
[DB Interview]
 モバイルを核に個性的なミドルウェアを持つiAnywhere
Page 1
・フラッグシップ製品「SQL Anywhere Studio 9」のコンセプト
・SQL Anywhere Studioの基幹RDBMS 〜Adaptive Server Anywhere〜
・組み込み向けデータベース 〜Ultra Light〜
・モバイル機器と基幹データベースとの同期テクノロジ 〜Mobile Link〜
  Page 2
・オフラインでもWebアプリケーションを実行 〜M-Business Anywhere〜
・RFIDシステムに独自の使い勝手を導入する 〜RFID Anywhere〜
・自然言語によるシステムとの対話を実現 〜Answers Anywhere〜


[DB Interview]



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