ASP.NET Webアプリ開発の裏事情

エピソード9:「モバイル対応」と闘う!

―― すべてが確立されていない環境との闘い ――

小田原 貴樹(ハンドル・ネーム:うりゅう)
2005/11/16
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まだまだ、未知の領域。あえて、ASPの利用も。

 ここまで挙げてきた問題点については、筆者が無知なだけであって、実際には素晴らしい解決方法があるのかもしれない。だが、何せとにかく参考になる情報が少ない。サーチ・エンジンで検索してみても、ASP.NETでモバイル・サイトを作成している実例そのものが少ないのか、概要論レベルの情報しか出てこない。また、書籍などでもそうしたことについて詳細に解説しているものが見つからない。そういう意味ではASP.NETのモバイル対応というのはまだまだ未知の領域であって、実績として確立されたものではないということになるだろう。

 それを踏まえたうえで、公開系モバイル対応サイトをASP.NETで開発する場合に発生すると思われる問題の解決方法というか対処方法を考えてみると、以下の3点が挙げられるだろう。

  1. プログラムによる制御が必要なページだけを、モバイルWebフォームにする
  2. 現状の主力携帯電話だけの対応であると割り切る
  3. ASP.NETでの開発ではなく、ASPなど旧来の技術で開発する

 1については、本当に必要なページだけをモバイルWebフォームで開発するということである。プログラムによる制御を集約して、最低限のページだけをASP.NET化することで、(前述した)「デザインなどが指定したとおりには表示されない」という問題による被害を最小限に食い止めようということである。たいへん消極的な発想で申し訳ない。

 2も消極的極まりない発想なのだが、携帯電話対応サイト開発において最も難しいのは、全キャリア全機種で確実にサイトが表示されるようにすることである。現行の主力携帯電話だけならともかく、これまでに発売された全機種で確実に対応させようと思うと、膨大な手間がかかる。

 例えば、表示できる画像フォーマットだけをとっても、キャリア別・世代別に違っていたりするのである。ましてや、表示確認・動作確認のためにすべての機種をそろえられるわけはない。実際、ASP.NETモバイルWebアプリケーションで開発したサイトにおいて、「ある機種では表示できるが、ある機種では表示できない」という現象が発生したことがある。これは純粋にプログラムもしくはデザインの問題なのかもしれないが、そうした問題をつぶさにつぶしていくことを考えるくらいならば、一定のガイドラインを決めてしまう方が現実的だといえるだろう。

 3に関しては、もはやASP.NETでの対応ですらないのだが、筆者の経験上、ASPなど旧来の技術を利用する方がモバイル対応の面では問題が少ないと感じている。ASPであれば、デザインなどはHTMLで指定したとおりに表示されるし、iStyleなどの利用に関しても、単にタグとして表記すればそれでいい。ASP.NETにどっぷり漬かってしまった現状において、ASPでの開発をしようと思うと、いろいろと不便なことも多くて悲しいのだが、背に腹は代えられないというところだろう。

 このところ、筆者自身が携帯電話対象のモバイル・サイトを作るのにかなり苦労しているもので、今回はASP.NETのモバイル対応に関する不満大会のような文章になってしまったように思う。

 ただ、ASP.NETのモバイル対応のコンセプトそのものは非常に素晴らしく、近日中に発売されることになるVisual Studio 2005では、(筆者はまだ検証していないが)こうしたモバイル対応の問題点は改善されているものと期待したい。なお(ASP.NET 2.0 Beta2についての情報だが)ASP.NET 2.0のモバイルWeb対応の概要については、「ASP.NET によるモバイル Web 開発のロードマップ」を参照してほしい。

 モバイル対応サイトの開発は、端末も開発環境もすべてが発展途上であり、なかなか苦労が多いことは間違いないが、(冒頭に記述したように携帯電話でのWebサイト利用が急増してきていることから)それに見合うだけの効果が見え始めているのも確かである。

 ユーザビリティに優れ、「いつでもどこでも利用できる」モバイル対応サイトを簡単に開発できるようになる日もきっと近いのではないだろうか。End of Article

 

 INDEX
  ASP.NET Webアプリ開発の裏事情
  エピソード9:「モバイル対応」と闘う!
    1.ASP.NETならモバイル対応も完ぺき……?
  2.まだまだ、未知の領域。あえて、ASPの利用も。
 
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