オピニオン:マイクロソフト新戦略の推察

Visual Studio Express 2012から見える「デスクトップ世界の終焉」

デジタルアドバンテージ 一色 政彦
2012/06/05
2012/06/06 更新
2012/06/09 更新

※2012年6月9日 追記: 本日、デスクトップ・アプリ開発用の「Visual Studio Express 2012 for Windows Desktop」が追加投入されることが発表された(情報源のブログ記事(英語))。この無償の開発環境を用いることで、C++/C#/Visual Basicでコンソール・アプリやWindowsデスクトップ・アプリを開発できる。以下の文章は、この製品が提供されないことを前提としている。そのため、一部の内容は適切ではなくなっているので注意してほしい。

 Windows 8のRTM版(=製品版)登場が(このまま問題なく進めば)8月ごろに予定されている(現在はRP版(=Release Preview版)がリリースされている)。それと同時にリリースされる(と予想される)「Visual Studio 2012(コード名:Visual Studio 11)」(以降、VS 2012)では、従来どおり「Ultimate」「Premium」「Professional」などの有償エディションが提供され、加えて無償の「Express」エディションが提供される予定だ。読者の中には、「VS 2012(製品版)が登場したときには、Expressを使おう」と考えている方も少なくないだろう。

 しかしこのExpressエディションは、VS 2012から提供形式が変更されており注意が必要だ。そこで本稿では、VS 2012のExpressエディションに関する注目ポイントを紹介するとともに、そこから読み取れるマイクロソフトの新戦略について簡単に推察したい(本稿では「アプリケーション」は「アプリ」と略す)。

Expressエディションの整理統合

 VS 2012(RC版)の公式サイトを訪れ、Expressエディションの新着情報ページを開くと、主に以下の2つのExpressエディションがVS 2012では提供されることが記載されている。

  • Visual Studio Express 2012 for Windows 8
  • Visual Studio Express 2012 for Web

 ちなみに、従来のVS 2010 Expressエディションは、以下のような製品に分かれていた。

  • Visual Basic 2010 Express
  • Visual C# 2010 Express
  • Visual C++ 2010 Express
  • Visual Web Developer 2010 Express

 これを見ると、かなり大胆にエディションが変更されていることが分かる。一番分かりやすいのは、Web開発向けの「Visual Web Developer 2010 Express」→「Visual Studio Express 2012 for Web」という変更である。

 では、それ以外の「Visual Basic/C#/C++ 2010 Express」は「Visual Studio Express 2012 for Windows 8」にまとめられたのか? というと、これが違うのである。

「Visual Studio Express 2012 for Windows 8」が意味すること

 実は、「Visual Studio Express 2012 for Windows 8」は“for Windows 8”という言葉のとおり、Metroスタイル・アプリ開発専用の開発環境になっている(さらに、Windows SDK for Windows 8には完全なコマンドラインのビルド環境などが搭載されなくなっており、完全な開発環境を整えるにはVisual Studioを導入せざるを得ない)。

 これが何を意味するかというと、「無償のVS 2012では、Windows上のコンソール・アプリや、Windowsフォーム・アプリ/WPFアプリなどのデスクトップ・アプリが作れなくなる」ということだ(大変残念ではあるが……)。

 この対応から筆者が推測するマイクロソフトの思考過程やマーケティング戦略は次のとおりだ。

  • PC向けのWindowsプラットフォームに対して、今後もたくさんの新規開発者(特にホビー開発者やオープンソース開発者)が集まり、彼らがデスクトップ・アプリを開発するという状況は見込めない

  • しかしながら、業務アプリやPC上のアプリは今後も継続的に使われ続けるだろう

  • つまりWindowsプラットフォームは、労せずともお金になる成熟した分野であり、既存の顧客からより大きな収益を上げる方がビジネス上のメリットが高い

  • そのため、新規のデスクトップ・アプリ開発者向けには無償のExpressエディションの提供はやめる

  • その代わりに、マイクロソフトが今後、大きく成長させていきたい「Metroスタイル・アプリ」の新規開発者に対して無償環境を提供する

 要するに、WPFアプリ/Windowsフォーム・アプリは現実には今後も長く使われ続けるだろうが、「マイクロソフトにとっての投資対象からは外れた」ということである。残念だが、デスクトップ世界は成長産業としては幕を閉じたのだ。

 今後、デスクトップ・アプリを作りたい場合には、有償のVS 2012のProfessionalエディション以上か、古いVisual Basic/C#/C++ 2010 Expressを使う必要がある(この無償のVS 2010のExpressエディションは今後も継続的に提供されると予想されるが、説明したような状況になっているので、念のため、今のうちにVS 2010 Expressをダウンロード&インストールしておいた方がよいのかもしれない)。

エディション名の位置

 microsoft.com上の公式サイトを見ると、「VS 2010」から「VS 2012」で、“Express”“Ultimate”“Premium”“Professional”などのエディション名の位置が変わっているようである。具体的には以下のとおり。

  • Visual Studio 2010 Express
  • Visual Studio Express 2012

 一方でMSDN上のサイトでは「Visual Studio 2012 Express」と、従来どおりの表記になっており、マイクロソフト社内でまだ混乱があるようである(筆者としては、「Visual Studio 2012」が製品名で、「Express」がエディション名と、明確に区切った従来型の表記の方が分かりやすいと思う)。

そのほかのエディション

 上記以外にもVS 2012のExpressエディションには以下のようなものがある。

  • Visual Studio Team Foundation Server Express 2012
  • Visual Studio Express 2012 for Windows Phone(登場予定)

 なお、「Visual Studio Express 2012 for Windows Phone」はまだRP版さえも提供されていないが、Windows Phoneの次期リリース(Windows Phone 8?)に合わせて提供予定とのことである。それまでは、古いVisual Studio 2010 Express for Windows Phone(+Windows Phone SDK 7.1.1へのアップデート)を使う必要がある。end of article

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更新履歴
【2012/06/06】

 以下のような誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。

Visual Studio 2010 Express for Windows Phone(英語版のみ)
Visual Studio 2010 Express for Windows Phone(+Windows Phone SDK 7.1.1へのアップデート


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