特集:デビッド・チャペル氏への特設インタビュー

クラウドとWindows Azureの“もやもや”解消!

デジタルアドバンテージ 一色 政彦
2009/11/10
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 2009年10月13日〜14日、デビッド・チャペル(David Chappell)氏(以降、チャペル氏)が来日し、クラウド・コンピューティングおよびWindows Azureに関するさまざまな講演を行った。

 チャペル氏は、米マイクロソフト技術にかかわるコンサルティングを主業務としているチャペル&アソシエイツ(Chappell & Associates Principal)という会社の代表である。米マイクロソフトからの信頼が厚く、事実、マイクロソフトが公開しているWindows Azure Platform(従来はAzure Services Platformと呼称)のホワイト・ペーパー(日本語版はこちら)の多くは、チャペル氏によるものだ。昨年のWindows Azure(CTP版)の発表時点でそのホワイト・ペーパーは公開されていた。つまり公式発表される前から、Windows Azure Platformに深くかかわってきたということになる。米マイクロソフトにとってチャペル氏は、それほど重要なコンサルタントなのである。

 そのチャペル氏にInsider.NET編集部はインタビューを行い(聞き手は、Insider.NET編集長の遠藤孝信と、副編集長の一色)、クラウド・コンピューティングの現状や未来に関して、さらにWindows Azure開発における技術選択に関して、チャペル氏の意見を聞いた。本稿は、そのインタビューの全容をお伝えする(以下、敬称略。チャペル氏は「デビッド」と表記)。ちなみに、発言者として登場する「平野」は、インタビューに同席していただいたマイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部 部長の平野和順氏のことである。

【基本用語解説】

  • オンプレミス(On-Premises):社内。
  • クラウドの中(In-the-Cloud):クラウド・プラットフォーム上。
  • Windows Azure:アプリケーションをホスティング可能なクラウドOS。
  • Windows Azure Platform:Windows Azureを中核としたマイクロソフト提供のクラウド・サービス全般。単に「Azure」と書いたものはこれを指す。
  • Windows Azureストレージ:Windows Azureが提供するストレージ・サービスで、テーブル、ブロブ、キューの3種類のデータ・ストアが用意されている。
  • Windows Azureテーブル・ストレージ:Windows Azureストレージ・サービスのテーブルを指す。
  • Windows Azureブロブ・ストレージ:Windows Azureストレージ・サービスのブロブを指す。
  • SQL Azure:クラウドの中で動作するSQL Server。そのデータベース機能は「SQL Azure Database」と呼ばれる。
【関連情報】Windows Azure開発コンテスト「Cloud Bootstrap」

 日本のマイクロソフト株式会社により日本人向けに、Windows Azure開発のコンテスト「Cloud Bootstrap」を開催する。応募期間は、2009年11月11日(水)〜2009年12月31日(木)のお昼12:00までだ。コンテストには「(A)アプリケーション開発部門」「(B)タイム・アタック部門」という2つの部門があり、各部門の応募者先着500名に参加記念品が1つプレゼントされる。

 (A)アプリケーション開発部門では、.NET言語やPHP言語で開発したWindows Azure上のWebアプリケーション(ジャンルは不問)を申請でき、入賞者にはMicrosoft Tech・Days 2010 “Best of PDC”への招待やTech・Days 2010のWebサイトやマイクロソフトが運営するWebサイトでのプロモーションという特典がある。

 (B)タイム・アタック部門は、自作アプリケーションもしくはサンプル・アプリケーションを、Windows Azure Platform上にアップロードして、それがデプロイ完了するまでに掛かる時間を競うコンテストで、気軽に参加できそうな内容だ。上位入賞者には入賞記念品(予定ではWindows Live対応デジタル フォトフレームなど)が用意されている。

 500名の先着に入れば参加記念品はもらえるので、参加するだけでも意義があるコンテストである。.NET/PHP言語でWebアプリケーションを作った人であればWindows Azure開発は特に難しくないと思われるので、(A)アプリケーション開発部門への参加がお勧めだ。Web開発の経験がない人でも、(B)タイム・アタック部門なら開発スキルは不要である。Windows Azure開発経験者やWindows Azureでちょっと遊んでみたい開発者は参加してみてはいかがだろうか。

クラウド・コンピューティングの現状や未来に関して

クラウド・コンピューティング時代はやってくるのか?

―― 日本ではクラウド・コンピューティングに対する注目が高まってきています。将来的に、このままクラウド・コンピューティングの方が、オンプレミス・アプリケーションよりも主流になっていくのでしょうか?

デビッド わたしは、クラウド・コンピューティングは主流になっていくと考えています。しかしながら、クラウド・サービスが既存のオンプレミス・アプリケーションを置き換えていくのかというと、それは違います。クラウド・サービスとオンプレミス・アプリケーションは共存が可能だからです。

 もちろん、「すべてのオンプレミス・アプリケーションをクラウドの中に移行しよう」と唱える人々がいることも知っています。でも、そのような考え方は正しくなく、単なる願望にすぎないのではないかと思うのです。

 やはり10年、20年、30年たっても、いくつかのアプリケーションはオンプレミス(=社内)で運用しなければならないだろうと、わたしは確信しています。しかしながらそれと同時に、次の2〜3年の間に、多くのアプリケーションはクラウドの中にある方がより意味を持つようになっていくだろうとも思います。つまり、両方とも重要であり、両方とも主流であるといえます。

 オンプレミス・アプリケーションがクラウド・サービスによって置き換わるようなことはすぐには起こらず、例えば50年ぐらい先というように、かなり未来の話ではないでしょうか。

―― まもなく2009年11月17日にWindows Azure正式版のローンチが予定されていますが(ローンチに関する更新情報は本稿の末尾に記述)、ローンチ直後からすぐに、現実的に利用されていくと思いますか?

デビッド もちろん、そうなると思います。けれども、今回のWindows Azureのようにプラットフォームがまったく新しい形態になるという場合では、ほとんどの企業はそんなにすぐ、会社全体のビジネスにかかわるような大きな賭けには出ないでしょう。

 わたしが思うに、多くの企業は、小さく始めることになるのではないでしょうか。例えると、Windows Azure技術というプールに、取りあえず片足だけでも漬かってみるということです。少なくとも11月のローンチ時点では、例えば「まずはクラウドの中にデータを格納してみる」というように、小さなことからWindows Azureを使い始めると思います。データ格納であれば、低いリスクで、比較的安全にこの新しいクラウド・プラットフォームを利用する経験を積むことができるからです。もちろん、いくつかの企業はクラウドに対し大きな投資をすると思いますが、あまり一般的ではないでしょう。

 通常のSIやISV、エンタープライズのエンド・ユーザーは、取りあえずどんなものなのか試してみて、Windows Azureに対する信頼と知識を蓄積し、実際に採用する価値があるかを理解しようとするでしょう。

Windows Azureに経済的なメリットはあるのか?

―― クラウドの利点として、コスト低減が挙げられることがあります。しかし、Windows Azureのようなクラウドを採用すれば、本当にコストを下げられるのでしょうか? そもそもWindows Azureを採用するメリットとは何なのでしょうか?

デビッド すべてではありませんが、大半のケースで、Windows Azureを採用することはコスト低減を意味します。質問は「現実的には余計にコストが高まるのではないか」ということですが、その回答は「場合による」ということです。

 例えばテラ・バイト(TBytes)級の大容量のデータを格納する場合、Windows Azureストレージであれば、ギガ・バイト(GBytes)単位が月たったの0.15米ドル(=15セント)と非常に安いので、疑いようもなくローカルに置いたストレージよりも安価になるはずです。

 また、例えばISVでSaaSアプリケーションを提供する場合、日本全国の顧客を柔軟にカバーする高いスケーラビリティと、顧客満足度を高く維持するための信頼性が求められます。つまり、しっかりとしたプラットフォームが必要です。そのような場面では、もちろんISV自身がそのようなプラットフォームを構築することも可能でしょうが、これはかなり大変な作業になると思います。なぜそこまでする必要があるでしょうか。こういったケースでは、恐らくWindows Azureを選択した方が高いスケーラビリティや信頼性が得られ、かつ低コストになるでしょう。

 もう1つ例を挙げると、サッカーやコンサートなどのチケットを購入できるオンライン・チケット販売のようなシステムを構築する場合です。この手のアプリケーションでは、チケット発売開始のタイミングでアクセスが一時的に集中し、1〜2時間後には元に戻ります。このようなケースで、通常の古典的なデータセンターの場合だと、高い負荷に対処できるマシン群を常時そろえておかなければならず、低負荷状態のほとんどの時間は、マシンは何も作業していない状態でリソースが無駄になっています。これがクラウド・プラットフォームであれば、負荷集中時にインスタンスを増やし、負荷が収まればインスタンスを解放するという使い方ができ、従量課金であるため、かなりの費用を節約できます。

 以上、ここまでの説明の中に、クラウドを活用するためのキー・ポイントがあると思います。どんなアプリケーションでもクラウドへ移行すれば安くなるというわけではありません。既存のエンタープライズ・アプリケーションを、何も変更せずにクラウドの中へ移しても、経済的なメリットがあるとは限らないのです。

―― 現在の運用コストよりは安くなるだろうというのはWindows Azureの料金表を見れば何となく想像が付きます。ですが、従量課金制でその課金に上限がないため(=携帯電話のパケット定額制のような課金システムではなく青天井なので)、どうしても実際にどれくらい請求されるのか分からないという不安が残ると思うのですが。

デビッド 従量課金は、利用者にとっても1つのチャレンジですよね。Windows Azureでは、いくつのインスタンスを稼働させるかという部分のCPU処理当たりの課金は、自分でコントロールできます。また、どれくらいの量のデータをストレージに格納しているのかは、恐らく自分でご存じのはずなので、ストレージへの課金も管理できます。ネットワーク帯域使用の課金が一番の不安要素ですが、これもその料金を推測することは可能でしょう。Windows Azureアプリケーションでは、どれくらいの帯域幅を使っているかのスナップ・ショット・データを取得できるからです。

 このように考えると、課金部分で恐れる必要はありませんよね。まぁ、利用に基づく料金決定なので、それが請求書として上がってくるまで正確にいくら掛かったかが分からないのは、確かに不安な部分もあるかもしれませんが。


 INDEX
  [特集] デビッド・チャペル氏への特設インタビュー
  クラウドとWindows Azureの“もやもや”解消!
  1.クラウド時代は来るのか?/Windows Azureの経済的なメリットは?
    2.Windows Azure向きアプリとは?/米国事情は?/IT Proは仕事を失う?
    3.既存システム移行時の問題は?/RDBか? Key-Valueストアか?
    4.SOAPか? RESTか?/MapReduceは必要なのか?/開発者へのアドバイス

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