特集
マイクロソフトのクライアント戦略

次期Windows 7とOffice 14はどう進化するのか?

デジタルアドバンテージ 一色 政彦
2008/11/26
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ホームグループ(HomeGroup)

 従来のWindowsを使って自宅でネットワークを組むには、Windows 3.1の時代からある「ワークグループ」(WorkGroup)という機能を利用する必要があるが、一般的なユーザーには敷居が高く、スムーズに運用されていないのが現実だ。そこでWindows 7では、自宅のネットワークに接続するだけでネットワークに参加できる「ホームグループ」という機能が提供される。

ホームグループのセットアップ画面

 ホームグループの典型的な利用シーンとしては、例えば仕事から帰って、ノート・パソコンを自宅のワイヤレス・ネットワークに接続する。すると、「PCをホームグループに参加させて、プリンタやファイルの共有を行いますか?」のような問いが表示され、これにOKするだけで、ホームグループ内にある利用可能なすべてのデータやデバイス(プリンタなど)が利用可能になるというものだ。

 さらにライブラリーの機能により、ホームグループ上にあるドキュメントや音楽、写真、ビデオなどのデータを取得できる。また、家のほかの人にも見せたくない個別の項目やフォルダを、見せないように制限することもできる。

マルチタッチ対応

 Windows 7はMacやiPhoneで注目されるようになってきたマルチタッチ機能にも対応している。マルチタッチとはモニタを直接複数の指でタッチしてユーザー・インターフェイスを操作できる機能で、具体的にはクリックやドラッグ、ズームなどが行える。恐らく、前述の新タスクバーのボタンが少し大きくなっているのも、指でタッチしやすくするためなのだろう。

 タッチ・ジェスチャー(タッチによる指示)はマウス・コマンドに変換されるので、プログラムは何も対応しなくてもこの機能を活用できるが、正式にマルチタッチ機能に対応すれば、もっと多くの複雑な操作が可能になる。例えば、Internet Explorerはマルチタッチ機能のオンスクリーン・キーボードに対応しており、これを使ってLive Searchで検索でき、さらに検索後もクリックしたり、前のページに戻ったり、次のページに進んだりということがタッチで行える。

 マルチタッチ機能が使えるモニタはまだまだ高額だが(マルチタッチ可能なモニタが付いたHP TouchSmart PCは現在13〜20万円程度)、Windows 7がリリースされるころにはもう少し安くなっているかもしれない。いまから開発中のアプリケーションなどでマルチタッチ機能を有効活用することを考えるのは悪くないだろう。

アプリケーションのリボン対応

 Windowsに標準付属しているペイント(Paint)、ワードパッド(WordPad)などが、Microsoft Office 2007で採用されて一部に人気(しかし一部には不人気)の「リボン」(=メニューバーとツールバーを合わせたようなバー。厳密には「Windows 7 Scenic Ribbon」という機能)に対応している。次の画面はリボンに対応したペイントである。

リボンが追加されたWindows標準搭載の描画ツール「Paint」
この画像のPaintでは内部にWordPadの画面をキャプチャしたものが貼り付けられている。

 これと同様のリボン・コントロールが、次期.NET Framework 4.0のWPF Windows Presentation Foundation)やWin32 API、MFCに搭載予定。マイクロソフトによれば、Windows 7上のさまざまなアプリケーション(例えばWindows Live Movie Makerなど)でもリボンを採用する予定だという。Windows 7のほとんどのアプリケーションがリボンに対応するなら、ユーザビリティを考えて、Windows 7向けのアプリケーションはリボン対応するのが一般的になるのかもしれない。それを考えると、WPFの採用は一考に値する。

パフォーマンス改善で可能になるネットブック(NetBook)対応

 Windows 7は、特にWindowsコアのメモリ・フットプリント(占有サイズ)を減らし、デスクトップのウィンドウ・マネージャのオーバーヘッドを減らし、IO(入出力。特にレジストリやインデックスからの読み込み)を減らすことで、大幅にパフォーマンスが改善されているという。それによって、より少ない電力で動作し、バッテリー寿命を伸ばそうとしているそうだ。

 PDC 2008の基調講演の話では、「実際に1GHzのCPU、1Gbytesのメモリ(RAM)のネットブック(=性能は制限されるが低価格のノート・パソコン。例えばAsus Eee PCなどの5万円パソコン)上でWindows 7を使っているが、現在のビルドでは、起動後も半分のRAMが利用可能で、動作速度も問題ない」そうだ。このようにWindows 7は、ネットブック向けにも提供できるように努力しているらしい。

仮想ハード・ディスク(VHD:Virtual Hard Disk)

 Windows 7はVirtual PCやVirtual Serverで利用されているVHD(仮想ハード・ディスク)ファイルにネイティブ対応している。[コンピュータの管理](Computer Management)ツールの[ディスクの管理]機能を使って、VHDを(動的サイズと固定サイズを選択して)作成したり、アタッチ(=マウント)したりできる。ここで作成したVHDをコピーしてバックアップしておけば、開発環境や実行環境をいつでもリセットできるので、開発者には便利な機能ではないだろうか。

 次の画面は実際にVHD(Disk1)を作成したところだ。

VHDのアタッチ
VHDはVirtual PCやVirtual Server、Hyper-Vで利用されている仮想的なディスク・イメージのファイル形式。ディスクの内容をファイルとして扱えるので、コピーやバックアップなどの管理が容易になる。

UAC(ユーザー・アクセス・コントロール)

 Windows Vistaで追加されたUACについては、確かにセキュリティと利便性のトレードオフではあるのだが、何度も何度も表示される権限確認の通知を面倒に思うユーザーが少なくなかったのは事実だ。

 そこでWindows 7では、その通知の出現頻度をユーザーが自由に設定できる機能が追加される。次の画面のように、スライダ・コントロールで出現頻度のレベルをユーザーが自由に設定でき、場合によっては一番下の無表示にすることもできる。これによりUACの利便性が改善されることが期待される。

UACの通知の出現頻度の設定

2. 「ソフトウェア+サービス」化するWindows 7

 以上はユーザー・エクスペリエンスに関するWindows 7のイノベーションだが、「マイクロソフトが本気モードで進めるクラウド戦略」で説明しているように、マイクロソフトは現在「ソフトウェア+サービス戦略」を推進している。この戦略のコンセプトは、当然、クライアント・プラットフォームであるWindows 7の中にも組み込まれている。

 クライアント・プラットフォームとしては主にPC、携帯電話、Webがあるが、今後はこれらをシームレスにつなげて、パーソナル・コンピューティング(電子メール、プレゼン、ドキュメント、表計算などの単体機能)以上のものを実現することが重要だと、マイクロソフトは考えているようだ。それを実現する手法として、Windows 7ではソフトウェア+サービスのアプローチが採用される。

「Windows Live Essentials」+「Windows Live Services」

 Windows 7ではWindows Live Essentialsが搭載される予定だ。Windows Live Essentialsとは以下のソフトウェア群のこと。

  • Windows Live Family Safety(有害サイトへのアクセス防止ツール)
  • Windows Live Mail(メール・ツール)
  • Windows Live Messenger(チャット・ツール)
  • Windows Live Movie Maker(動画作成ツール)
  • Windows Live Photo Gallery(写真管理ツール)
  • Windows Live Toolbar(Internet Explorer用のLive検索ツールバー)
  • Windows Live Writer(ブログ書き込みツール)
  • Office Outlook Connecter(OutlookをWindows Live Hotmailに接続させるツール)

 さらにWindows 7では、このWindows Live EssentialsのソフトウェアをWindows Live Servicesのサービスで拡張できるようにする。Windows Live Servicesとは例えば以下のサービス群である。

  • Windows Live Hotmail(メール・サービス)
  • Windows Live Spaces(ブログ・サービス)
  • Windows Live Mesh(ファイル同期サービス)

 以上のWindows LiveスイートがWindows 7で提供されるわけだが、Windows Live Essentialsのソフトウェアからは任意のサービスに接続できる予定で、例えばWindows Live Mailでは、POPかIMAPを使ってWindows Live Hotmailに接続でき、これによってオンライン・サービスでアドレス帳やカレンダーを同期し、オフライン・ソフトウェアでリッチに操作、閲覧することができるようになる。ソフトウェアとサービスを組み合わせることにより、より優れた高いユーザー・エクスペリエンスが得られるようになるという算段だ。

 Windows Live Essentialsは現在、ベータ版をダウンロードできる。数カ月後には新しいWindows Live Servicesが披露される予定だ。


 INDEX
  [特集] マイクロソフトのクライアント戦略
  次期Windows 7とOffice 14はどう進化するのか?
    1.次期Windows 7に搭載予定の主な新機能
  2.「ソフトウェア+サービス」化するWindows 7
    3.ついにWeb版が提供される次期Office 14
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