特集
Windows Azure Platform実用に向けて

安い? 高い? Windows Azure Platformの料金体系

デジタルアドバンテージ 一色 政彦
2009/12/08
2009/12/14 更新
2010/01/12 更新
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 2009年11月17日(火)〜19日(木)の3日間、米国ロサンゼルスで開発者向けカンファレンス「Microsoft Professional Developers Conference 2009」(以降、PDC09)が開催された。その初日には正式版のWindows Azureの詳細が発表され、各メディアでそれに関するニュースが続々と発表されたのを記憶している人は多いだろう。

 本@IT/Insider.NETフォーラムでも、後日、PDC09の詳細をレポートする予定であるが、本稿ではWindows Azure Platformを現実に採用する際に最大の懸案事項となるであろうWindows Azure Platformの購買モデルと割引サービス、価格体系について詳解する。

 なお、本稿の内容はあくまで執筆時点(=改訂時点の2010年1月12日現在)の情報である。実際の金額などは、状況に合わせて随時、変更される可能性があるため、注意してほしい。本稿公開後日は、本稿の内容は参考程度にとどめ、正確な情報はマイクロソフトの料金&割引サービスのサイト(英語)を必ずご確認いただきたい。

 本稿で利用している図は、PDC09の「SVC54 - The Business of Windows Azure: What you should know about Windows Azure Platform pricing and SLAs」のセッション・スライドから引用している。

Windows Azure Platformの正式サービス開始に関連する全世界的な情報

Windows Azure Platformの正式サービス開始日と課金開始日

 何度も報道されている内容ではあるが、ここでもう一度、Windows Azureの正式サービス開始の日付と課金開始の日付を確認しておきたい。

  • Windows Azure Platformの正式サービス開始:2010年1月4日
  • Windows Azure Platformの課金開始:2010年2月1日(予定)

 この2つの違いは分かりにくいかもしれないが、要するに、2010年1月の1カ月間は実際の課金は行われないということである。この最初の1カ月間では、正式の製品サービスと、その使用に基づく請求を体験できる(請求金額と同額が割り引かれるので、実際の課金は発生しない)。つまりこの期間に、Windows Azure Platformで実運用するとどうなるか(パフォーマンスや料金など)を確かめられるのである。

 また、2008年11月から提供されていたWindows Azure PlatformのCTP(=コミュニティ技術プレビュー)プログラムは、2009年12月31日まで延期されることになった。正式サービスに対応する開発環境のVisual Studio向けツールやSDK(=ソフトウェア開発キット)がすでにリリースされているので、正式サービスをターゲットにした開発が2009年末まで無償で行える。

 なお、そのWindows Azureの開発環境は、下記のリンク先からダウンロードできる。

Visual Studio向けのWindows AzureツールのダウンロードWindows Azure SDKも含まれる)

【コラム】CTPアカウントから製品サービスに移行する際の注意点

 現在、Windows Azure PlatformのCTPプログラムに参加している場合、そのCTPプログラムのアプリケーションとデータをWindows Azure Platformの製品サービスに移行できる。

 具体的には、CTPアカウントと同じWindows Live IDで、Windows Azure Platformの製品サービスの課金モデル/割引サービス(詳細後述)を契約(購入)するだけである。CTPアプリケーション&データは、その最初の契約に自動的に関連付けられ、契約成立時点から(課金モデル/割引サービスの利用規約に基づき)課金され始める。

 CTPアプリケーション&データに課金されたくなければ、次のいずれかを実施する。

(a)課金モデル/割引サービスを契約するときに、CTPアカウントとは異なるWindows Live IDを使用する
(b)課金モデル/割引サービスを契約する前に、CTPアカウントに関連付けられたすべてのアプリケーションとデータを削除する

Windows Azure Platformの通貨と言語

 2010年2月1日からの課金では、日本円を含め11の通貨が使え、請求書は(日本語、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語の)5カ国語に対応する。

 それぞれの通貨に対し、米国ドル(USD)に対する換算レートが、次の表のように発表されている。

通貨 換算レート
日本円(JPY) 98
カナダ・ドル(CAD) 1.11
英ポンド(GBP) 0.6061
欧州ユーロ(EUR) 0.7092
デンマーク・クローネ(DKK) 5.46
ノルウェー・クローネ(NOK) 6.15
スウェーデン・クローナ(SEK) 7.5
スイス・フラン(CHF) 1.1
ニュージーランド・ドル(NZD) 1.563
(2010年Q2開始予定)豪ドル(AUD) 1.25
Windows Azure Platformの課金における米国ドル(USD)と各通貨の換算レート
Q2は第2四半期(4〜6月)を意味する。

 これらの換算レートは、四半期ごとに実際の為替レートに合わせて見直される予定で、2月1日からの課金開始時にも上記の値は変更される可能性があるので注意してほしい。

Windows Azure Platformが利用できる国

 ついでに、世界中のどの国でWindows Azure Platformの正式サービスが開始されるのかも紹介しておこう。日本は最初から利用可能な国に入っているが、実はWindows Azure Platformは、最初からすべての国で利用できるわけではない。

 まず、2010年1月から利用可能なのは、日本、オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、アイルランド、インド、イタリア、オランダ、ニュージーランド、ノルウェイ、ポルトガル、シンガポール、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、米国の21カ国である。

 さらに2010年Q2(=4〜6月)には、オーストラリア、ブラジル、チリ、コロンビア、コスタリカ、キプロス、チェコ共和国、ギリシャ、香港、ハンガリー、イスラエル、ルクセンブルク、マレーシア、メキシコ、ペルー、フィリピン、ポーランド、プエルトリコ、ルーマニア、トリニダード・トバゴの20カ国(もしくは地域)が利用可能になる。

Windows Azure Platformのデータセンター

 Windows Azure Platformのデータセンターは、北アメリカ地域、ヨーロッパ地域、アジア太平洋地域の3つの地域に提供される。

 2010年1月の正式サービス開始に伴い、シカゴ(北中央−米国)、サンアントニオ(南中央−米国)、ダブリン(北ヨーロッパ)、シンガポール(東南アジア)が選択可能になっている。今後は、アムステルダム(西ヨーロッパ)や香港(東アジア)が選択可能になる予定だ。

 当面の計画では、次の図のように、2010年中に各地域に2カ所ずつデータセンターが用意される予定である。

世界中にあるWindows Azure Platformのデータセンター
・北アメリカ地域:シカゴ(北中央−米国)、サンアントニオ(南中央−米国)。
・ヨーロッパ地域:ダブリン(北ヨーロッパ)、アムステルダム(西ヨーロッパ)。
・アジア太平洋地域:シンガポール(東南アジア)、香港(東アジア)。

 詳細は後述するが、アジア太平洋地域のデータセンター利用は、北アメリカ地域やヨーロッパ地域のそれに比べて割高になる予定だ(マイクロソフトはこの料金格差を将来的には改善したいと考えている)。

 なお現時点で、日本へのデータセンター設置の計画はない。ただし、Windows Azure Platformのデータセンターを構築できる「IT PAC」と呼ばれるコンテナを、日本のパートナーとの協業で導入する考えや、大口顧客向けに販売する考えがあるそうだ(IT PACについて詳しくは「Windows Azureを支えるコンテナ型DC、気化熱冷却に進化」を参照されたい)。

IT PACの外観(上)と内部(下)
このコンテナには、9×45ユニット(=405ユニット)のラック(=サーバを格納する場所)がある。

 IT PACによるデータセンター建設では、「コンテナがトレーラーで運ばれ、データセンター用の壁が作られた後、そのコンテナを壁の枠内に配置して運用する」というように、シンプルにデータセンターが構築されるのが分かる。そうやって世界中に作られたデータセンター(エッジ)とマイクロソフトが運営する巨大データセンターが、アンカー(=通信ハブ)を基点に相互接続され、クラウド・コンピューティング環境がクモの巣のように張り巡らされるという将来像をマイクロソフトは目指しているようだ。

 大きく脱線してしまったが、それでは本稿の主題である「実際の課金がどのようになるのか」を説明していこう。

Windows Azure Platformの購買モデル(Purchasing Models)

 この章で説明するのは、あくまで基本となる課金モデルの話のみである。Windows Azure Platformでは、このほかさまざまな割引サービスが用意されている。割引サービスについては3ページ目で説明する。

選べる3つの購買モデル(課金方式)

 Windows Azure Platformが最初に発表された当初、その購買モデルが「従量課金」(Consumption:使った分だけ支払う購買方式)であることが明らかになったが、その後、「定額で料金を支払いたい」というニーズを受け、「サブスクリプション」(Subscription)と「追加ライセンス」(Additional Licensing)の2つの購買モデルが追加されることになった。

Windows Azure Platformの購買モデル(課金方式)
・従量課金:使った分だけを請求する課金プラン。
・サブスクリプション:「基本ユニット」と呼ばれるセット単位で販売する課金プラン。54%もしくは52%割安になる。
・追加ライセンス:大規模エンタープライズ顧客向けのライセンス販売。詳細未発表。

 例えば、一定期間だけ使ってすぐにサイトを閉じたいような場合は、使った分の料金だけを支払う従量課金が向いているが、ずっとサイトを開いていてアクセスの増減も小さいような場合は、割安になるサブスクリプションの方が向いている。このように、どの購買モデルが最適なのかは利用ケースごとに異なると考えられるので、一意にどれかを選択するよりは、利用者ひとりひとりが状況に合わせて最適な選択を判断するべきである。

 参考として、従量課金に向いていると考えられるワークロード(=コンピュータ資源の利用状況)のパターンを次の図で示す。

従量課金に向いているワークロード・パターン

 それでは、各購買モデルの料金体系について詳しく見ていこう。


 INDEX
  Windows Azure Platform実用に向けて 
  安い? 高い? Windows Azure Platformの料金体系
  1.Windows Azure Platformの購買モデル(Purchasing Models)
    2.Windows Azure Platformの料金体系(Prices)
    3.Windows Azure Platformの割引サービス(Offers)
    4.Windows Azure PlatformのSLA(サービス・レベル契約)とサポート

更新履歴
【2010/01/12】 最新の状況に合わせて、データセンターの対応状況の記述を修正しました。

【2009/12/14】 以下のような誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。

アムステルダム(南ヨーロッパ)
アムステルダム(西ヨーロッパ)

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