Insider's Eye

Webサービスのフレームワークを定義するGXA

Greg DeMichillie
2002/11/08
Copyright(C) 2002, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc.


今後登場するもの、注目すべきもの

 GXAは当面、企業がこれを基にシステムを構築できる現実的なものというよりは、むしろアイデアの段階にある。これを現実化するには、Microsoftとパートナーが仕様を完成し、標準化団体による採用を経て、製品に搭載する必要がある。Microsoftがほかのベンダー(特にIBM)に対し、これらのプロトコルをサポートさせることができるか否かが、最終的にその正否を決めるだろう。

アイデアからコードへ
 GXA仕様はサードパーティ開発者の興味をひきそうだが、多くの企業開発者はこのプロトコルが実際のMicrosoftサーバ製品とツールに実装された時に興味を持つだろう。実装は何段階かに分けて行われるだろう。今後12カ月〜18カ月間に注目すべき事柄を以下に示す。

●ドラフト仕様の策定
 Microsoftは(共同作業による仕様の場合はパートナーとともに)すべての主要GXAピースのドラフト仕様を策定して、Webサイトで公開し、コメントを募る予定だ。これらの予備仕様は、企業のITマネジャーよりも、Microsoft製品と相互運用可能な製品の開発を希望するほかのソフトウェア・ベンダを主なターゲットとする。こうしたソフトウェア・ベンダは、これらの仕様を初期段階で調べて自社製品の将来のリリースを計画する必要がある。一方、企業のITプランナーは仕様が策定中だということだけを知っていればよく、仕様が商品に実装されてから興味を抱くのが一般的だ。

●標準化団体への提出
 ドラフト仕様がリリースされたら、標準化団体に提出されると期待される。各仕様を策定した企業(通常はMicrosoftと、IBMなど1社以上のパートナー)は、各仕様をどこに提出するかをケース・バイ・ケースで決める。一部の仕様は、Organization for the Advancement of Structured Information Standards(OASIS)によって処理されている。OASISはソフトウェア・ベンダとコンサルタント、IT組織の団体で、当初はStandard Generalized Markup Language(SGML)の相互運用性の推進を目的に設立されたが、現在はXMLにフォーカスしている。また、ほかの仕様はW3Cに提出されている。

●プレリリース・ツールキット
 Microsoftは通常、新興技術(Webサービスなど)向けのプレリリース・ディベロッパー・ツールキットを、これらの技術が同社製OSやサーバ、デベロッパ製品に完全に組み込まれるはるか以前にリリースする。これには以下のようなさまざまな理由がある。

  • Visual Studioツール全体のアップグレードを待つよりも、迅速に同社のテクノロジを市場投入するため。
  • 先端的デベロッパがMicrosoftのテクノロジを採用し、このコミュニティーの中で主導的地位を確立できるようにするため。

 デベロッパは、これらのツールキットを用いることで重要テクノロジを早めに知ることができるが、次のような重大な制約があり、アプリケーションの運用には適さない。

 これらは通常、現状のままで提供され、カスタマ・サポートは付属しない。一般的に、Microsoftの簡易アプリケーション開発ツール(Visual Basicなど)とほとんど、ないしはまったく連携していない。同社が用意するAPIは、プレリリース・ツールキットが出てからMicrosoftの全製品ラインに組み込まれるまでに変更される可能性がある。

●製品やツールへの搭載時期
 最終段階は、テクノロジがMicrosoftの製品ラインに直接組み込まれる時だ。GXAのようなWebサービス・テクノロジの場合、これはVisual Studio(Microsoftの主力デベロッパ製品)や同社のサーバ製品(SQL Server、Internet Information Services[IIS]、Windows .NET Serverなど)自体が同プロトコルを直接サポートすることを意味する。いずれにしても、GXAプロトコルのフルサポートがVisual Studioの次期メジャーリリース(コード名「Whidbey」、リリース時期は早くとも2003年下半期)以前に実現する可能性はない(Visual Studioの将来のリリースに関する情報は、Directions on Microsoft日本語版2002年10月15日号の「Visual Studioのロードマップを発表――OSとサーバのアップグレードと連動して機能拡充」参照)。

IBMとの関係が成功の鍵
 Webサービスが成功するには、最初のW3C書類で指摘された問題に取り組み、異なるOSやアプリケーション・サーバで稼働するWebサービスが相互運用できるようにする必要がある。これには、Webサービスを最も声高に提案している2大メーカー(MicrosoftとIBM)が連携し、しかるべき業界標準を策定する必要がある。

 一部の分野では、このレベルの協力はすでに認められる。例えばWS-SecurityとWS-Transaction仕様は、MicrosoftとIBM(そのほか)によって共同で策定された。しかし、ほかの分野、例えば信頼できるメッセージングとバイナリの添付では協力関係がなく、両社は異なる方向に向かっているようだ。もし、Webサービス標準が後退して、いくつかの分散技術のような業界を挙げてのありがちな論争(例えばCOMCORBA支持者の争い)に陥った場合、真の相互運用性は実現困難となり、WebサービスはMicrosoftとIBMが構想した約束を果たせなくなるだろう。

参考資料

■IBMとMicrosoftがW3Cに提出した書類のオリジナルは、http://www.w3.org/2001/03/WSWS-popa/paper51で入手可能。

■WS-Security、WS-Routing、WS-AttachmentsをサポートするWeb Services Development Kit(WSDK)は、http://www.msdn.microsoft.com/webservices/building/wsdk/default.aspからダウンロード可能。

■利用可能なすべてのGXA仕様へのリンクは、http://www.msdn.microsoft.com/library/en-us/dnglobspec/html/wsspecsover.aspに掲載されている。

■Web Services Interoperability Organization(WS-I)のWebサイトのURLアドレスは、http://www.ws-i.org
 

 INDEX
  Insider's Eye
    Webサービスのフレームワークを定義するGXA(1)
  Webサービスのフレームワークを定義するGXA(2)
    コラム:Web Services Development Kitの最新プレビュー版が公開
    コラム:WS-Transaction仕様がリリース
 
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