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新たな.NETブランド戦略「.NET Connected」ロゴが意味するものは?

―― サードパーティを積極的に巻き込み、.NETを浸透させるマイクロソフトの新戦略 ――
 

デジタルアドバンテージ
2003/04/09


 マイクロソフトは、サーバ向けWindowsの最新版であるWindows Server 2003の開発完了を2003年4月7日に発表した(この件に関するニュース・リリース)。このOSは、2003年1月まではWindows .NET Server 2003と呼ばれていたもので、その名が示すとおり、これは同社が進める次世代情報戦略「Microsoft .NET」を担うプラットフォームとしてデビューするはずだった(Microsoft .NETの詳細については別稿「基礎解説:初めてのMicrosoft .NET」を参照)。

 誰もが.NETの冠を付けたOSの登場を疑わなかったある日、マイクロソフトは、このOSの名称から「.NET」を取り除き、Windows Server 2003という現在の名称を適用すると発表した。製品直前版として大々的に配布された(一説によれば、10万コピーといわれる)RC2のパッケージですら、古い「Windows .NET Server」の名称であったことからして、この名称変更は以前から計画されていたものではなく、急遽決定されたものだということが分かる。今後マイクロソフトは、製品名に直接「.NET」という文字は挿入しない方向であるという(ただし、開発環境のVisual Studio .NETは例外のようだ)。

 マイクロソフトは、どうしてWindowsから「.NET」の冠を取り下げる必要があったのだろうか? .NET戦略自体が方針変更されたのか?

 幸い今回の名称変更は技術的な理由ではなく、あくまで「.NET」というブランド戦略の方針変更のようだ。マイクロソフトは、「.NET」のブランドをエンタープライズ製品群(.NET Enterprise Servers)からソフトウェア・プラットフォーム(.NET Framework)、開発環境(Visual Studio .NET)に至るまで、あらゆる場面で採用してきた。これは.NETの影響力がそれだけ広範にわたるという意気込みの現れであったが、あまりの急展開に、多くのユーザーは「.NET」が何を意味するのか混乱してしまった。今回の名称変更の大きな目的の1つは、こうした混乱の収拾にあるものと思われる。

 逆にいえば、ブランド以外の「.NET」戦略に変更はない。Windows Server 2003を始め、今後マイクロソフトは、同社製品の.NET Framework対応や、Webサービス対応機能の追加をあらゆるラインナップの製品に対し行なっていくはずだ。

.NET Connectedロゴ
マイクロソフトが提供するソフトウェア・プラットフォームの.NET Framework上に構築されたWebサービス対応アプリケーションは、製品にこのロゴを表記できるとともに、マイクロソフトによるマーケティング支援サービスを受けられる。

 Windows Server 2003は、名称からは「.NET」が取り除かれたものの、代わりにそのパッケージには、「.NET Connected Logo」と呼ばれるロゴが表記される予定である。これは、マイクロソフトが提供するベース・プラットフォームの.NET Frameworkを使用し、標準仕様に準拠したWebサービスへの対応機能を備えたソフトウェアであることを示すマークだ。

 このロゴは、マイクロソフト製品だけでなく、認定にパスしたサードパーティ製のアプリケーションでも表記できる。Windowsですっかりおなじみとなった「Windows互換プログラム」と同様の手法である。マイクロソフトは、自社製品の.NET対応を最前面で強調するという方針から、サードパーティを巻き込んでそれらにスポットを当てるという方針に切り替えたようだ。この「.NET Connected Logo」プログラムとは具体的にどのようなものかを見てみることにしよう。

.NET Connectedロゴ・プログラムの要件

 .NET Connectedロゴ・プログラムの認定を受けるには、当該アプリケーションが、以下のWebサービス標準仕様(および.NET Framework)に準拠している必要がある。.NET Connectedロゴ・プログラムの詳細な技術仕様については、ロゴ・プログラムに関する米MicrosoftのWebページを参照されたい。

 以下は、この技術仕様書より、要点を簡単にまとめる。

仕様 内容
XML Schema 1.0 XMLドキュメントの構造やデータ型を定義するための言語仕様
SOAP 1.1 ネットワーク分散環境において、構造化されたデータを交換するために考案されたXMLベースのデータ交換プロトコル
WSDL 1.1 Webサービス呼び出しに必要な仕様(パラメータや戻り値など)を記述するためのXMLベースの言語
UDDI 2.0 Webサービスを検索可能にするプロトコル。ただしUDDI 2.0対応は、ディレクトリ・サービスを使用するアプリケーションのみが対応すればよい
.NET Framework マイクロソフトが提供するソフトウェア・プラットフォーム。クラスライブライリやランタイム・エンジンなどで構成される
.NET Connectedロゴ・プログラムの条件

 当初マイクロソフトは、.NET Connectedロゴ・プログラムに2つのレベルを設けていた。これらはBaseレベルとPremiumレベルと呼ばれるもので、このうちBaseレベルでは、表の最後にある.NET Framework対応が免除されていた。つまり、標準のWebサービス仕様にさえ準拠していれば、.NET Framework以外のプラットフォーム、すなわちUNIXやLinux環境で動くアプリケーションでもロゴ認定を受けられることになる。

 しかしその後ロゴ・プログラムの方針が変更され、Baseレベルは削除されて、.NET Frameworkを含めてすべての項目(ディレクトリを使わない場合はUDDI 2.0は必須ではない)に準拠する必要があるPremiumレベルに一本化された。

ロゴ互換認定を受けるための3つのシナリオ

 ロゴ互換認定を受けるアプリケーションには、次の3種類のシナリオがある。

■ロゴ互換のWebサービスを提供するアプリケーション
 特定のプラットフォームに依存することなく(つまり、相手がマイクロソフト・プラットフォームかどうかにかかわりなく)、クライアントに対して情報やデータを利用可能にするWebサービスを公開するアプリケーション。

■ロゴ互換のWebサービスを使用するクライアント・アプリケーション
 複数のWebサービス・ソースから情報を収集し、それらを統合して利用可能なクライアント・ソフトウェア(マイクロソフトは、このようなソフトウェアを「コンシューマ:consumer=消費者、需要家」と呼んでいる)。この際複数のWebサービス・ソースから収集されるデータは、フォーマットやトランスポート・プロトコルさえも限定されない。さまざまなソースから提供される、さまざまな形式のデータを一元的に取り扱うことが可能なアプリケーションである。

■開発者やエンド・ユーザーに対し、ロゴ互換のWebサービス開発、Webサービス対応クライアント開発を支援するアプリケーション
 マイクロソフトは、このようなアプリケーションを「イネーブラ:enabler=(機器などを)使用可能にするもの」と呼んでいる。Visual Studio .NETのような開発環境や、各種の開発者向けツール・キットなどがこれに分類される。また例えば、アプリケーションにWebサービス対応を施し、アプリケーションを利用することで、エンド・ユーザーがWebサービスの機能を使用できるようなソフトウェアもここに分類される。

 Webサービス公開でロゴを取得するには、マイクロソフトから提供されるセルフ・テスト・プログラム(Web Service Tester Tool)を実行する。Webサービス・クライアントでは、アプリケーションを一部変更して、マイクロソフトが互換性テスト用としてインターネット上に用意したWebサービスにバインドし、提供されるメソッドを利用して、クライアントの有効性をテストする(セルフ・テスト・プログラムやテスト用Webサービスの詳細については、前挙の技術仕様書を参照)。

 ロゴの取得自体は無料である。ただし申し込みには、申し込み者を確認するためのVeriSign IDが必要である。

ロゴ・プログラムのメリット

 .NET Connectedロゴが表記されることで、エンド・ユーザーは、それが前出のような条件に合致したWebサービスであり、かつそれがWindowsプラットフォーム(.NET Frameworkプラットフォーム)上で構築されたものであることを識別できる。Webサービスは公開仕様であるから、.NET Connectedロゴがないからといって互換性がないとは限らないが、ロゴがあれば、確実な相互運用性を期待できる。試験運用ではなく、Webサービスを実用レベルで活用しようとする場合には、特に意義があるだろう。

 このことは逆に、開発者からすれば、ロゴの取得により、自社が開発したアプリケーションやWebサービスの相互運用性をエンド・ユーザーに対してアピールできることになる。またマイクロソフトは、ロゴを取得したアプリケーションを集めた「The .NET Connected Directory」というオンライン・ディレクトリを作成する計画である。原稿執筆時点(2003年4月上旬)で、パートナーとして26社の名前が上げられている。

 これはいわば、ロゴ互換アプリケーションのショーケースである。ディレクトリを利用することで、エンド・ユーザーはロゴ互換のアプリケーションを検索でき、開発者は開発したアプリケーションをプロモートできる。このディレクトリには、アプリケーション/Webサービスの名前やサービスの機能、実装方法、XMLスキーマへのリンク(オプション)、使用料金、要求システム、ダウンロード先などの情報が登録される予定である。残念ながら、原稿執筆時点では米国向けのページしか準備されていないが、近いうちに日本語版ページも用意されるだろう。

 読者がWindowsプラットフォーム上でのWebサービス対応アプリケーション(Webサービス・サーバやクライアント)開発を開始または計画しているなら、ロゴの取得も検討する価値があるだろう。End of Article

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