連載:Team Foundation Server 2010入門

第9回 Team Foundation Server 2010レポートを使ってみよう

WINGSプロジェクト りばてぃ(監修:山田 祥寛)
2011/04/26
Page1 Page2 Page3

 本連載もいよいよ大詰めだ。本連載では、Team Foundation Server 2010(以下、TFS 2010)に用意されている機能と、その機能へアクセスできるVisual Studio以外のソフトウェア(ExcelやMicrosoft Projectなど)について解説してきた。これまでの連載を通して、実際の開発現場でTFS 2010を使うためのイメージはつかめてきていることだろう。

 最終回である今回は、TFS 2010が出力できるレポートを確認していく。なお、TFS 2010の機能概要を把握していない状態で本稿をご覧の場合には、各機能の解説を確認してからの方が理解が早いので、まずは前回までの内容をご覧いただきたい。

2種類のレポート形式

 TFS 2010には大きく分けて2種類のレポート形式が用意されている。

 1つはTFS 2005のころから用意されているSQL Server Reporting Servicesを使ったレポートだ。ブラウザで確認できるため、どこからでも参照できて便利だが、自分にマッチするように表示させるにはレポートそのものの開発が必要であり、またデータの加工も行いにくいという欠点がある。

 もう1つはTFS 2010から用意されたもので、Excelのピボット・テーブルを利用したレポートだ。このレポートでは、ExcelからTFS 2010のOLAP(OnLine Analytical Processing)キューブに直接接続し、ピボット・テーブルやピボット・グラフの形でデータを確認する。そのための設定が施されたExcelファイルが用意されている。

 従来のTFSでも、独自にExcelからピボット・テーブルを利用してデータを閲覧していた利用者は少なくないと思うが、その設定情報が入ったExcelファイルが標準で提供されたという形になっている。

 今回はそれぞれについて、どのようなものが用意されていて、どういったシーンで活用することができるかを確認していくことにしよう。

 なお、本稿では用語の混乱を避けるため、Reporting Servicesによるレポートを「SSRSレポート」と表記し、またExcelのピボット・テーブルによるレポートを「Excelレポート」と表記することにする。

Reporting Servicesによるレポート(SSRSレポート)

 SSRSレポートと一口にいっても、さまざまな種類のものが用意されている。また、選択したプロセス・テンプレートによっても選択できるSSRSレポートは異なる。ここでは全体をふかんし、いくつかのSSRSレポートをピックアップして内容を確認していくことにする。

 まずは表1をご覧いただきたい。これはTFS 2010に標準添付の2つのプロセス・テンプレートに含まれているSSRSレポートの一覧だ。

カテゴリ SSRSレポート名 概要
ダッシュボード バーン レート 日ごとの実績作業の量と実際に必要な作業の量を確認する
バーンダウン 実績作業と残存作業の変化傾向を確認する
テスト テスト ケース準備 テスト・ケースの状態ごとの件数を確認する
テスト計画の進行状況 テスト・ケースの実行結果件数を確認する
バグ バグの傾向 アクティブ、解決済みなどのバグの状態ごとの移動平均を確認する
バグの状態 アクティブ、解決済みなどの状態ごとにバグの件数を確認する
再アクティブ化 解決済みにマークしたものが再度アクティブにされた率を確認する
ビルド ビルドの概要 ビルドごとのコード・チャーン、テスト・カバレッジ、バグの数、品質評価を確認する
ビルド品質指標 あるビルド定義のビルドごとのコード・チャーン、テスト・カバレッジ、バグの数を確認する
一定期間内のビルド成功 日ごとビルド定義ごとのビルド成功状況を確認する
プロジェクト管理 ストーリーの概要 ユーザー・ストーリーごとの進ちょく、テスト状況、バグ数などを確認する(MSF for Agileのみ)
ストーリーの進行状況 ユーザー・ストーリーごとの進ちょく状況を確認する(MSF for Agileのみ)
すべてのイテレーションの状態 いくつかのイテレーション実行後にイテレーションごとの作業データを確認する
バーンダウンとバーン レート ダッシュボードのバーンダウンとバーン・レートを同時に閲覧するもの
計画していなかった作業 後から追加された作業がどの程度存在しているかを確認する
残存作業 残存作業を時間、タスク数の観点から確認する
必要条件の概要 必要条件ごとの進ちょく、テスト状況、バグ数などを確認する(MSF for CMMIのみ)
必要条件の進行状況 必要条件ごとの進ちょく状況を確認する(MSF for CMMIのみ)
表1 SSRSレポートの一覧

[メモ]コード・チャーン(Code Churn)とは

 コード・チャーンとはチェックインごとにソース・コードに加えられた変更のことだ。追加された行数、変更された行数、削除された行数のことを示し、例えば日ごとにソース・コードに、どの程度の変更が加わっているかを確認するためのものだ。

 このようにプロジェクトで必要となりそうな観点(カテゴリ)ごとに、いくつかのSSRSレポートが用意されている。名前が似ていたり、用途が似ていたりするものもあるが、実際に表示してみるといくつかの異なるポイントがあるので、実際に確認してみるのがいいだろう。

 SSRSレポートは、例えば[チーム エクスプローラー]で対象のチーム・プロジェクトの「レポート」フォルダ以下をたどり、(各カテゴリ・フォルダ内の)SSRSレポート名をダブルクリックすることで表示できる(図1では「ダッシュボード」カテゴリの「バーンダウン」レポートを表示している例)。

図1 SSRSレポート(「ダッシュボード」カテゴリの「バーンダウン」レポート)の表示例
図1 SSRSレポート(「ダッシュボード」カテゴリの「バーンダウン」レポート)の表示例

 前回紹介しているポータル・サイトの左メニューにある[レポート]からSQL Server Reporting Servicesのサイトを表示し、そこからたどっていくことでも同様にSSRSレポートを参照可能だ。

 ここから先は、「これらのSSRSレポートを得るためには、日々どんな作業が必要となるか」に絞って、(表1のSSRSレポートの一覧で示した)各カテゴリのSSRSレポートを確認していくことにする。

「ダッシュボード」カテゴリのSSRSレポート

 「ダッシュボード」カテゴリのSSRSレポートは、前回紹介したとおり、図2のようにポータル・サイトのトップページにも表示されているものになる。

図2 ポータル・サイトのトップページ(「バーンダウン」レポート)
図2 ポータル・サイトのトップページ(「バーンダウン」レポート)

 「ダッシュボード」カテゴリのバーン・レートとバーンダウンは、それぞれ個別に表示することも可能だ。この2つのSSRSレポートは、基本的には毎日参照して進行状況の概要をふかんするために利用することが想定されている。

 これらのSSRSレポートは日ごとの状況を表示することを目的としている。そのため、より正確な情報を表示させるためには、MSF for Agileプロセス・テンプレートの場合はタスク作業項目の[残り]フィールドと[完了]フィールドを、MSF for CMMIプロセス・テンプレートの場合はタスク作業項目の[残存作業]フィールドと[実績作業]フィールドの値を日々更新しておく必要がある。

 TFS 2010に用意されている2つのプロセス・テンプレートでは、タスク作業項目は1日以内に終了する作業に分解されることが望ましいとされているため、その想定に従っていれば、作業開始と作業終了時に正しく更新を行うことで(バーン・レートとバーンダウンの)運用が可能だ。しかし、実際の利用においては複数日に渡るタスク作業項目が作成されることも珍しくないだろう。その場合にはその日の仕事終わりに、その日の状況を入力してもらえるように運用すれば同じ結果を得られる。

「テスト」カテゴリのSSRSレポート

 「テスト」カテゴリのSSRSレポートは、テスト・ケース作業項目の状態に基づいてデータが生成される。実際に「テスト ケース準備」レポートを表示してみると、図3のような内容を見ることができる。

図3 「テスト ケース準備」レポート
図3 「テスト ケース準備」レポート

 図3のレポートには、[状態]フィールドが「デザイン」および「準備完了」になっているテスト・ケース作業項目の数を集計した結果が表示されている。最終的にすべてのテスト・ケースが終了状態になると、ここには項目が表示されなくなる。

 このテスト・ケース作業項目は、結合テストやシステム・テストなど人による作業を伴うテストをVisual Studio 2010に用意されているテスト・マネージャというツールを利用して行うときに利用することが想定されている。

 次に「テスト計画の進行状況」レポートを表示してみると、図4のような内容だ。

図4 「テスト計画の進行状況」レポート
図4 「テスト計画の進行状況」レポート

 図4のレポートには、テスト・マネージャを利用してテストを実施した際に設定する「成功」や「失敗」などのステータスごとに集計した結果が表示される。このため、こちらに関してはそもそもテスト・マネージャを利用しなければレポートを参照すらできないというわけだ。

 このように「テスト」カテゴリのSSRSレポートは、テスト・マネージャと密接に関連しているため、テスト・マネージャ、テスト・ケース作業項目、「テスト」カテゴリのSSRSレポートは、1セットで使うか使わないかになるということを覚えておくといいだろう。

 なお、各レポートの詳細はそれぞれ、下記のリンク先に掲載されているので参照していただきたい。

 次のページでも、各SSRSレポートの紹介を続ける。


 INDEX
  [連載]Team Fourndaiton Server 2010入門
  第9回 Team Foundation Server 2010レポートを使ってみよう
  1.Team Foundation Serverに容易された2種類のレポート
    2.Reporting Servicesによるレポート(SSRSレポート)
    3.Excelピボットによるレポート(Excelレポート)

インデックス・ページヘ  「連載:Team Foundation Server 2010入門」


Insider.NET フォーラム 新着記事
  • 第2回 簡潔なコーディングのために (2017/7/26)
     ラムダ式で記述できるメンバの増加、throw式、out変数、タプルなど、C# 7には以前よりもコードを簡潔に記述できるような機能が導入されている
  • 第1回 Visual Studio Codeデバッグの基礎知識 (2017/7/21)
     Node.jsプログラムをデバッグしながら、Visual Studio Codeに統合されているデバッグ機能の基本の「キ」をマスターしよう
  • 第1回 明瞭なコーディングのために (2017/7/19)
     C# 7で追加された新機能の中から、「数値リテラル構文の改善」と「ローカル関数」を紹介する。これらは分かりやすいコードを記述するのに使える
  • Presentation Translator (2017/7/18)
     Presentation TranslatorはPowerPoint用のアドイン。プレゼンテーション時の字幕の付加や、多言語での質疑応答、スライドの翻訳を行える
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)

注目のテーマ

Insider.NET 記事ランキング

本日 月間