第2回 読者アンケート結果
― Webサービスは燃えているか? ―

小柴豊
@IT マーケティングサービス担当
2001/08/22


 Webサービス(Web Services)*1 -- IT関連業界に携わる人なら、いまや毎日のようにどこかでこの言葉を目にしていると思うが、実際の開発者はどこまでこの「Webシステム革命」に興味を持ち、“やる気”になっているのだろうか?Insider.NETフォーラムが実施した第2回読者アンケートから、その状況を紹介しよう。

*1 マイクロソフト社では最近「XML Webサービス」という呼称に統一したが、調査はその前に実施したこともあり、本稿では「Webサービス」として統一して記すことにする

読者のWebサービス興味度

 まずは読者のWebサービス興味度から見てみよう。Web上の(広義の)サービスと区別するため、質問の前提として「Webサービス」を以下のように定義した。

"インターフェイスが公開されたさまざまなWeb上のコンポーネント(サービス)を、OSや言語を問わずインターネット経由で疎結合することで、迅速/低コストにシステムが構築できる"

 この基本コンセプトに対して読者の反応を聞いた結果、全体の9割がWebサービスに対して前向きな興味を示した(図1)。実態がまだ見えない現段階で、過半数が「とても興味がある」と答えた点からも、開発者に対するWebサービス・コンセプトの訴求力の強さを実感できる。

図1 Webサービス:コンセプト興味度(N=151)

Webサービスの最大の魅力は、ユビキタス社会の実現?

 では開発者諸氏は、Webサービスのどのような点に魅力を感じているのだろうか?Webサービスの特徴を幾つか列記し、魅力を感じる点を選んでもらった結果が図2である。最も読者の興味を惹いたのは、「HTTP/XMLさえサポートすれば、どんな機器でもWebサービスを提供/利用できる」マルチデバイス性であった。それに続く開発言語/プラットフォーム/プロトコルの標準化・互換性も評価されてはいるが、デバイスの自由度にはそれらを上回る強い魅力があるようだ。携帯電話/PDAや各種情報家電をネットワークしたユビキタス社会を実現するシステムとして、“動的”に“疎結合”するWebサービスの遍在性が期待されているのではないだろうか。

図2 Webサービスの特徴で魅力を感じる点(複数回答 n=151)

Webサービス開発/利用意向

 読者がWebサービスのコンセプトに興味があることは分かった。では一歩進んで、Webサービスの開発にはどの程度乗り気になっているのだろうか? 「Webサービス自体の開発」「Webサービスを利用したシステム構築」に分けて意向を聞いた結果、およそ半数が「主にWebサービスを利用したシステム構築に興味がある」、4割が「主にWebサービスの開発に興味がある」と答えている(図3)。開発者のWebサービス開発/利用意識は、すでに醸成されてきているようだ。

図3 Webサービス開発/利用興味度(N=151)

 この「開発意向者」「利用意向者」別に、希望するWebサービス開発環境/実行環境を見ていこう。

開発環境/実行環境で火花を散らす.NET vs. Java

 まず「Webサービスの開発に興味がある」と答えた読者を対象に、希望する開発環境を尋ねたところ、「Visual Studio .NET、SOAP Toolkitなどのマイクロソフト環境」を選んだ人がおよそ5割、「JDK/IDE + Apache SOAP、Web Services ToolkitなどのJava環境」が4割となり、マイクロソフト環境を望む人が若干Javaを上回った(図4)。

図4 希望するWebサービス開発環境(N=58)

 一方、「Webサービスを利用したシステム構築に興味がある」読者に希望する実行環境を聞いたところ、今度は「Java2対応のWebアプリケーション・サーバ」が5割、「Microsoftの.NET Framework」が4割となり、こちらではJava環境がマイクロソフト環境をやや凌いでいる(図5)。

図5 希望するWebサービス実行環境(N=71)

 大手ベンダがプラットフォームを超えて標準化を行ってきたことが、Webサービスの魅力の源泉となっている。とはいえ慈善事業ではないベンダとしては、開発環境や実行環境でいかに多くの開発者を囲い込めるかが勝負になるだろう。基本コンセプトである相互運用性を維持しつつ、機能/パフォーマンスなどによる健全な市場競争が盛り上がることで、Webサービスが成功裡に離陸することが望まれる。最後にそんな心境を表した1読者の声を紹介しよう。End of Article

提唱されているコンセプトへ向かって流れは進んでいくであろうし、そうなってほしいと願っている。また、そうなることでさまざまな形で新しいものが現れると感じるし、新しい物を作りたいから。

 
調査概要
調査方法
Insider.NET サイトからリンクした Webアンケート
調査期間
2001年6月12日〜7月9日
有効回答数
151件

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 「Insider.NET 読者調査結果」


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