連載:〜ScottGu氏のブログより〜

Silverlight 3がリリース

Scott Guthrie 著/Chica
2009/07/22

 本記事は、Microsoftの本社副社長であり、ASP.NETやSilverlightなどの開発チームを率いるScott Guthrie氏のブログを翻訳したものです。氏の許可を得て転載しています。
【元記事】 Silverlight 3 Released (2009/07/10)

 本日(2009/7/10)、公式にSilverlight 3の最終版をリリースしました。

Silverlight 3の機能

 Silverlight 3は主要アップデートであり、非常に多くの新しい機能や特徴を提供しています。新しいSilverlight 3ランタイムの機能には、以下のものが含まれます。

■HDメディア

 Silverlight 3はハードウェア・グラフィックス・アクセラレーションをサポートし、ビデオと画像がGPUへロードされるように作成することが可能です。これにより、コンピュータのCPU使用を劇的に引き下げることができ、古いローエンドなマシン上でもHDビデオを再生することができます。現在では1080p HDビデオ体験を、Webを通して提供、再生することができます。

 Silverlight 3には、H.264ビデオ、AACオーディオ、MPEG-4コンテンツ用の新しいメディア・コーデック・サポートが含まれています。これにより、それらの基準でエンコードされたメディアを簡単に再生、ストリームすることができます。Silverlight 3はまた、生のビットストリームのオーディオ/ビデオAPIが含まれており、新しいコーデックを(すべての.NET言語で)作成でき、そのほかすべてのメディア形式の再生もサポートできます。Silverlight 3にはさまざまな新しいメディア機能も追加されており、(メディア分析や課金シナリオのための)より優れたログ作成、長いビデオ・コンテンツを再生する際にスクリーンセーバを無効化する機能、コンテンツ・プロテクションの有効化が可能です。

 IISメディア・サービスは無料のサーバ製品で、Silverlightを補い、HTTPを通して効率的にメディアをストリームするための機能を提供します。これにより、“スムース・ストリーミング”を使用してオンデマンドまたライブの両方のHDビデオを提供することが可能です。これは、アダプティブ・ストリーミング・アルゴリズム(adaptive streaming algorithm)により、クライアントのネットワーク状況とCPUの性能に対し、最適化されたビットレートでビデオを提供できます。このデモで、Silverlightを使用したスムース・ストリーミングの素晴らしさを実際に確認してみてください。

 SilverlightでのHDサポートは、IISメディア・サービスのスムース・ストリーミング・サポートとの組み合わせにより、Web上でのビデオ体験を劇的に改良することが可能です。先週だけで、Silverlightとスムース・ストリーミングを使用した複数の顧客によるライブHDイベント(最高3MBitsまで)の放送がありました。それらには、ウィンブルドン、ツール・ド・フランス、AVPバレーボール、マイケル・ジャクソン追悼式などがあります。

■実体験のようなグラフィックス

 Silverlight 3の新しいGPUアクセラレーション機能は、よりリッチでより実像的なグラフィックス体験を可能にします。

 Silverlight 3は新しいパースペクティブ3D(Perspective 3D)もサポーし、これを画像要素、ビデオ、コントロールとともに使用できます。Silverlight 3には、新しいビットマップやピクセルのAPIと、すべての画像、ビデオ要素、コントロールへの独自のピクセル陰影効果(ブラー、ドロップシャドウ、スワールなど)を作成、適用する機能も含まれています。イージングのサポートも、アニメーションにおいて、より多くのテキスチャのある動きを可能にするために使用できます。

■アウト・オブ・ブラウザのサポート

 Silverlight 3では、アプリケーションをブラウザの外でオフラインにした状態で実行できるようになります。ユーザーは安全にコンピュータ上へWebアプリケーションをインストールでき、デスクトップ、[スタート]メニュー、タスク・バーにショートカットを作成できます(これはWindowsおよびMacの両方でサポートされています)。

 Silverlightの新しいネットワーク検知のサポートにより、開発者はマシンのネットワーク状況をモニタして、アプリケーション内でオフラインとオンラインの切り替えを行うことができます。Silverlight 3には、アプリケーションの自動更新機能も含まれているため、アプリケーションがインストールされたクライアントは、インストール元のWebサーバに新しいアプリケーションが展開されると、自動的に更新されます。

■アプリケーション開発

 Silverlight 3には、新しいアプリケーション開発機能が数多く含まれています。

 Silverlight 3のランタイム/SDKとSilverlight Toolkitの組み合わせでは、現在100程度のUIコントロールが含まれており、標準的なシナリオ(レイアウト、データ、チャート、子ウィンドウなど)が、完全なスタイル化とテンプレートのカスタマイズ・サポートが提供された形で可能になります。

 Silverlight 3では、よりリッチなデータ・バインディング機能を可能にしています。コントロール間の要素同士のバインディング・サポートが、今回有効になりました。検証エラー・テンプレートのサポートがコントロールに追加されました(改善されたエラー・メッセージの表示が可能です)。階層的なデータ・バインディングがDataGridコントロールでサポートされました。そして、新しいDataFormコントロールにより、より優れたマスター/詳細シナリオが可能になりました。Silverlight 3では現在、SaveFileDialogもサポートしています。

 Silverlight 3には新しいナビゲーション・フレームワークが含まれており、ブラウザでディープ・リンクや[戻る]/[進む]ボタンの利用が可能になりました。これにより、検索エンジン最適化(SEO)のサポートが可能になるため、Google、Bing、Yahooなどの検索エンジンによるSilverlightアプリケーション内のコンテンツのインデックス化が可能になります。Silverlight 3はまた、クライアント上でアセンブリをキャッシュし、複数のアプリケーションでそれらを再利用する機能もサポートしています(ダウンロード・サイズを減少させ、アプリケーションの立ち上げ時間を改善)。

 Silverlight 3では、テキストのレンダリングとフォントのサポートも非常に改善されています。Silverlight 3アプリケーションを使用して文字を描画すると、以前のリリース版に比べて、より鮮明でクリアになっており、ローカル・フォントにもアクセスできます。Silverlight 3のスタイリング・システムは、マージされたリソース・ディクショナリ、BasedOnスタイルの継承サポート、何度でもリセットできるスタイル機能も現在サポートしています。Silverlight 3では、よりリッチなアクセシビリティのサポートも追加されており、すべてのシステム・カラーにアクセスできる最初のブラウザ・プラグインとなっています。これにより、目の不自由なユーザーは、なじみのあるOSのコントロールを使用して、ハイコントラスト・カラー・スキームなどを変更して可読性を改善できます。

 Silverlight 3には、よりリッチなネットワークのサポートも含まれています。まず、ネットワーク経由のWCFエラー・フォールトがサポートされています。サーバサイド・プッシュの二重通信サポートは、現在より簡単にセットアップできます。ペイロードのバイナリXMLシリアライズも現在サポートされています。新しい.NET RIA Services(.NET RIAサービス)フレームワーク(現在Go-Liveライセンスが付いています)は、クライアントとサーバ・アプリケーションをつなぐ多層データ・アプリケーションを簡単にビルドするために使用できます。.NET RIA Servicesにより、検証コードを一度書けば、それをアプリケーションのクライアントと中間層の両方に適用できます。

Visual Studio 2008 Tools for Silverlight 3

 VS 2008およびVisual Web Developer 2008 Express(無償)用のSilverlight 3開発サポートの無償ダウンロードも本日出荷しました。VS 2008 Tools for Silverlightをダウンロードすると、Silverlight 3アプリケーションのプロジェクト・サポート、IntelliSense、コンパイル、デバッグが提供されます。次のVisual StudioリリースであるVS 2010では、これに加えて、Silverlightに対する完全にインタラクティブなWYSIWYGデザイナを提供します(デザイナ内でのデータ・バインディングのサポートも含まれます)。

 VS 2008 Tools for Silverlight(Silverlight 3開発ランタイム+SDKもインストールします)はここからダウンロードできます。Silverlight Toolkit(さらにコントロールが追加されます)はここからダウンロードできます。

Expression Studio 3

 本日、Silverlight 3アプリケーションとプロジェクトをリッチに編集できるExpression Blend 3(Sketchflowを含む)の製品候補版(RC)も出荷しました。

 Expression Blend 3+Sketchflow RCは、ここからダウンロードできます。

 Expression Blend 3はメジャー・アップデートであり、劇的にリッチになったツール・サポートが可能です。それらの改善のいくつかは以下のようなものです。

  • Sketchflow:SketchFlowはプロトタイプや動的なユーザー体験の構築、顧客からのフィードバックの組み込みを非常に簡単にします。もしまだ見たことも試したこともない場合は、絶対やってみるべきです。ユーザー中心の素晴らしいアプリケーションを構築するための新しい方法です。
  • IntelliSense:Blend 3には、C#、VB、XAMLのIntelliSenseサポートが含まれています。VSに切り替えなくても、Blend内でコードやイベントハンドラが書けるようになります。
  • ビヘイビア:Blend 3には、デザイン画面のコントロールへ直接適用できる再利用可能なコンポーネントに対して、複雑なデザインのインタラクションをカプセル化できるビヘイビアのサポートが含まれています。これにより、デザイナーはコードを書くことなく、素早く機能や振る舞いをアプリケーションに追加できます。
  • Adobe PhotoshopおよびIllustratorのインポート:Blend 3では、PhotoshopおよびIllustratorファイルをインポートするサポートが組み込まれています。インポートするプロセスの一部として、インポートする各Photoshopのレイヤを確認・選択したり、レイヤのカスタマイズや再グループ化を行ったり、Photoshop/Illustrator要素によりXAML内で元の形式を保持させることができます。その中には、レイヤの位置、編集可能な文字やフォント設定、XAMLへのベクター要素変換が含まれます。
  • サンプル・データ:Blend 3には、デザイン時のサンプル・データのサポートが追加され、これにより簡単にデータ接続されたアプリケーションの疑似体験ができ、本番データにアクセスすることなく状態を確認できます。XMLファイルからサンプル・データを生成、インポートでき、デザイン時にアートボード上のコントロールで利用できます。サンプル・データの詳細はカスタマイズでき、またサンプル・データと本番データを実行時に切り替えることができます。
  • TFS:Blend 3では、Team Foundation Server(TFS)のサポートが含まれており、ソース・コントロールの使用やプロジェクトへの参加が可能になります。Blendは同じプロジェクトやソリューション形式をVisual Studioとして共有しているため、VSとBlendが同時に同じプロジェクトで作業でき、それらの間でシームレスな編集が可能です。
  • そのほかの改善:改善されたアニメーションやイージング機能のサポート、3D変換サポート、ビジュアル効果のサポート、改善されたビジュアル・ステート・マネージャ(VisualStateManager)用デザイナなどの改善点が追加されています。

 Christian Schormann氏は、Expression Blend 3の詳細について素晴らしいブログを投稿しています。

 最終リリースのExpression Studio 3(Blend+Sketchflow、Web、EncoderおよびDesign製品を含む)は、30日以内に出荷予定です。Expression Studio 3はMSDNプレミアム以上のサブスクリプション(MSDNプレミアムのお客さまはExpression Studio製品を取得するために料金はかかりません)の一部に含まれます。Expression Studio 3のスタンドアロンでの購入は599ドルです(以前のバージョンのExpressionや同様の製品からのアップグレードの場合はディスカウントされます)。

まとめ

 本日のリリースは、多くのSilverlight関連製品のメジャー・アップデートであり、これはSilverlight 2リリースから9カ月しかたっていません。

 Silverlight 3の詳細や、それに付随するツールについては、以下のサイトで参照できます。

 Hope this helps,

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