特集:Windows Phone 7.5 Refresh概説

SDKが正式公開されたWindows Phone “Tango”とは

山口 健太(Windows Phoneブログ「ななふぉ」管理人)
2012/04/11
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 2012年2月にスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2012」(以下、MWC)では、Windows Phone 7.5の最新アップデート“Tango”を搭載した端末が発表されました。

 そこで本稿では“Tango”が発表された経緯や、そのアップデート内容、そして開発者向けにSDKとアプリ開発上の注意点をご紹介したいと思います。

Windows Phone “Tango”とは

“Tango”はマイナー・バージョンアップ

 2012年4月6日現在、Windows Phoneの最新版は「Windows Phone 7.5」です。これはコードネーム“Mango”として知られています(関連記事: 「Windows Phone 7.5の新機能」)。“Mango”に続くマイナー・アップデートが“Tango”です。

 しかし“Mango”と違って、“Tango”は公式なコードネームとしては発表されていません。また、一部では「7.6」や「7.7」といったバージョン番号を期待する声もありましたが、「Windows Phone 7.5」という製品名も変わらないようです。

 このように“Tango”は正式な名前ではありませんが、ほかに呼び方もないので、本稿では便宜的に「“Tango”」と呼称することにします(編集部注:編集部が付けた記事タイトルの「Windows Phone 7.5 Refresh」という表記も正式名称として発表されたものではなく俗称とされています)。

最初の“Tango”搭載端末「Nokia Lumia 610」

 MWCではWindows Phoneだけでなくさまざまなスマートフォンの新製品が発表されましたが、“Tango”を搭載する初のWindows Phone端末「Nokia Lumia 610」(次の写真を参照)もその1つです。

Nokia Lumia 610

 Lumia 610は最新のハイエンド端末ではなく、低スペックの低価格端末です。従来のWindows Phone端末と比べて約半分となる256Mbytes(以下、本稿では「MB」と表記)しかメモリを搭載せず、CPUのクロック数も800MHzに抑えられています。価格は189ユーロで、これはWindows Phone端末としては最も安価なものです。

 “Tango”の主な目的の1つは、この低価格端末への対応なのです。

低価格端末が必要な理由

 高性能なスマートフォンが次々と登場する中、なぜ低価格端末が必要なのでしょうか。マイクロソフトのWindows Phone部門のトップTerry Myerson氏は、MWCでNokiaのプレスカンファレンスに登壇し、その理由を語りました。

マイクロソフトのTerry Myerson氏

 Windows Phoneの市場は、これまで北米や欧州、日本やオセアニアといった先進国が中心でした。しかしMyerson氏によれば、Windows Phoneは販売地域の拡大を目指しているとのこと。具体的には、中国やタイ、サウジアラビアやUAEといった中東諸国を含む、23の地域に新たに展開していきます。

 中でも、特に重要なのが中国市場です。現在、中国では100〜200ドルの低価格なスマートフォンが爆発的に売れています。しかし従来のWindows Phone端末はミドルレンジからハイエンドの価格帯で売られるものが多く、低価格と呼べる端末は存在しませんでした。

Chassisとの関係

 低価格のWindows Phone端末が存在しなかった理由の1つは、「Chassis」と呼ばれる共通仕様の存在です。Windows Phoneのハードウェアは、Chassis仕様で定められた最低要件をクリアする必要がありました。

 これはアプリの互換性を高める一方、端末の低価格化を難しくしていたといえます。そこで“Tango”では、新たにメモリが256MBしかない端末(次の写真を参照)にも対応します(現在最新のChassis仕様はこちら)。

Lumia 610の搭載メモリは256MB

 実は従来のChassis仕様でも、最小メモリは256MBと定義されていましたが、市販のWindows Phone端末は全て512MB前後のメモリを搭載していました。つまり“Mango”までのWindows Phoneは、512MBのメモリを前提に設計されていたといえます。

 さて、Lumia 610のように低スペックの端末では、Windows Phone OSの各機能や、アプリの互換性にどのような影響があるのか気になるところだと思います。

 ここからは、“Tango”がどのようにして256MB端末に対応するのか、詳しく見ていきましょう。

“Tango”の新機能解説

“Tango”の新機能とは

 “Tango”のアップデート内容は大きく分けて2種類あります。1つは、既存端末を含む全てのWindows Phone端末向けの新機能。もう1つは256MB端末向けの変更点です。

 全ての端末向けの新機能という点では、それほど多くありません。いま分かっている新機能としては、以下に写真で示すように、MMS(=SMSよりも長文のメールや画像付きのメールが送受信できるサービス)の送信時に複数の写真を添付できるようになり、表示言語として「マレー語」と「インドネシア語」が追加されます。

MMSで複数の画像を添付可能に

“Tango”でマレー語とインドネシア語に対応

 Windows Phoneの新機能に期待していたユーザーにとっては、やや期待はずれといえる内容かもしれません。これについては、“Tango”に続く“Tango II”というアップデートに期待したいところです。MWCではZTEの端末が“Tango II”を搭載することを発表しており、NFCWi-Fi Directといった機能に対応するとのことです。

256MB端末向けの変更点

 “Tango”で重要なのは、256MB端末向けの変更です。以下に、256MB端末における制限事項を列挙していきます。

  • ローカル・スカウト
     ローカル・スカウトは、現在地の近くにあるショップやレストランといったスポットを検索するWindows Phone 7.5の新機能です。256MB端末ではローカル・スカウトを使用できません。

  • ポッドキャスト機能
     Windows Phone 7.5の新機能として、端末上でポッドキャストを購読したり、動画ポッドキャストを再生したりする機能があります。しかし256MB端末ではこれらの利用が制限されます。

  • SkyDriveへの自動アップロード
     Windows Phoneのカメラで写真を撮影したとき、撮った写真をSkyDriveに自動的にアップロードする機能があります。256MB端末ではこの機能を利用できなくなります。

  • HD動画の再生
     256MB端末では、再生可能なHD動画の種類が制限されます。

  • バックグラウンド・エージェント
     Windows Phone 7.5で加わったバックグラウンドでタスクを実行する機能は、256MB端末では使用できなくなります。

  • 512MB端末専用アプリ
     Marketplaceで「512MB端末専用」として配布されているアプリは、256MB端末からはダウンロードできません。

 このように、Windows Phone OSのさまざまな機能が256MB端末では制限されることが分かります。

Marketplaceの“Tango”対応

 “Tango”のリリースに合わせて、Windows Phone Marketplaceも256MB端末に対応します。

 Marketplaceで公開中のアプリは、「全ての端末に対応したアプリ」と「512MB端末のみに対応したアプリ」の2種類に分けることができます。マイクロソフトによると、Marketplaceに公開されているアプリのうち、95%のアプリは256MB端末で問題なく動作するとのことです。しかし残りの5%には、主にメモリの消費量という点で問題があるそうです。

 すでに256MB端末で問題があるアプリについては、「512MB端末専用」という意味のフラグが付けられています。そこで、4月6日時点でMarketplaceに公開されている約7万4000個のアプリを独自に調査したところ、そのうち1200個のアプリが「512MB端末専用」となっていました。

 512MB端末専用のアプリを256MB端末でダウンロードしようとすると、以下のような画面になります。

[ここをタップすると詳細が表示されます。]をタップ
メモリ不足に関するメッセージが表示される
512MB端末専用のアプリを256MB端末でダウンロードすることはできない

 このように、Marketplaceハブからアプリ情報を閲覧・検索することはできますが、ダウンロードすることはできません。アプリの詳細画面には端末のメモリが不足していることを示すメッセージが表示されます。

 もしMarketplaceに自分でWindows Phoneアプリを公開している場合は、アプリが「512MB端末専用」になっていないかどうか、確認することをお勧めします。とはいえ、256MB端末はまだ発売されていないので、エミュレータを使って確認することになります。

 ここからは主に開発者向けに、“Tango”に対応した最新のWindows Phone SDKをご紹介します。


 INDEX
  特集:Windows Phone 7.5 Refresh概説
  SDKが正式公開されたWindows Phone “Tango”とは
  1.Windows Phone “Tango”とは/“Tango”の新機能解説
    2.開発者向け:“Tango”対応のWindows Phone SDK 7.1.1 Updateを解説

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