特集
女性エンジニアが本音を語る座談会

ソフトウェア業界で働く女性の実情とは?

座談会参加者:eパウダ〜
(聞き手、文責:デジタルアドバンテージ 一色 政彦)
2007/08/07

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開発で生かされる女性ならではの感性

一般的に女性は開発者に向いている?!

―― では実際に開発という仕事に携わっている感想として、女性って開発者に向いていると思いますか?

藤城 向き/不向きには個人差があると思います。明らかに向いていないと感じる方もいますが、それは女性でも男性でも同じだと思います。

村岡 向いている/向いていないは、男女の差というより、単にその人の性格によると思います。

開発という仕事で役立つ女性ならではのセンス

―― 「女性のこういう特徴が、開発という仕事では役立つ」ということは何かありますか? 例えばある男性は、「女性は繊細で緻密な仕事が得意だから、ドキュメンテーションなどは得意じゃないか」といっていましたが……。

 それは、男の人が自分のやりたくない仕事を、女の人に持ってきている面があるような気がします……。

藤城 でも、よく(同じようなことを)いわれますよね、うん。「ドキュメント作成は女性に向いている」とかいう人は多いんですけど、でもわたしは大嫌い(笑)。

一同 あはははは(爆笑)。

村岡 ドキュメンテーションでも、男性の方が、センスが良いということも多いです。

山田 これも性格など個性によるんじゃないでしょうかね。

村岡 どちらかというと、SE的な役割は女性に合っていると思う。

藤城 わたしもそう思う。女の人って、学生のときからこうやって女の子同士が集まって話をしたりする習慣がずっとあって育ってきているじゃないですか、男の人よりも。だから、コミュニケーション・スキルって女の人の方が高いことが多いと思うんです。例えば、普通にお客さんとしゃべったり、同僚とコミュニケーションを取ったりとかするときでも、いろんな角度から物を見て、相手の気持ちを推し量る手段を持っているんじゃないかなと思っています。実際にこの業界で、女の人で「コミュニケーション取れないな」と思う人はあんまりいないんですけど、逆にこの業界の男の人にそれを感じることはそれなりに多いです。

―― 例えば、どんな状況のときですか?

村岡 例えば客先に行ったときに、「顧客の意見」を聞き出すのではなく、「自分がやりたいこと」を押しつけている男性SEの方を見たりします。結果的にけんかして帰って来ちゃったり……。そうじゃなくて、前向きに進めるためにはどうすべきかを考えて、取りあえず相手の意見を引き出したうえで「できるかどうかは社に帰って検討します」という応対をした方がよいと思われる場面で、熱くなって、けんか腰になってしまうのは男性の方が多い気がします。そして収集がつかなくなって、「しようがないから謝りに行ってきて」といわれるのが女性だったりします……。

 わたしはいまやっている仕事で、それまでは男性と一緒に仕事をすることが多かったんですが、たまたまデザイン会社と組んだプロジェクトがあり、そこで女性の方と一緒に仕事をする機会がありました。そこで気付いたのですが、男性ばかりの中で会議をしても仕事の話しかしないんですよ。だけど女性が多い会議では、まずは世間話から入るんです。「今日は天気が良いですね」とか「休日はどうでした? どこかに行きましたか?」とか、場を和ませてから会議を行うんです。

―― そうですか。きちんとコミュニケーションを取るためには、ベースとなる信頼関係の構築が最初に必要だと僕も思います。ソフトウェア開発をするうえで、それがないと、その後にできるものが全然違ってくることにもなりかねないですよね。

藤城 お客さまに不信感を抱かれて作るのと、信頼と合意の下に作るのでは全然違いますから。だからコミュニケーションをしっかりと取っておくことが大事だと思うんですけど、無駄な会話が一切できない人というのが意外といるんですよね。話題を振ってもそこでボールが落ちてしまう(笑)。

山田 全然ボールが届かない、みたいな。で、自分で拾いに行ったり……(笑)

一同 (爆笑)

開発における「ムダ」なコミュニケーション

―― そういう人は、無駄な会話を本当に「ムダ」と思っているということなんでしょうか?

村岡 そうかもしれないですね。

藤城 そこをわたしは逆に聞いてみたいと思っています。この業界じゃない女の人に相談すると、「それは緊張しているんだよ」とか「話したいけど話せないんだよ」とかいうオチに持っていかれるけど、「本当にそうなのかなぁ」と疑問に思っていて、真相を聞いてみたいんです。

 プログラムを書いている人って、やっぱりプログラムのように無駄のないことを好むようになるのかなぁ。

藤城 その話に単に興味がないのかなぁ。興味がないことに対して「どういうふうに合わせればよいのか」という手段を持っていないし、「オレはそこまでしたくない」ということなのかな。

―― 男性の開発者って、自分で何かを作り上げてみたいと思ってソフトウェア業界に飛び込んだ人が多いのではないかと思うので、(仕事において)「自分が作る」ということ以外にはあまり興味がないという人は多そうな気がしますね、確かに。

村岡 「生涯プログラマー」という生き方がいいという考え方の人は、割とそういう傾向が強くて、上流(アーキテクトや各種マネージャなど)を目指している人はそれなりにヒューマン・スキルや駆け引きを身に付けることに積極的だと思います。

M あとは、「絶対にこれは確実だ」と思うことじゃないといわない人っていうのは多いですね。本当は自分の中でいろいろと考えているんだけど、あいまいなことは絶対にいわない人。

藤城 もちろん、話し掛ければちゃんと返してくれる人もいます。それで、けっこう面白い人もいるんですけど。でも中には、しゃべり掛けてもボールが落ちてしまう人もいます。

山田 ボールを投げても全然違うところにボールを返す人もいます。こんな答えは求めてないんだけど……(笑)。

一同 あははは(笑)。

藤城 そうそう。ビル・ゲイツの近況の話が返ってきたり(笑)。なんかそういう話が好きな人って多いですよね。批判系の話?

村岡 だんだん激しい批判の話になってしまったり……。

―― そういう方はこだわりを持っているんでしょうね。

村岡 ある意味、そういうこだわりとかポリシーは素敵だと思うんだけど、その魅力を出す場所が違うんじゃないかな……(笑)。

山田 あと、変にこだわりが強かったりすると、聞いているこっちは不快になっちゃったり、ムードもだんだん険悪になってきたり……。

藤城 その空気を読めていない人って意外といますよね。

村岡 でも意外にじっくり付き合うと面白いですよ。

一同 (笑)

 そういう人も必要は必要だと思うんですよ。コミュニケーションを取るのが苦手な人は多いですけど、まじめにコツコツ難しい研究とかライブラリの開発などを任せたりするとうまく仕事をこなします。

村岡 すごくまじめなんですよね。家でもコツコツと勉強したりして。

―― それは僕ですね(笑)。

一同 (笑)

―― 確かに開発者だったころは女性がまったくいないチームで開発していましたしね……。

.NETやマイクロソフトと女性エンジニアの関係

.NET開発を始めたきっかけ

―― ところで、この座談会は@IT/Insider.NETフォーラムに掲載されるのですが、この中で.NETの開発をされている方はどれくらいいらっしゃいますか? .NETを始めたきっかけは一体何だったのでしょうか?

山田 わたしは仕事ですね。全国の各支店をネットワークで結んだ情報システムのプロジェクトで、.NET Framework 1.0を使ったのがきっかけです。それまでもASP(Active Server Pages)やOracle PL/SQL(Procedural Language Extensions to SQL)などを活用したWeb開発の知識はありました。しかし、.NETは(それらとは)まったく使い勝手が違ったので、ちょっと苦労しました。それまではずっと「じか書き」でやっていたのが、急にツールを使って開発するように変わったので、試行錯誤の連続でした。

―― で、いまは.NETに対してどういう印象を持っていますか?

山田 ツールに慣れてしまえば、かなり使いやすい環境だと思います。どちらかというと、初めてWebアプリケーションやWindowsアプリケーションを開発する人でも、ツールの使い方さえ覚えてしまえば、比較的楽に開発できるかなという印象があります。その半面、やっぱりセキュリティ面やユーザー・インターフェイスに関する技術的な知識が薄れていってしまうのではないかという危ぐはありますね。ポンポンと貼り付けるだけで、いろいろな機能が実装できてしまうじゃないですか。その裏に隠されているロジックが見えにくいですよね。ツールの使い方じゃなくて、その裏にある仕組みも勉強する必要があると思います。

―― わたしもバックグラウンドに存在するロジックはきちんと理解しておく必要があると考えています。以前、六本木ヒルズで回転ドアに6歳の男児が挟まれて死亡する事故がありましたが、あの事故の原因の1つはバックグラウンドにある仕組みを理解せずに回転ドアを製作してしまったことにあるようです。あの回転ドアはもともとオランダのメーカーから技術提供を受けたものがベースになっているようで、最初の設計ではアルミ製で製作されて非常に軽量な危険性の低いものだったのに、それでは見栄えが悪いと日本のメーカーが鉄とステンレスに材質を変えました。そうすると、ドアが重くなって、それを回転させるモーターを強化せざるを得なくなった。その時点で、最初に設計段階で想定されていた「危険性の回避」などに対する視点が抜け落ちてしまった。だからこの事故は、「バックグラウンドにあったロジックを理解せずに、回転ドアを製作してしまったこと」が原因の1つなのだ、ということです。

―― 脱線しましたが、ほかの方はどうして.NETを始めたのでしょう?

なおこ 3〜4年前から仕事で使い始めました。最初はVisual Basic 6.0(VB)の開発に携わっていたのですが、より洗練された開発がしたくてJavaに転向しました。けれど予想外にJavaの仕事にも苦労したので「Javaの仕事はもうしたくない」といったら、.NETの仕事を担当するようになりました。最初に取り組んだのはASP.NETだったんですが、VBで学んだ知識と文法、Java時代のサーブレット開発で身に付けたオブジェクト指向やHTTP通信に関する知識がうまい具合に結合されて、すんなりとASP.NETに移行することができました。

マイクロソフトによる女性エンジニア支援

―― 今回の座談会にお集まりいただいた皆さんも「eパウダ〜」という女性エンジニアが集まったコミュニティですが、「女性がエンジニアとして働く」ということに対する理解や注目が高まりつつありますね。去年のMicrosoft Tech-Edカンファレンスでは、「Women in Technology @ Tech・Ed 2006 Lancheon」という女性エンジニア向けのランチ・ミーティングが開催されたようですが、どのような感じだったのでしょうか?

藤城 全体の流れは、最初にマイクロソフト、日本ユニシス、NECラーニングなどの企業で経歴とスキルのある女性エンジニアが登壇されて、現在に至るまでの経緯、女性エンジニアに対するアドバイスなどを紹介し、その後、テーブルごとにディスカッションを行いました。それまで、IT業界で女性が集まるイベントはほとんどなかったと思うのですが、実際に参加してみて、(女性がエンジニアとして働くということについて)「こんなにも関心があったのだな」と認識を新たにしました。それは参加された皆さんそれぞれが感じたと思います。男性も参加可能だったのですが、百数十名近い参加者の中で、男性が3割で、残りの7割は女性。「こんなに女性のエンジニアがいたんだ!」って驚きました(笑)。

一同 (笑)

―― では、もしまたそういう会があったら参加したいと思いますか?

半分以上の人 したいですね。

村岡 女性/男性って問わなくてもいいんだけど、女性ならではの悩みもあるので、ほかの女性エンジニアの意見を聞いてみたいというのはあります。これから先、親の介護があったり、子どもが病気がちだったりすると、それをどうやって乗り越えていけばよいのか。そういう会があれば、すでに経験された女性エンジニアの知恵を聞くことができると思います。「母親の気持ち」という部分では、やはり女性特有のものがあると思うので、女性の方に話を聞きたいですね。

―― ほかにも参加したい理由はありますか?

 女性エンジニアの知り合いは欲しいなって思います。

藤城 自分の悩みに対する共感やアドバイスが得られなくても、「女性エンジニアがほかにもいるんだな」って思えることが、わたしにはうれしいです。そういう出会いの機会は会社にいるだけでは少ないので、本当にただ、より多くの女性エンジニアと話をしたいということもあります。

―― そういえば、今年のTech-Ed 2007でも、eパウダ〜で「わかっていますか? 女性のキモチ。〜事例に見る “こんな時どうする” 〜」というセッションを行うようですね。頑張ってください。


 INDEX
  [特集]女性エンジニアが本音を語る座談会
  ソフトウェア業界で働く女性の実情とは?
    1.女性にとってのソフトウェア開発という仕事
  2.開発で生かされる女性の感性/盛り上がる女性エンジニア支援
    3.女性エンジニアの苦悩/男性たちのこんな勘違い


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