解説

実例で学ぶWindowsプログラミング

第2回 継承と属性プログラミングで実現するRAD開発 

デジタルアドバンテージ
2004/12/11
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MDI型Windowsアプリケーションの基礎開発 

 今回は、前回作成したMDIインターフェイスを持つWindowsアプリケーションをさらに機能拡張する。今回作成するのは、Windowsアプリケーションのユーザー・インターフェイスとして、業務系アプリケーションではよく実装されている「スタート・メニュー画面(メイン・メニュー画面)」だ。

 ここでいうスタート・メニュー画面とは、アプリケーションの実行開始時に最初に表示されるボタン形式のメニュー画面のことで、ボタンをマウスでクリックして実行するか、もしくは方向キー(矢印キー)でフォーカスを移動させて[Enter]キーで実行するような、操作が比較的単純な画面のことである。

 通常のWindowsアプリケーションでは、そのフォーム上部にメニュー・バーを配置することが一般的だが、パソコンにそれほど詳しくない一般的なユーザーが利用するような業務処理アプリケーションでは、そのようなメニュー・バーよりも、ボタン形式のメニューの方が扱いやすい場合が多い。

 このようなボタン形式のアクセスが容易なメニュー画面は、読者も身近に接しているはずだ。例えば、Visual Studio .NET(以降、VS.NET)でもボタン・メニュー形式の[スタート ページ]画面が用意されており、この画面にある項目をワン・クリックするだけで簡単にVS.NETの機能を使い始めることができるようになっている。実際に、この[スタート ページ]画面にある、ソリューション項目(下の画面例では「Kokyaku.NET」など)や[新しいプロジェクト]ボタンをクリックして、ソリューションを開いたり、プロジェクトを新規作成したりしている開発者も多いだろう。

Visual Studio .NETの[スタート ページ]画面
このようなボタン形式のメニュー画面は、ワン・クリックするだけでアプリケーション機能にアクセスできるという利便性がある。なお、VS.NETで[スタート ページ]画面を表示するには、IDEのメニュー・バーから[ヘルプ]−[スタート ページの表示]を選択すればよい。

 今回は、そのようなボタン形式のメニュー画面を構築していく。

■本稿で作成するスタート・メニュー画面

 本稿では、サンプル・アプリケーションとして(実装をより単純にするため)比較的シンプルで、なおかつ見栄えの良い(と思われる)メニュー画面を構築してみた。実際に筆者が考えたスタート・メニュー画面は次のとおりだ。

今回作成するスタート・メニュー画面
アプリケーション起動時に表示されるスタート・メニュー画面。マウスによるワン・クリック、もしくは方向キーで移動して[Enter]キーを押すことで、アプリケーションの業務処理機能を開始できる。
  Windows XPライクな丸い形のボタン(拡張ボタン・コントロール)。これをクリックもしくは、選択して[Enter]キーを押すことで、業務処理画面を起動できる。
  ボタンのデザインに合わせたパネル(拡張パネル・コントロール)。パネルの左上に表示されている文字列は、パネルのタイトル・テキストである(このテキストはLableコントロールで表示したものではなく、パネル自身が描画している)。

 スタート・メニュー画面には、複数のボタンを配置する。これらのボタンは、見栄えを良くするために、また操作性を良くするために、次のようなカスタマイズを行っている。

優しい印象を与えるためのWindows XPライクな角の丸いボタン
クリックしやすい大きなボタン(かつ、見やすい大きなフォント)
立体的に見えるように薄い色(上)〜濃い色(下)へのグラデーションがかかったボタン
ボタンの状態に合わせた表示の変化
  ・通常の状態:白色〜濃い青色へのグラデーション
・フォーカス状態:白色〜濃い紺色へのグラデーション
・ホーバー状態:黄色〜濃い紺色へのグラデーション
・押下状態:黒色〜濃い紺色へのグラデーション
ホーバー(Hover):マウス・カーソルがボタン上にある状態のこと

 またボタンを分類(グループ化)するパネルも、このボタンのインターフェイスに合わせて、次のようにカスタマイズしている。

ボタンに似合うように濃い色(左上)〜薄い色(右下)へのグラデーションをかけたパネル
ボタンと同じような色使い:濃い青色〜白色へのグラデーション
左上のパネル・タイトル文字列の描画

 今回は、これらのコントロール仕様に基づいてカスタマイズされた、拡張ボタン・コントロールと拡張パネル・コントロールを実装し、さらにそれをツールボックスに登録して、VS.NETでのフォーム・デザイン時にも使えるようにする。そして、作成したこれらのボタンやパネルを使ってWindowsフォームによる「スタート・メニュー」画面を構築する。

■Windowsコントロールを作成するには?

 拡張ボタン・コントロールや拡張パネル・コントロールなどを作成するために、コントロールを拡張する方法としては、次のような3つの手段がある。

  1. 拡張Windowsコントロール(既存のWindowsフォーム・コントロールを継承したコントロール)
  2. ユーザー・コントロール(UserControlクラスを継承したクラス)
  3. カスタム・コントロール(Controlクラスを継承したクラス)

 1は既存のコントロールのクラスを継承して、その派生クラスで拡張機能を実装する方法である。これに対して、2と3は新たなコントロール・クラスを作成して、そのクラスに独自のコントロールを構築する方法である。

 2のUserControlクラスはコンテナ・クラスとなっているので、複数のコントロールを容易にまとめることができる。2と3の違いは、2はWindowsフォームのコントロールとして十分な基本機能があらかじめ備わっているが、3はそのままではコントロール固有機能などを持たない(例えば3は、コントロール自身を描画して表示する機能を持たないので、コントロール自身の描画を行うOnPaintメソッドの実装が必須となる)。

 コントロールを「機能拡張」するような場合には1の方法を用い、それ以外の「一般的なコントロール作成」の場合には2の方法を使用する。どうしても1や2の方法では実装できない場合などで3の方法を使うようにすればよいだろう。コントロールの拡張についてより詳しくは、MSDN「コントロールの種類に関するアドバイス」を参照してほしい。

 本稿では、既存のButtonコントロールやPanelコントロールを少し機能拡張するだけなので、1の「拡張Windowsコントロール」という方法を用いる。2や3の方法によるコントロール作成手順は、今後の連載の中で紹介する予定だ。

■本稿で開発するサンプル・アプリケーションのダウンロード

 今回作成するVS.NETプロジェクトは、次のリンクよりダウンロードできる。

 それでは、スタート・メニュー画面の構築に取り掛かろう。

 なお、本稿のサンプル・アプリケーションのソース・コードの分量の多さからみて、そのすべてのコードを逐一解説するのは不可能である。よって、実装上の重要ポイントに焦点を絞って解説していく。あらかじめご了承いただきたい。


 INDEX
  解説:実例で学ぶWindowsプログラミング
  第2回 継承と属性プログラミングで実現するRAD開発
  1.スタート・メニュー画面の構築について
    2.拡張Windowsコントロールの作成
    3.属性プログラミングの実践
    4.拡張Windowsコントロールの利用方法
 
インデックス・ページヘ  「解説:実例で学ぶWindowsプログラミング」


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