自分戦略研究所 | 自分戦略研究室 | キャリア実現研究室 | スキル創造研究室 | コミュニティ活動支援室 | エンジニアライフ | ITトレメ | 転職サーチ | 派遣Plus |


不定期コラム:Engineerを考える(1)
フリーエンジニアになれる人とは


加山恵美
2002/6/12

 独立してエンジニアをしている知人が何人かいる。フリーエンジニアといっても、契約社員など会社員に非常に近い人もいるが、彼らは1人で仕事を受注して1人で開発している。私もエンジニア経験があるので、仕事の話題で通じる部分がいくつかある。久しぶりに会ったフリーエンジニアの友人たちから聞いたことを紹介してみよう。

フリーのエンジニアには何が必要?

 「コネかな(笑)

 そう答えたA氏に限らず、フリーでエンジニアをしている人たちは決まってといっていいほど、幅広い交友関係を持つ。エンジニアという職業上、技術力があり、ネット経歴の長い人が多い(これは年齢という要素もあるのかもしれないが)。彼らは、インターネットが広く普及する前のパソコン通信時代からオンラインで交友関係を広げていた。ネットを通じ、効率良く自分の興味の範囲に合致した友人を開拓している。または、自分のWebページで自分の技術力をアピールし、そこから交流を広げている場合もある。ネットの友人とオフ会で交流を深め、そこからいつしかビジネスにつながることもある。

 フリーエンジニアの中には、このような人脈を通じて仕事の依頼を受ける人もいる。また、仕事をこなしながら人脈をさらに広げ、新しい人脈からまた次の仕事、そしてその次の仕事へとつなげる場合がある。人脈を広げる能力、つまり会社のコネを使わずとも自分のコネだけで継続して仕事を受注できる自信があるからこそ、フリーエンジニアになれるのかもしれない。

マネジメントもできないとダメ?

 「後から要望が出てきたら、『それは次のフェイズで』というのも1つの方法だよ

 私が会社を退職してフリーになったとき、エンジニアとしての仕事は請けないことに決めていた。IT技術系プロジェクトのマネジメントが、いかに難しいかを痛感していたからだ。

 現役エンジニアのとき、ゴールが明確でないプロジェクトに右往左往させられることがたびたびあった。進化したアプリケーション開発環境によって、アプリケーションに機能を追加するのは簡単になった。だが、クライアントなどの思い付き(要望)にこたえていくときりがなくなってしまう。それにこたえた結果、汎用性のないアプリケーションが出来上がってきたこともある。

 仕事として請け負うからには、お互いの趣味や満足感を優先せず、金額や締め切りに見合った範囲でどこまでやるのかを明確に見極めることが大切だと感じている。そうでなければ、プロジェクトそのものが混乱する。そんな失敗例を見てきたからこそ、仕事量の見積もりと進ちょく管理ができる人がいないプロジェクト現場で、エンジニアとしてやっていくことに不安を感じたのだ。

 要望を実現するための工数見積もりが正しくできることは作業員が自分1人であるフリーエンジニアにはクリティカルな要素となる。つまりフリーエンジニアは営業、エンジニア、管理のすべての役割をこなせないといけない。

1人でやれる範囲しか受注できない?

 「チームが必要なら、そのときにチームを組んだり、会社に常駐することもある

 フリーで一匹おおかみとしてやっていると、1人でできる範囲しか受注できないと思い込んでしまう。が、実際はそうとも限らない。もちろん、1人だけで10人分の仕事はできない。だからといって単純に10倍の時間をかければいいというものでもないだろう。納期までに複数のメンバーが必要な場合や、チームで連携して取り組む必要があるプロジェクトもある。

 そういうときは、特定の会社に紛れ込み、常駐してプロジェクトをこなすこともあるという。その場合の採用形態はさまざまだが、一時的に派遣社員となることもあるという。A氏は、普段フリーエンジニアとして活躍しているが、同時に元同僚と会社を興し、その会社の役員でもあるという。そのため、フリーとして1人で開発を受注することもあるし、社員(役員)としてその会社のプロジェクトにかかわることもある。柔軟に対応する切り替えの早さに、私は感動した。

企業ではないと取引しないところは?

 「企業にとって個人に依頼するのは、リスクを背負うことになるからね

 仕事を依頼する側にとって、相手がフリーエンジニアならば、名指し(つまり指名)で仕事を依頼することになる。フリーで仕事を依頼されるのは、実は依頼する企業から信用があるという意味である。会社であれば、プロジェクトメンバーの1人が病気になろうと、不慮の事態でプロジェクトに参加できなくなろうと、ほかのメンバーを補充することができる。

 しかし、フリーエンジニアとなればそうはいかない。不慮の事態が起きれば、発注側は他のエンジニアを手配しなくてはならない。1人に一任することは、そうしたリスクを発注側が負うことになる。そのため、企業によってはフリーエンジニアに発注しない方針を打ち出しているところもあるわけだ。そういうときには、形式上仲介役となる企業を介して受注するという対処方法が取られたりする。

 フリーエンジニアは指名される信用を得ること、何かあったときに対処できる体制や余裕を持って仕事を進めることが、会社という集団にいるとき以上に必要とされることなのだ。

なぜフリーになろうと考えた?

 「何のために働くかを考えたから

 そもそもなぜ、フリーエンジニアの道を選んだのか。その結論に至るまでの経緯や理由は十人十色である。また、フリーエンジニアの形態も千差万別である。ただし、共通しているのは1社だけに属する会社員ではない、それだけだ。

 そうすると、必然的に経理などの管理も行うことになる。つまり、自分で税金や保険料などを納めたり、領収書を集めて計算し、税務署に申告する労力が必要となる。もちろん自分で請け負った仕事の報酬はすべて自分のものとなる。その代わり、自分主導で仕事を進め、仕事にかかる経費をすべて自分で管理する覚悟が要るということだろう。そうした環境下にいて身に付くこともあるだろう。

 フリーでエンジニアをする。それは選択肢や形態の1つだ。必要とされる能力や技術への自信も必要だが、それだけではない。結局、「独立して仕事をする」と決断ができる勇気こそが、フリーエンジニアになるための最重要な要素なのだ。

筆者紹介
加山恵美(かやまえみ) ●茨城大学理学部化学科卒業。金融機関システム子会社とIT系ベンダにてシステムエンジニアを経験し、グループウェア構築や保守などに携わる。そのかたわらで解説書を執筆していたが、それが本業と化す。技術資料を提供することで、日夜システムと格闘しているエンジニアをサポートできればと願う。幼少からバレエを始め、現在コンテンポラリーダンスを習っているが、いまだに身体が硬いのが悩みとか。双子座A型。

自分戦略研究所、フォーラム化のお知らせ

@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。

現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。

これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。