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エンジニアのキャリアアップに役立つ!
連載:最新の人材サービス活用法 第5回
そもそもキャリアとは何だろうか?

辻俊彦(@IT Job Agent担当
2002/4/19

 人材会社での勤務経験がある筆者(現@ITジョブエージェント担当)が、現在最も注目しているもの、それはキャリアコンサルティングなどの人材会社による人材サービスだという。そんな人材サービスの最新動向を紹介するとともに、エンジニアがキャリアアップを実現するために、どのようにサービスを利用していけばいいのかを解説する。

キャリアをどう考えるべきか?

 前回(「第4回 一般募集で得られないキャリアのフィードバック」)は、採用側との関係を生かして人材会社が転職成功の確率を高めてくれる事情について紹介しました。

 実際の転職をめぐる事情はケース・バイ・ケースで、万人共通の成功法則はありませんし、「成功=幸せ」でもありません。しかし、個人がきちんと考える必要がある問題ではあります。そこで今回は、その基礎となる部分に関して紹介したいと思います。

企業内価値だけが重要だった時代

 「キャリア」という言葉が、日本で頻繁に使われだしたのは、ここ5年くらいのことだと思います。インターネットがブームになってからと同じくらいの歴史だという印象を持っています。

 個人的には、1996年に出版された『成功するキャリア・デザイン』(堀義人著、日本経済新聞社、1996年6月、ISBN4-532-14477-9、1456円)が、キャリアという言葉との出合いでした。それ以前にもキャリアウーマンといった言葉はありましたが、個人がキャリアを考えるという発想自体は、あまりポピュラーなものではありませんでした。従来は、終身雇用・年功序列の人事制度の中で、企業が個人のキャリアプランを考え、スキルアップメニューを研修として提供していました。個人は、いかに企業内価値(豊富な社内人脈?)を高めるかに集中すればよく、社外(市場)価値など考える必要はありませんでしたし、(企業内)出世のみが自己実現を感じさせるものだったと思います。そういった環境に、急激な人材流動化、キャリア志向の時代が訪れたわけです。

そもそもキャリアとは?

 そもそも、企業丸抱えの環境で育った個人が、キャリアについて考えろ、といわれても無理な部分があります。アメリカでは、キャリアは広い意味では、「個人の生涯を通じて、仕事に関する経験や活動に関連した、知覚された態度や行動の連鎖」と定義されています。従って、キャリアは、職歴とか経歴といったものというよりは、人が生きていくうえで、仕事とどうかかわっていくのか、という個人の生き方そのものだということができるでしょう。従って、個人が自主的にゴールを設定できなければそれは見えず、自分が本当に楽しいことは何かが分からなければ、キャリアアップ、スキルアップの方向性を見いだすことは難しいと思います。

キャリア・アンカーというコンセプト

 アメリカには、「キャリア・アンカー」というコンセプトがあり、個人がキャリアについて考える際に、仕事に関して、次の3つのイメージを明確に意識することが重要だといわれています。その3つのイメージとは、次のようなことです。

1. 自分は何が得意で何が不得意なのか?
2. 本当にやりたいことは何か? 何をやっているときに充実感を感じるか?
3. 自分は、どういうことに価値を感じるのか?

 自分の才能、動機づけ、価値観という3つのイメージをきちんと認識していれば、どんなに環境が変わっても、揺るぎのないスタンスを確保することが可能になります。特に、必要とされるスキルの変化が激しいIT業界では、より重要なコンセプトだと思います。このコンセプトは、以前に書いたこと(「第2回 やりたいこととできること」)に一脈通じるところもあります。

本当に役立つキャリアカウンセリング

 では、上記のような意味でのキャリアに関するカウンセリングとは、どういうことになるのでしょうか? アメリカでは、キャリアカウンセリングを3C+Eと表現しています。それは、Counseling、Consulting、Coordinating、それにEducationのことを表しています。

より具体的には、

1. ビジョンと現状とのギャップを認識し、課題を明確にする
2. 課題を解決するための目標を明確化する
3. 目標達成のために現状を客観的に分析する(棚卸し)
4. 目標達成のためのアクションプランを策定する
5. 具体策の成果を評価し、フォローする

といったことを、個人と共同で行っていくことになります。キャリアが仕事の視点から見た生き方そのものであれば、キャリアカウンセリングは生き生きとした人生を支援するやりがいのある仕事といえるでしょう。それが単なる職業あっせんとは大きく異なるところであり、他者というスタンスで、個人に有益な気付きの機会を与え、モチベーションを高めながら、キャリア(人生そのもの)開発を行うプロセスといえます。

企業と個人との関係で変わるカウンセリングの役割

 終身雇用の時代の企業と個人とは、雇用関係の継続ということで一致していました。しかし、現在はそれぞれの思いが異なります。従来の企業が全社員平等に提供していたキャリア開発や研修は、個人も企業も雇用関係の継続を望んでいる場合にのみ提供されます。それ以外の場合は、新しい人材サービスが、社外から提供されています。すなわち、個人も企業も継続を望んでいない場合は、アウトプレースメント。企業が継続を望んでいても個人が望まない場合は、リテンション。個人が継続を望んでいても企業が望まない場合は、リストラ。といった具合です。

 それぞれ、個人は納得のうえで仕事人生を続けていくわけですから、上記4つのカテゴリのいずれでも、カウンセリングが重要になってきます。いずれにしても、キャリアカウンセリングの5つのプロセスを実行するとともに、キャリア・アンカーで語られている3つのイメージを明確に意識することにより、納得のいく生き方ができるようになることでしょう。依存していた企業の風向きが変わったことを嘆くよりも、自立的なキャリアの開発プロセスを、カウンセリングによって体感していただければと思います。なお、弊社の@ITジョブエージェントでも、キャリアカウンセリング(コンサルティング)に秀でた企業をパートナーとして、登録者の自己実現を支援するサービスを提供しています。

筆者紹介
辻俊彦 ●2001年3月まで、エンジニア派遣大手企業で事業企画に携わり、 企業のニーズに合わせた育成プロジェクトを立ち上げる。エンジニアの自己実現をサポートするというポリシーの下に、@ITジョブエージェントのサー ビス企画にも関与。

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