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エンジニアのキャリアアップに役立つ!
連載:最新の人材サービス活用法 第7回
キャリアを企業戦略に例えて考える

辻俊彦(@ITジョブエージェント担当
2002/6/21

 人材会社での勤務経験がある筆者(現@ITジョブエージェント担当)が、現在最も注目しているもの、それはキャリアコンサルティングなどの人材会社による人材サービスだという。そんな人材サービスの最新動向を紹介するとともに、エンジニアがキャリアアップを実現するために、どのようにサービスを利用していけばいいのかを解説する。

 前回(「第6回キャリアデザインを作りませんか?」)は、キャリアビジョンを明確化することが重要で、それに基づいてキャリアプランを立てて実践していけば、偶然性に支配されている人生に少しだけ必然性を加えることができることを紹介しました。また、キャリアプランに日付を入れる重要性にも触れました。今回は、少し考え方を変えて、自分戦略(キャリア戦略)を企業戦略のアナロジーで考えてみたい、と思います。

企業戦略と自分戦略

 ビジネスが競争である以上、企業には戦略が必要です。個人においても、人材流動化の時代には、企業内価値よりも市場価値が重要となり、キャリアに関する明確な戦略が必要となります。さらに、環境変化が激しく、千差万別の生き方が並存する現在では、キャリアビジョンに基づく自分戦略は欠かせないものとなっています。いままで企業戦略で語られていた勝つための差別化戦略や3C(Company、Customer、Competitor)分析は、自分戦略にも有効です。同時に、ビジョンあっての戦略であることは、企業も個人も共通です。

優れたビジョンの条件

 優れた企業ビジョンの条件として、よく挙げられるのは下記の6つの条件です。それぞれについて、自分戦略として意識すべきことを簡単に付記しておきます。

(1)将来のイメージが明確であること
 イメージを明確にするには、目標の日付を入れることが重要です。よくいわれる3年後、5年後、10年後のいずれの日付なのかを明確に意識しましょう。また、単なる過去・現在の延長線上でなく、あくまでも夢へ向けての3年後、5年後として思い描くべきです。

(2)ステークホルダー(企業の利害関係者)の長期的利益を実現すること
 自分自身を含めて、自分を取り囲む人々の幸せにつながらなければなりません。家族の幸せ、自分自身の幸せにつながるかどうかを、きちんと見極める必要があります。幸せは金銭だけで得られるものではなく、交際範囲の拡大や自分自身の成長も重要な要素になります。

(3)十分な実現性を持っていること
 単なる夢物語とは違う現実性が必要です。より現実性を持たせるには、自分の強みが生かせているか、現状におけるギャップおよび課題克服の道筋が明確であるか、ビジョンに対して十分納得しているか、という3点が重要になります。

(4)ビジョン達成に向けた明確なアクションプランがある
 先ほど述べた課題克服の道筋で、実際に何をやるのかが明確である必要があります。一般にいわれているPDC(Plan・Do・Check)サイクルをきちんとまわせることが重要です。何をいつまでに実行してどういう成果を挙げればビジョンに近づけるのかをプランし(Plan)、実際に実行してみて(Do)、定期的に進ちょく状況を把握するとともに(Check)、プランにブラッシュアップをかけられるようにすることが必要です。

(5)適度な柔軟性があること
 環境や状況の変化が激しい現在では、ビジョン自体には柔軟性を持たせる必要があります。コアな部分と変更可能な部分を意識してビジョンを考えてみましょう。また、日付を入れる際に実行スケジュールも含めて、柔軟性を持たせましょう。理想のスケジュールでは、予定どおり実行できないものです。とはいえ、ダラダラやるのではなく、PDCサイクルをきちんと行い、少しでも早く進める必要があります。

(6)シンプルであること
 基準として5分以内に説明できること、といったことがよくいわれます。あくまで欲張りすぎないことです。あれもこれもではなく、コアな部分を強く意識し、それ以外は変更可能なオプションとしてスリム化を心掛けましょう。また、他人に説明してみることも重要です。さんざん説明した揚げ句、「結局、きみは何がしたいの?」という答えが返ってくるのであれば、シンプルからはほど遠いことが分かるはずです。

3Cについて考える

 ビジョンの設定が最も重要であることは、繰り返し述べていますが、具体的なアクションプランに裏打ちされていることも見逃せません。そのためには、ある程度の分析を行わないと、個別に有効なアクションプランも立てづらいものです。そこで企業でいう、3C分析をしてみましょう。

(1)Company
 個人でいえば自分自身です。キャリアやスキルの棚卸しを行い、自分の強み・弱みを把握しておく必要があります。ここができていないとビジョンやアクションプランは、夢物語に終わってしまいます。よく若い人で、自らの可能性を信じて、入社1年目でキャリアアップのための転職を考える人もいますが、正直にいえばそれはキャリアアップではなく、リスタートです。後述の企業側の見方も含めて、きちんとした棚卸しが必要です。

(2)Customer
 求人でいえば(現在の会社を含んだ)企業の採用・人事部門のことです。自分のビジョン実現へ向けて、どういうキャリアアップやスキルアップの機会が、どこにあるのかは見落とされがちです。現在の会社でそうした場はないのか、社外でそうした場はないのか、現状を把握することは重要です。企業側からは、経験というからには3年以上は求められています。そういった採用側の事情が、既述のキャリアやスキルの棚卸しにフィードバックされ、棚卸しの客観性を高めることが重要です。

(3)Competitor
 広くいえば同じ仕事を求めている人は競合他者といえるでしょうが、企業側も一定の採用基準を持っているので、その採用基準との争いになります。ある特定の資格や一定規模のプロジェクトでの経験が、採用候補選定の基準となるでしょうし、それをクリアするためのアクションプランが必要になります。ほかの人との相対比較(新卒重視・終身雇用の従来型)ではなく、市場価値(人材流動化の高まり)に重きを置いた自分戦略が必要となります。

 以上、3つの要素の分析に必要なことを絞れば次の2点です。

  • キャリア・スキルの定期的な棚卸しを行うこと
  • 求人市場に関する情報を集めること

 Web上でキャリアやスキルの棚卸しが行えるサービスは、数多く提供されています。弊社が提供する@ITジョブエージェントも、そうしたサービスの1つです。また、求人市場の情報は人材紹介会社や人材派遣会社から得ることができます。本フォーラムでも@ITジョブエージェントパートナー企業への取材に基づくレポートを「ITエンジニア最新求人レポート」として毎月掲載しています。

筆者紹介
辻俊彦 ●2001年3月まで、エンジニア派遣大手企業で事業企画に携わり、 企業のニーズに合わせた育成プロジェクトを立ち上げる。エンジニアの自己実現をサポートするというポリシーの下に、@ITジョブエージェントのサー ビス企画にも関与。

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