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連載:ITエンジニア最新求人レポート No.12<2002年11月版
今後の厳しい転職トレンドに打ち勝つには

小林教至(@ITジョブエージェント担当
2002/11/28

アットマーク・アイティのキャリアアップ支援サービス「@ITジョブエージェント」を担当している筆者は、同サービスに参加していただいている会社をはじめ、複数の人材紹介会社/人材派遣会社を毎月訪問している。そこでヒアリングしたITエンジニアの求人動向を定期的にレポートする。マクロ的な動向ではないし、具体的な数値もないが、現状の市況や今後のトレンドを推測する資料としてほしい。

 この連載を始めてから今回でちょうど1年がたつ。毎回、1カ月単位という短期間でのトピックをレポートしているが、今回は1年という長期トレンドを、人材紹介会社、人材派遣会社にヒアリングした。ドッグイヤーと呼ばれるIT業界において、ITエンジニアの求人トレンドもこの1年間で大きく変化している。

激減した外資系企業の採用

 1年前のレポートでは、どんなトピックを紹介したかを振り返ってみよう。「ITエンジニアの求人動向に陰りが見えてきたのは、今年の春先からだ。その後も上向くことなくますます冷え込んでいるらしい。夏ごろには、すでに『プログラマやSEなりたてレベルの若手ITエンジニアは充足感がある。足りないのは、プロジェクトリーダー/マネージャクラス』(人材紹介会社)」(2001年12月版からの抜粋)とレポートしている。この後、ITエンジニアへの求人ニーズは急速にマイナス傾向となった。

 その後1年で、この傾向はどう変化しているのだろうか。「絶対的な求人数は、1年前よりも減少していると思います。中でも外資系IT企業は、昨年9月の米国同時多発テロ以来中止した採用活動を、いまだ再開できないところが多いですね。いま採用活動をしているのは、マイクロソフトなどごく一部です」とは、某人材紹介会社。同様の発言は複数の人材紹介会社からも聞いた。IT業界で外資系といえばその多くは米国企業だが、昨今の米国の経済動向からしても、外資系の採用ニーズは当面低調と思われる。

勝ち組製造業の採用は活発

 中途採用が活発化したのは、国内の勝ち組製造業だ。1年前、某人材紹介会社幹部は、製造業の採用が「2002年春から夏にかけて活発になるだろう」と発言していたが、まさにそのとおりとなり、今年春以降トヨタなどの自動車メーカー、ソニー、キヤノン、リコーなどのいわゆる“勝ち組”メーカーの採用が活発化し、その傾向がいまだに続いている。

 中途採用活動を積極的に行う企業が、勝ち組企業に限定されてきたということは、中途採用の手法にも大きな影響を及ぼしているようだ。「勝ち組企業で積極的に採用している大手企業は、求人募集広告を雑誌に掲載しなくても、自社のWebサイトだけで多数の応募者を獲得できます。求人雑誌に掲載されていないからといって、採用していないわけではありません」(某人材紹介会社)。積極採用する企業にとっての課題は、いかに応募者を集めるか、ではなく、いかに効率よく応募者の選別を行うか、に移ってきているようだ。

 そこで企業は、自分たちの求める人材を把握し、それに該当する求職者を紹介する人材紹介会社の利用頻度を高めている。雑誌広告などに掲載されず、人材紹介会社のみが知る求人情報も多い。よく「人材紹介会社などを頼らず、転職先は自分の力で見つける」と主張する方がいるが、企業の採用手法が変化している現状においては、かなり効率の悪い方法かもしれない。

テクニカルスキルは二の次?

 勝ち組企業のように中途採用活動を積極的に行っている企業もあるが、総じて採用基準は高いようだ。「1年前に比べ、採用基準は上がっています。テクニカルスキルにおいてではなく、業務知識などのビジネススキルとヒューマンスキルにおいてです。また少しでも採用基準に合わなければどんなに優秀な人材でも落とされます。いまの人事部は中途採用で妥協はしません」(某人材紹介会社)。テクニカルスキルは多少劣っていても、入社後に研修で補えるが、ヒューマンスキルの向上は、研修で補うことは難しい、と説明する企業があるという。

 ある人材紹介会社は、1年前に比べて内定率が60%程度になっていると打ち明けてくれた。「書類選考と一次面接を通過して、求人をしている現場責任者が採用したいといっても、最終的に役員の判断で不採用になるケースが最近目立ってきました。現場からすればスキルレベルは申し分なくても、役員や人事部では採用コストや年収とその人材のレベルをはかりに掛け、シビアに選択しているためです」(某人材紹介会社)

 テクニカルスキルに関しては、得意な専門分野があり、そのほかにも強い分野を持っていることが求められるという。よくいわれる、T型(得意分野+周辺分野の知識)ではなく、H型(得意分野×2+周辺分野の知識)ということだ。

ニーズの高いエンジニア

 このような情勢でも、企業が求めてやまないエンジニアがいる。それが毎回のようにお伝えするERP導入コンサルタントとプロジェクトマネージャだ。しかし、これら職種についても変化が起きている。「実はERP導入コンサルタントについて、いままで未経験可という求人案件もありました。しかし、最近はすっかりなくなってきました。ただし、飽和感はなく求人ニーズは引き続き高いままですね」(某人材紹介会社)

 プロジェクトマネージャも同様で、「求人ニーズは高いのですが、実績評価はシビアになってきました。チームのマネジメントだけでなく、コスト管理ができることは必須です」と、前述の人材紹介会社が説明してくれた。プロジェクトマネージャとしての売れ線は、30〜35歳で大規模開発経験者だそうだ。

 テクニカル分野でも、1年前と比較して顕著な傾向があるという。「1年前は重要視されていなかったWebアプリケーション開発経験が、最近は要件として挙げられることが多くなりました。われわれ人材紹介業界という観点からすると、Webアプリケーションは完全にビジネスベースになっていると判断しています」(某人材紹介会社)。この人材紹介会社は続けて、「Webアプリケーション開発においては、汎用機系の開発経験は通用しない、と企業は見ています。レガシーなシステムを担当してきたエンジニアにとっては、このトレンドは厳しいものでしょう」

これから必要なのはキャリアプラン

 以上を総合すると、企業の勢いの差がそのまま中途採用に表れた1年だったといえるだろう。そしてこれからの1年は、さらにエンジニアの中途採用が厳しくなるというのは、どの人材紹介会社でも一致した意見だ。では、転職はしない方がよいのかといえば、そんなことはない。

 いまの会社に居続けても、いつのまにか価値の低い人材となり、40歳代でリストラされる可能性がある。つまり、いまの時代は、転職しないことは、転職することと同じくらいリスクがあることなのだ。

 ある人材紹介会社の幹部に、これからの時代を生きるエンジニアに対するアドバイスを聞いた。「エンジニアに限りませんが、客観的な視点を持たないキャリアプラン、いわば自己満足的なキャリアプランでは通用しない時代です。転職上手になる必要はありませんが、キャリアプランニングとその実現はうまくなっていただきたいと思います」

 「次に中高年のエンジニアの方ですが、Webアプリケーションの普及など、従来型の開発経験だけでは売りにならなくなりつつあります。とはいえ、局所局所ではレガシーシステムの開発経験や運用経験が生かせる場があります。市場動向や求人情報などを丹念にリサーチして、その結果を基にキャリアプランを作ってください」

 「最近の若手エンジニアは、早く開発現場を離れて、上流にシフトしよう、という思いが強いようです。しかし、開発現場での苦労はのちのちのキャリアにおいて必ず役に立ちます。開発現場は何日も徹夜が続くような本当につらい経験だと思いますが、そういう場数をどのくらい経験したかが、マネージャやコンサルタントなどになった場合にモノをいいますから」

 文字だけだと伝わりにくいが、人材紹介業界十数年の経験に裏打ちされた発言だけに重みがある。師走のこの時期、自身のキャリアプランについて考えてみてはいかがだろうか。

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筆者の担当している@ITジョブエージェントは、キャリアやスキルを登録することによって人材紹介会社の無料のキャリア相談やキャリア査定を受けることができる、ITエンジニアのためのキャリア支援サービスです。転職を予定していない方でも、キャリアプランの参考にご活用ください。

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