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転職支援訓練体験レポート
失業者はエンジニアになれるか?
第1回 失業者、エンジニアに目覚める

かわい きこ
2002/2/6

リストラに遭遇した筆者はハローワークで、あるプログラムを知った。それは、失業者向けの転職支援制度だった。現在の労働者の需給マッチを解消すべく、政府が実施している「緊急IT化対応等委託訓練」には、数多くのITエンジニアやプログラマに転身できるようなコースがあった。筆者はそのプログラムに応募し、エンジニアへの転身を図ろうと考えた……。このレポートは、筆者が実際に通った学校での実体験を基にしています。もちろん、すべての学校が同じような状況とは限りませんが、就職支援訓練に通おうと考えている人の参考になればと思います。

現在、政府はIT化の人材を育成するため、「緊急IT化対応等委託訓練」を展開している(写真と本文とは関係ありません)

■リストラを初体験

 日本の完全失業率は5%を超え、2001年はIT業界でも企業の業績不振やリストラなどのニュースが相次いで報道されました。とはいえ、エンジニア(特にソフトウェアやネットワーク関連のエンジニア)という職種は、常に人材不足のようで、不況でも職にあぶれることは少ないようです。しかし、私の職業(業界はIT業界でした)は、エンジニアとは縁遠く、“業績不振によるリストラ”を経験することになりました。

 これまでIT業界で仕事をしていたにもかかわらず、技術面に疎かった私は、リストラされた途端、不謹慎にも「チャーンス」などと叫んでいたのです。ご存じでしょうか、失業者向け就職支援訓練のことを。世の中「IT、IT」と叫ぶ中、政府も「緊急IT化対応等委託訓練」なるものを実施しているのです(現在も実施しているかは分かりません)。失業者にITの知識を身に付けてもらい、再就職を容易にしようという趣旨のもので、受講料は無料。考え方を変えれば、いままで納めた雇用保険料が、しっかり還元されるわけです。早速私はハローワークに出掛けて行き、パンフレットを入手しました。

■夢のパンフレット!?

 パンフレットを手に取った私は夢見心地でした(写真1)。開催予定の講座はどれも3カ月間みっちりフルタイムの学生として学校に通うコースばかり。そこに印刷されていたのは、「Webシステム構築科」「パソコンネットワーク科」「プログラマー養成科」、それに「システムアドミニストレータ科」など、本来なら何十万円もかかりそうな訓練内容が盛りだくさん。「もしかすると3カ月後には技術者になっていたりして?」という無謀な考えが頭をかすめました。うかれた私は、このパンフレットを常に持ち歩き、会う人会う人に失業生活への夢を語っていました。

写真1 筆者に根拠のない自信を与えてくれた夢のパンフレット

 この緊急IT化対応等委託訓練の講座数は数あれど、受講できるのはたったの1講座。この中からどのコースを申し込むのかを決めなくてはいけません、しかし、私には強い味方がいたのです。たまたま私より半年ほど早く別の会社でリストラに遭った友人が、同様の訓練コースでプログラミング講座を受講していたのです。そこで早速話を聞いてみました。「JavaとかPerlまでやるんでしょ? どうだった?」と聞くと、「最初はHTMLから授業するから、JavaやPerlに行き着くまでが大変。結局3カ月間でJavaやPerlの授業は、たったの2週間程度だったかな。ま、とにかく私には、JavaやPerlは難しいってことが分かったからいいけど」とのこと。

 というわけで、私のターゲット講座は2つに絞られました。「パソコンネットワーク科」か、「Webシステム構築科」です。さて、どっちにしよう?

 技術者でない私にとって、パンフレットの内容だけではどうも講座の内容がいまいち把握できません。もしかしたら、これは私が技術者でないということとは関係ないのかもしれません。パンフレットには、次の情報ぐらいしか掲載されていなかったのですから。

「パソコンネットワーク科」
 Windowsネットワークの基本技術を中心に、ビジネスで必要な情報処理知識やExcel/Accessなどを学習する。

「Webシステム構築科」
 Linuxを利用して、サーバ管理者としての技術を習得する。ネットワークシステムを構築する。

 「パソコンネットワーク」というコース名にとても引かれたのですが、「Excel/Accessなど」という個所が気になります。いまさらExcel/Accessを学ぶとは……。悩みに悩んだ結果、私はパンフレットに記された問い合わせ先に電話してみましたが、「いやぁ、パンフレットに書いてあるとおりですよ」とのつれないお返事。パンフレットに書いてあることだけじゃ分からないから電話しているのにっ!

■申し込んだコースは

 そこで、「受講条件」で判断することにしました。「Webシステム構築科」の受講条件は、「Windows98、Word、Excelなどのインストールができる方」、一方「パソコンネットワーク科」の受講条件は、「ワープロソフトの使える方」となっています。ネットワークとワープロ、どういう関係があるのでしょうか? IT業界に少しでも身を置いた人ならばだれもが思う疑問ではないでしょうか。どうも「パソコンネットワーク科」は怪しそうです。そこで私は、「Webシステム構築科」に申し込むことにしました。

 申し込みは、ハローワークに用紙を持って行き登録するだけで終了です。試験などはまったくありませんでした。まあ、試験をしても評価できる人がいなかったのかもしれませんが……。私が申し込み用紙を持ってハローワークに行ったとき、担当の人が「インストールできるんですか!」と、感心されましたから。さらに、その担当の人は、「このコースは受講条件が高度なので(!)、申し込み人数も少ないようです。きっと入れますよ」と教えてくれました。

 ところで、応募者が多数の場合は選考基準があるそうで、その基準を満たしている人から合格させるとのこと。その基準とは「30歳以上60歳未満の非自発的離職者、中でも45歳以上の非自発的離職者が優先」というのです。しかし、やはり申込者は多数ではなかったのか、申し込み後数週間して、「合格おめでとうございます」という合格通知が無事届き、私は3カ月間、久しぶりにフルタイムの学生生活を送ることになりました。

■いざ、学校へ

 某月1日、いよいよ授業開始です。とはいえ、初日はコース概要の説明会と、たくさんの教科書を渡されて終了。ちなみに、東京都産業労働局主催のこのコースでは、教科書代は無料とのことです。開始月によっては、主催が雇用・能力開発機構の場合があり、こちらの場合の教科書代は受講者の負担となるようです。

 もらった教科書は以下のとおりです(写真2)。

『わかる&使える UNIX基礎講座 入門編』(中井獏著、技術評論社)
『RedHat Linux7.0 インターネットサーバー構築入門』(ローカス、トップマネジメントサービス 著)
『2001年度 初級シスアド標準教科書』(早川芳彦、岩田儀一、新田雅道著、オーム社。現在は2002年度版)
『一週間でマスターするホームページの作り方 Windows Me対応版』(松本都著、毎日コミュニケーションズ)
『できるAccess2000 Windows版』(小暮明&インプレス書籍編集部編集、インプレス)

写真2 これらの教科書は、すべて無料(ただし、主催によって教科書代が必要な場合もあるようだ)

 これらのほかにも、学校独自の教科書『OAセミナー』と『ビジネスソフトテキスト Excel for Office 2000』(これは前期編と後期編がありました)が渡されました(写真3)。

写真3 この2冊は学校独自の教科書

 UNIXやLinuxの教科書を見ると、初心者向けとはいえ、確かにネットワークに詳しくなりそうでわくわくします。しかし、そこになぜExcelの本があるのか気になりましたが、たまにはExcelで遊ぶのも悪くないかも、といった程度に考えていました。こうして、初日はわくわく気分のまま終えることができたのですが、そのわくわく感と、技術者の端くれぐらいにはなれるのでは、というかすかな願いは、日がたつにつれはるか彼方へ消え去ることになったのです……。

INDEX  失業者はエンジニアになれるか? 
第1回 失業者、エンジニアに目覚める
  第2回 失業者、学生になって希望を失う
  第3回 学生となった失業者、反抗を試みる
   第4回 学生、再び失業者に戻る

「連載 失業者はエンジニアになれるか?」

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