IT業界記者によるリレーコラム
IT Business フロントライン (66)
IT業界にとってテレビCMは有効か?
“お奉行さま”が示したインパクトと効果
三浦優子
コンピュータ・ニュース社
2002/1/11
2002年、おとそ気分でテレビを見ていたら、「しばらく、少なくなったと思っていたお奉行さまのテレビコマーシャルが、また増えている……」。パソコン用財務会計ソフト「勘定奉行」などを開発・販売するオービックビジネスコンサルタント(OBC)が、積極的にテレビコマーシャルを打っていたのが、やたら目に付いた。
■“ロケ地自社”の日本的CMの威力
同社が積極的にテレビコマーシャルを開始したのは1998年のことになる。歌舞伎俳優の中村京蔵氏が演ずる「お奉行さま」、そしてOBCの社員も登場するこのコマーシャル(ちなみに、現在放映中の「君のところは何奉行?」というバージョンには、同社の中山茂常務が出演)は、奉行シリーズの製品名を連呼するところといい、シチュエーションといい、非常に日本的である。
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最大の功績といえるのが、財務会計をはじめとした企業の業務システムという非常に地味で、とっつきにくい分野を広く認知させたことだろう。
ライバルメーカーに勤務する役員から、「同窓会に行って、おまえのところは、“奉行”を売っている会社なんだろうといわれて参った」という話を聞いたことがある。その同級生はまったくコンピュータ業界外で、会計とも縁がない仕事をしている方だったようで、「うちの製品は奉行じゃないと説明すればするほど、何だやっぱり奉行じゃないかということになった」そうだ。確かに、会計ソフトメーカーの役員が説明しても、知らない人に会計ソフトとはどんなものなのか、イメージしてもらうのは難しい。その難しさが、奉行シリーズのCMがヘビーオンエアされたことで、一挙に解決してしまった。
■機能の説明より、知名度?
もちろん、奉行シリーズの詳細な機能や特徴までを多くの人が理解したわけではない。が、会計業務のコンピュータ化は多くの経営者が対応を考えている問題だけに、具体的な製品名を認知させた意味は大きかった。「社内の会計業務をコンピュータ化するために、奉行シリーズのような製品が必要だ」と、多くの人が認知したのである。
この認知度アップは、OBC製品を取り扱う販社を増加させるのに大いに貢献した。実はOBCの製品は、中小企業をターゲットとしていたこともあって、販売チャネルは訪問販売ディーラーがほとんどだった。
もともと、企業の基幹系システムや会計事務所用のシステムはオフコン・ミニコンの世界であり、パソコン用業務ソフトのマーケットが大きくなってきたのは最近の話。大手SIerはもちろん、従来オフコンを売ってきた販社はOBCをはじめとするパソコン用業務ソフトを取り扱ってはいなかったのだ。
しかし、OBC側としては1998年当時、Windows NTに対応し、データベースとしてSQL Serverを採用することで、ターゲットユーザーをスタンドアロンで利用する中小事業所から、中堅企業クラスまで拡大したい意向があった。そこで、その狙いとほぼ同じタイミングでテレビコマーシャルを開始したのだった。
■パソコンの普及で変わるブランド/マーケティング戦略
大量のテレビコマーシャルで販社、顧客に奉行シリーズの名称が定着した結果、顧客からの指名も増え、チャネル拡大にも成功した。「狙っていたとおりのディーラーが当社製品を販売してくれるようになってきた」とOBC・和田成史社長は満足げに語る。
コンシューマ向け商品であればともかく、企業向け商品の場合、テレビコマーシャルを実施することに対しては、賛否両論がある。また、“ネットバブル”時代にネット系各社がCMを垂れ流したのも思い出される。しかし、OBCの例を考えると、確かに効用があったといえる。
OBCの同業者は、「パソコンマーケットが拡大し、マスに向けた告知をしなければ、難しい時代になってきたのでは」と指摘する。ビジネス向け商品であっても、マスに対するブランド力を付けなければ業績が伸びない時代になってきたということなのだろうか。
| Profile |
| 三浦 優子(みうら ゆうこ) 1965年、東京都町田市出身。日本大学芸術学部映画学科卒業後、2年間同校に勤務するなど、まったくコンピュータとは縁のない生活を送っていたが、1990年週刊のコンピュータ業界向け新聞「BUSINESSコンピュータニュース」を発行する株式会社コンピュータ・ニュース社に入社。以来、10年以上、記者としてコンピュータ業界の取材活動を続けている。 メールアドレスはmiura@bcn.co.jp |
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