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<vol.8の内容>
「マーケットレポート:転職サイト比較調査」
多くの転職サイトがバナー広告などでプロモーションを展開しているが、認知度と実際の利用の度合いに相関関係はあるのだろうか。1回目の今回は比較調査をもとに、15社のランキングを公開
「特集:ワンダーマーケットB2C」(5回シリーズ)
人気アナリスト:荒木正人氏による日本のB2C市場に関する連載コラム。第1回目は、 日本のB2Cプレーヤーの特長や経営事情について、具体的な数字をあげて解説
ネットインサイダー編集部では、株式会社プロシークの協力を得て、転職サイトの利用実態を明らかにすべく、主要な15の転職サイトを対象に1万人にアンケート調査を実施し、488人の回答を得た。その結果を本誌面で4回に分けて報告する。
今回の調査結果からは、認知度、訪問度、応募度(いずれも後述)の3点から15社のランキングを見てみたが、いずれの指標でも「Digital B-ing」が高いスコアを叩き出している。
指標別について見てみると、認知度については、インターネットビジネスの常識である<早期立ち上げ→ブランド確立→高業績確保>といったタイムベース戦略のシナリオが通用せず、既存のマス媒体を持つサイトが優位に立っている。
訪問度では、各社の公称月間PVとユーザーの訪問状況は必ずしも相関する結果とはならなかった。応募度については下位に圧倒的な差をつけて、「Digital B-ing」の一人勝ちとなった。
【認知度・訪問度・応募度】 注1 | ||||||
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認知度 | % | 訪問度 | % | 応募度 | % | |
1位 | Digital B-ing | 50.4 | JobJungle | 54.3 | Digital B-ing | 14.5 |
2位 | JobJungle | 40.0 | Digital B-ing | 32.8 | JobJungle | 14.5 |
3位 | Nikkeibp-expert | 36.1 | Sim-career | 19.7 | en | 4.3 |
4位 | JOBMAIL | 28.5 | ecareer | 13.9 | ecareer | 3.1 |
5位 | Sim-career | 26.8 | en | 13.9 | Asia-net | 2.7 |
6位 | ecareer | 24.2 | JOBMAIL | 13.5 | WORK TANK | 1.8 |
7位 | Asia-net | 18.9 | Asia-net | 13.3 | Nikkeibp-expert | 1.4 |
8位 | 登竜門 | 18.0 | Nikkeibp-expert | 10.7 | JOBMAIL | 1.4 |
9位 | en | 17.6 | Find Job | 7.2 | Find Job | 1.2 |
10位 | Find Job | 15.8 | career space BJ | 6.4 | JOB WORLD | 1.2 |
11位 | career space BJ | 14.8 | WORK TANK | 6.1 | JOB JOB | 1.2 |
12位 | JOB JOB | 13.7 | 登竜門 | 5.9 | career space BJ | 0.8 |
13位 | JOB WORLD | 13.3 | JOB JOB | 5.3 | 登竜門 | 0.8 |
14位 | WORK TANK | 10.5 | JOB WORLD | 4.5 | JOB in JAPAN | 0.4 |
15位 | JOB in JAPAN | 8.4 | JOB in JAPAN | 3.1 | Sim-career | 0.0 |
インターネットビジネスでは、早期に事業を立ち上げ、競争優位性を発揮する「先行逃げ切り型」が多いと言われているが、転職サイトにおいては、立ち上げ時期よりもブランド力やプロモーション戦略によって認知度が決まるようである。
JobJungleを除く(注2)トップ5を見てみると、リクルート(「Digital B-ing」「Sim-career」)、日経BP(Nikkeibp-expert)、ソフトバンク(「ecareer」)などブランド力の高いマス媒体を持つ企業が並んでいる。このうち、「Nikkeibp-expert」「ecareer」はいずれも後発組である。
逆に、比較的早い時期に立ち上げられた「JOB WORLD」「WORK TANK」「JOBinJAPAN」などは、今回のランクの中において下位に位置付けられている。
各転職サイトの公称月間PVとサイトへの訪問状況を比較してみると、必ずしも公称PVが高いからといって、訪問度も高くなるわけではない。公称の月間PVが100万を越えるサイトの中でも、「JOBJOB」「登竜門」は本調査では順位が低くなっている。もっとも、「登竜門」の場合は、新卒がメインターゲットであり、今回の調査対象者が転職者であることを考えると多少割り引いて考える必要はある。一方、認知度が低く、公称PVが100万未満の「en」「Asia-net」については、訪問度は高くなっている。
採用者側として重要な指標の一つである応募度について、上位5社を見てみると「Digital B-ing」「JobJungle」「en」「ecareer」「Asia-net」の順となっている。しかし、数値を見てみると「Digital B-ing」が14.5%と3位の「en」(4.3%)を大きく引き離して、一人勝ちの結果となった。
認知度、訪問度、応募度の全ての指標において、ベスト5以内にランクインしたのは「Digital B-ing」のみで、マスコミに注目されている「Sim-career」や鳴り物入りで登場した「ecareer」も総合力という点では、「Digital B-ing」には及ばず、改めて同社の強さが際立つ結果となった。
電子商取引実証推進協議会などの調査によれば、1999年の日本の消費者向け(B2C)電子商取引市場は、1998年(645億円)の5倍以上の3,360億円に達した模様である。2004年には6.6兆円市場になると見込まれており、未だ拡大途上にある。
日経流通新聞がまとめた「第1回eコマース調査」などによれば、eコマースによる売上高が1,000万円以上の主要企業において、第1位はアスクルの77億円で、ソフマップが30億円、コクヨが20億円で続いていると思われる。なお、同調査には、ゲートウェイ、DELL、SOTEC、アップルのようなパソコンの直販メーカーや全日空、日本航空のような直販をしている航空会社は含まれていない。
この調査から日本のB2Cプレーヤーの特徴として、3つの点が読み取れる。
第1は、売上高上位の主要プレーヤーのほとんどがネット販売と店舗を持ったリアル販売との併用だということである。売上高1億円以上の企業の中で、店舗を持たずに販売している企業はバイス(北海道産の食品販売:1.5億円)のみである。ただし、バイスも受注手段としてはネット以外にファックスでの注文も受け付けている。
第2に、ネット販売とリアル販売の併用企業において、全売上高に占めるネット販売の比率が低いということである。売上高ナンバー1のアスクルは99年度が16.4%、2000年5月には約20%に達したが、それ以外の主要プレーヤーは、ソフマップが2.5%、コクヨが0.7%、紀伊国屋書店が1.5%にとどまっている。
第3に、各社共にeコマース事業は先行投資として取り組んでいるため、eコマース事業単独では未だ赤字経営が多いということである。日経流通新聞の「第1回eコマース調査」によれば、99年度の単年度収支については、回答企業61社の内、赤字が27社(44.3%)、黒字が22社(36.1%)、均衡が12社(19.7%)であり、赤字企業が黒字企業を上回った。
例えば、ソフマップ(30億円)、紀伊国屋書店(16.6億円)、ラオックス(10億円)など、パソコン・周辺機器や書籍を販売しており、売上規模が比較的大きいプレーヤーでも、取扱商品の粗利益率が低いことに加えて、システム投資による減価償却費などを考えると、eコマース事業単独では赤字ではないかと推測される。
また、百貨店は中元や歳暮で安定的な需要が見込めるものの、商品の粗利益率が高くないことに加え、各社とも8〜10人程度でeコマース事業を運営しているため、人件費だけで年間約8,000万円、その他、システム経費や広告宣伝費などを勘案すると、約5億円程度の年間売上高を達成しなければ利益は出ないと思われる。同調査によれば、99年度の売上高は高島屋が1.2億円、東急百貨店が6,000万円、西武百貨店は2,000万円にとどまっており、eコマース事業単独で黒字経営をしている百貨店はないと推測される。
売上高(粗利益)が大幅に伸びたため、期間損益で黒字が見込める企業もあるが、累損を解消することは未だ先であり、さらにサーバー増強など今後も継続的な投資が必要になると思われる。
他方、ラオックスはeコマース市場の成長を受けて、年内に本格的なシステム投資を計画している。ウエブサイトでの受注システムと顧客データベースをリンクさせるためである。ラオックスはeコマースを始めた頃はモールに出店していたが、モールで提供されるシステムでは売価と在庫の自動更新ができないなどの問題が生じたために、数千万円をかけて自社のシステムを構築した。そして今回、eコマース事業を強化するために新たに投資を行なう計画である。
ラオックスの設備投資計画や、日経流通新聞の「第1回eコマース調査」の売上高上位企業がリアル販売との併用で、且つ、eコマースの売上高比率が10%以内と低く、そして、ほとんどの企業が赤字であるということから考えると、B2C市場は各企業共に未だ先行投資の段階であって、これから本格的に拡大していくと考えるべきであろう。
略 歴 | |
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1967年11月 | 香川県丸亀市に生まれる |
1991年 3月 | 東北大学経済学部卒業 |
1991年 4月 | 株式会社三和総合研究所入社 |
主に、カーディーラー、住宅販売会社、食品販売会社のマネジメントコンサルティング業務に従事 | |
1999年 3月 | 青山学院大学大学院国際政治経済学研究科国際ビジネス専攻課程修了 |
1999年 8月 | 株式会社一吉証券経済研究所入社 |
主に、ヤフー、インターキューなどのインターネット関連担当のアナリスト業務に従事 | |
2000年 3月 | ウィット・キャピタル証券株式会社入社 |
ヤフー、サイバーエージェント、楽天など、インターネット広告企業、Eコマース企業を中心にカバレッジ | |
2000年 4月 | 日経金融新聞の人気アナリストランキング「IT・インターネット部門」にランクイン |
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