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連載 「オブジェクト指向実践レポート」
――大規模開発プロジェクトの成功のために――

細川努
日本総合研究所
2002/12/5


 2002年8月19日から4日間にわたり、米国フロリダ州オーランドで、米ラショナルソフトウェア(以下ラショナル)のプライベート・カンファレンス「Rational User Conference 2002」が開催された。今回は、オブジェクト指向および開発環境に関する最新動向をレポートしながら、急速に変わりつつあるソフトウェア開発環境の今後について考察する。(編集局)


第2回 ソフトウェア開発環境の転換期到来     


世界中のオブジェクト指向技術者がオーランドに集結

 ラショナルは、オブジェクト指向分析設計の統一表記法であるUML(Unified Modeling Language)を作った3大メソドロジストである、グラディ・ブーチ氏、イーヴァ・ヤコブソン氏、ジェームス・ランボー氏が所属していることでも有名である。そのため、同社が開催するカンファレンスには、単なる製品説明を聞きに来るためではなく、オブジェクト指向開発の最新動向と実践に関して、多くの実務家が参加することが特徴となっている。今回のカンファレンスでも、主催者発表によると、世界38カ国から2000人の技術者が参加し、200ものセッションが実施された。

オブジェクト指向による開発技術の中心はJ2EEと.NETに

 筆者は、現在、ソフトウェア開発環境は大きな転換期にあると見ている。具体的には、Java技術をベースとしたJ2EE(Java2 Platform Enterprise Edition)や、マイクロソフトの.NETのような新しいソフトウェア開発基盤の登場によって、大規模でミッションクリティカルなシステムが、分散オブジェクト環境で構築できるようになり、こうした最新技術を活用するためにも、オブジェクト指向の必要性がますます高まっているからである。

 基調講演の冒頭においては、ラショナルのCEOであるマイケル T.デヴリン氏がソフトウェア開発の進化の歴史を解説し、今後のオブジェクト指向開発は、J2EEや.NET といった高機能で複雑な開発プラットフォームに対して具体的な対応が必要となっていることを強調していた。

図1 米ラショナルソフトウェアCEO マイケル T.デヴリン氏

 ラショナルがこうした背景のもとに、新しいオブジェクト指向分析設計ツールとして提供しているのが、「Rational XDE」である(日本語版も9月から販売されている)。XDEは、プログラム開発者をターゲットとしたUML設計ツールであり、Microsoft Visual Studio .NETやEclipse Workbenchといった統合開発環境の中に組み込まれ、コーディングとUMLによる設計を一体作業として実施できる点に特徴がある。さらには、デザインパターンの適用を指定することによってプログラムコードが自動生成される、パターンオリエンテッドな開発支援機能に対応している。

実装環境に合わせたUMLモデリングガイドラインの提供

 今回のカンファレンスにおいては、単にツールを紹介するのでなく、すぐに役に立つような実戦的ノウハウが数多く紹介されていた。その1つが、ラショナルのピーター・イールス氏によるセッション「Strategies for Structuring UML Models in Rational XDE」である。

 ここでは、UMLモデルを用いた設計を行う際に、どのようなモデル構造を持つべきかに関してのガイドラインが紹介されている。このガイドラインは、開発環境に合わせて、J2EE版と.NET版がラショナルのRational Developer Networkで公開されており、ガイドラインの資料と、XDE用モデリングテンプレートをダウンロードすることができる(図2)。

図2 Rational XDEでJ2EE版モデリングテンプレートを開いたところ(クリックすると拡大します)

良いユースケースを書くには?

 オブジェクト指向開発を実現する開発環境の整備は急速に進みつつある。しかしながら、日本においても、UMLによるオブジェクト指向分析・設計を実践する場合、さまざまな現実的な悩みがあることも事実である。ラショナルの要求管理分野のエバンジェリストであるジム・ヒューマン氏は「Writing Good Use Cases」と題して、実際のプロジェクトにおけるユースケース分析で陥りやすいポイントや、どうしたら良いユースケース定義ができるかについて分かりやすく論じていた。

 そのほかにも、「How to Move from Business Use Cases to System Use Cases(ビジネスユースケースからシステムユースケースにどのようにして展開するか)」など、特にビジネスモデリングやユースケース分析といった上流工程プロセスに関する各種のセッションが数多く実施されていた。

 こうしたセッションは、ユースケース分析などに関する入門レベルの知識でなく、実践の中においてどのように進めるかといった応用レベルのものであり、今後、日本においてもこういった知識が最も必要になってくるものと思われた。

UML 2.0

 現在、2003年のリリースに向けての検討段階にあるUML 2.0についての方向性も紹介されていた。今回も紹介したように、現在のシステム開発環境は、J2EE、.NETに代表されるように、各種の技術プラットフォームやコンポーネントモデルが存在し、変化し続けている。

 こういった技術的動向が激しい状況にあって、UMLによるモデルとプラットフォーム技術との依存関係を分離しながらも、UMLモデルから特定プラットフォームのコンポーネントを生成するといった方向性が検討されている。このような考え方はOMGが提唱するMDA(モデル駆動型アーキテクチャ)に基づいており、UML 2.0において重要な概念となっている。

 UML 2.0が目指す方向性には、現在よりももっと複雑な問題領域でもモデリングできるようにUML自体が拡張されたり、UMLプロファイルによってコンポーネント生成を目指すなど、ソフトウェアの開発生産性に関する意欲的な試みが盛り込まれている。

最後に

 以上紹介したのは、今回のカンファレンスにおける内容のほんの一部だが、全体的に、去年と比較してもテーマが大きく変わっており、この分野の進歩・変化の激しさをあらためて認識させられた。機会があれば、来年のカンファレンスに参加することをお勧めする。

日本ラショナルソフトウェア
Rational Software

プロフィール
細川努(ほそかわ つとむ)

1964年生まれ。 中央大学 法学部 法律科卒業後、 (株)日本総合研究所に勤務。オブジェクト指向分析・設計を実践する傍ら、システムコンサルティングを行う。
現在、(株)日本総合研究所 事業化技術センター 副所長、(株)コンポーネントスクエア テクニカルアドバイザーを兼務する。 技術士(情報工学)。


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