Java2 Enterprise Editionの基礎知識

なぜ、Java2 Enterprise Edition(J2EE)が必要なのでしょうか? ――J2EEが必要になった経緯――

テンアートニ 中越智哉
2000/12/7

 “Write Once, Run Anywhere”。これはご存じのとおり、Javaの掲げる理念を表したスローガンです。「一度書けば、どこでも動く」。これは、ソースレベルでのポータビリティはもちろんのこと、バイナリレベルでのポータビリティの実現をも意味しています。

 Java AppletはWebブラウザに内蔵されたJava VMによって、異なるプラットフォーム上であっても、単一のバイナリをダウンロードして動作させることができますし、サーバサイドの動作環境を実現するJava Servletも、サーバ側のプラットフォームでのポータビリティを保つことができます。LinuxでもSolarisでも、ときにはWindows NTでも、開発者はたじろぐことなく、1種類のソースファイルをClassファイルという1種類のバイナリにコンパイルし、複数のプラットフォームで動作させることができるわけです。

 一方で、エンタープライズレベルのJavaテクノロジにおいては、プラットフォーム非依存性以外に、もう1つ解決しなければならないポータビリティの問題があります。それはどの部分のポータビリティかというと、より低水準なサービスの部分です。Webアプリケーションは、純粋なアプリケーションロジックのほかにも、さまざまな低水準なサービスを提供する必要があるからです。

 例えば、データベース・アクセスひとつをとっても、ユーザーからのリクエストがあるたびに、毎回データベースへの接続や切断を行っていたのではサーバに負荷がかかり、何よりレスポンスへの影響が大きく、顧客の不満のもととなりかねません。そこで、コネクション・プーリングという手法が登場します。これは、あらかじめ接続をプールしておき、必要に応じてアプリケーションに割り当て、使用後は再びプールに回収し再利用するという仕組みです。この、コネクション・プーリングはWebアプリケーションには必須の技術です。

 そのほかにも、セッションの管理、トランザクション管理、メール送信、CORBAやメッセージングによる既存システムとの連携、負荷分散、可用性の確保、といったようなサービスが必要となってきますが、これらをアプリケーション開発者が1から作成するのは非常に労力が大きく困難です。そこで、これらシステム・レベルのサービスをあらかじめ用意した動作環境として、各ベンダからアプリケーション・サーバ製品が登場してきたという経緯があるわけです。

 アプリケーション開発者は、アプリケーション・サーバ製品を使用することで、より簡単にサーバサイドアプリケーションを構築することが可能になりました。上記のようなシステム・レベルのサービスはアプリケーション・サーバ側にラップされ、シンプルなメソッド呼び出しだけで使用可能となったからです。しかし、これによって言語そのものには依存性がなくとも、使用するサービスがベンダ独自のものとなることで、構築したシステムがアプリケーション・サーバ製品に依存してしまい、ポータビリティを損なうという結果を招いてしまいました。

 こういった状況を解決するために登場したのが、J2EE(Java2 Enterprise Edition)です。J2EEの登場によって、各ベンダが独自に開発した各種の機能は標準化され、サーバサイドのエンタープライズシステムにおいても、 “Write Once, Run Anywhere”を実現することが可能となるわけです。

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WebアプリケーションにおけるサーバサイドJavaの役割(@IT Java Solution)


「Java Solution FAQ」




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