Novell SUSE LINUX Enterprise Server 9

Red Hat Linux/Enterprise Linuxがデファクトスタンダードになっている日本市場において、それらと十分に競合できる完成度と資本力を持ったディストリビューションが登場した。カーネル2.6採用のエンタープライズOS「Novell SUSE LINUX Enterprise Server 9」は、期待を裏切らないOSに仕上がっている。

製品名:   Novell SUSE LINUX Enterprise Server 9
価格:   オープンプライス
推定市場価格 x86用 16CPUまで:11万円
16CPU以上:8CPUごとに追加ライセンスを購入する必要あり
(初回1年分のアニュアルアップデート付き)
発売日:   2004年8月5日
販売元:   ノベル
URL:   http://www.novell.co.jp/
鶴長 鎮一
2004/9/14

SLES 9の位置付けと開発体制

 カーネル2.6を本格採用した最初のエンタープライズLinuxとして、Novell SUSE LINUX Enterprise Server 9(以下SLES 9)が発売された。導入実績欧州第1位、世界第2位といわれるSLES 9の実力は前評判どおりなのだろうか? @ITでは、SUSE LINUX Professional 9.1(以下Pro 9.1)のレビューも公開している。そちらも併せてご覧いただきたい。

SLES 9とPro 9.1の位置付け

 ほぼ同時期にリリースされたSLES 9とPro 9.1だが、両者の位置付けはまったく異なる(表1)。

 
Pro 9.1
SLES 9
パッケージ選択基準 最新機能 熟成した機能
バージョンアップサイクル 6カ月 12〜18カ月
プラットフォーム Celeron
Pentium〜Pentium 4
Xeon
EM64T
K6/II/III
Duron
Athlon/XP/MP/64
Pentium〜Pentium 4
Xeon
EM64T
Itanium
K7
Athlon/64(32bit & 64bitモード)
Opteron
IBM pSeries/iSeries/zSeries(32bit & 64bit)
IBM S/390(31bit)
(アーキテクチャの最大CPU数まで)
製品ライフサイクル 1〜2年 5年
提供アップデート セキュリティパッチのみ セキュリティパッチおよびメジャーリリースへのバージョンアップ
サポート インストールのみ 各種サポートパッケージを提供
表1 Pro 9.1(プレミアム)とSLES 9の違い

 Pro 9.1は、ACPIやUSBストレージ/CD/DVDの自動マウントなど、クライアントOSとしての利便性を優先している()。

注:Proのパッケージングには、開発者の意見が多く反映されている。またSUSE LINUXのFTPサイト(ftp://ftp.suse.com/pub/people/)には、開発者それぞれの趣向でビルドしたパッケージが置かれている。特にMike Fabian氏のディレクトリ「mfabian」には、SCIMをはじめ、中日韓(CJK)環境をサポートする最新パッケージが置かれている。

 それに対して、SLES 9は安定性や堅牢性、スケーラビリティが重要視されている。SLES 9がターゲットにしているのは、キャリアグレードの運用が必要とされる勘定系や基幹系、データセンターといった分野なのである。こうした分野は、まさにRed Hat Linux ES/ASと競合する。

画面1 SLES 9のデスクトップ。rootでログインすると、危険度を示すため通常とは異なる壁紙になる(画像をクリックすると拡大表示します)

マルチプラットフォーム対応と品質維持管理システム

 表1で示したように、SLES 9は多くのプラットフォームに対応している。これだけ多くのプラットフォームに対応しながら、同時期にパッケージを提供できるのは、SUSE LINUX独自のAutoBuildシステムによるところが大きい。

 複数のプラットフォームに対応させる場合、通常はその品質維持に多大なコストが費やされる。また、アップデートの遅れやプラットフォームごとのサポートのムラが懸念される。AutoBuildは、単一のソースコードからすべてのプラットフォーム用のバイナリをビルドできる。アーキテクチャやプラットフォームごとにソースコードを用意する必要がないため、セキュリティパッチなど、即時性が要求される場合にも効率的に対応できるのである。

 
1/3

Index
Novell SUSE LINUX Enterprise Server 9
Page 1
SLES 9の位置付けと開発体制
 SLES 9とPro 9.1の位置付け
 マルチプラットフォーム対応と品質維持管理システム
  Page 2
カーネル2.6がもたらすスケーラビリティと堅牢性
総合管理ツール「YaST」の魅力
 YOU(YaST Online Update)
  Page 3
SLES 9のそのほかの特徴
 サーバ用途に合わせたパッケージング
 SUSE LINUXのディレクトリ構造
前評判どおりの完成度

Linux Squareプロダクトレビュー


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