一志達也のSE、魂の叫び [8]
なぜLinuxは導入が進まない?

一志 達也(ichishi@pochi.tis.co.jp)
TIS株式会社
2001/8/22

 「Linuxブームは終わった」と言う人がいる。Linuxがブームであったかどうかはともかくとして、一時的に「Linux」という言葉だけが先行し、異常なまでの注目を浴びていたことは事実だろう。

 もちろん、Linuxが消えてしまったわけではないし、ブームでも下火でもないと思う。Linuxに関するビジネスはまだまだ伸びているところだし、次々と新しい技術や関連製品も誕生している。Linuxのブームが終わったのではなく、Linuxやそれに関連するものについて、むやみやたらと興味を持つ人が少なくなっただけだ。または、Linuxを特別扱いする風潮が、以前に比べて薄くなっただけなのである。

 それはともかく、Linuxが稼働しているコンピュータをそれほど見かけない。もちろん、これは筆者の周辺での話だから、読者諸氏の周辺では事情が異なるかもしれない。とはいえ、筆者の周辺がそれほど特別だとも思わないし、筆者の会社内や顧客に限った話でもない。筆者の友人や、そのほかの情報から総合してみても、まだまだLinuxの普及率はそれほど高くないようだ。

理由は人?

 Linuxが導入されない。その一番の理由は「扱える人がいない」ということに尽きると思う。逆に、採用される理由はといえば「扱いやすいことと安定性」そして「導入や維持管理などのコストを抑えられる」ということになるだろう。

 Windows 2000やWindows NT(以下Windows系)をインストールするには少々荷の重いPCサーバでも、Linuxなら実に軽快かつ安定して動作する。こんなことはすでに言い尽くされているが、この点はやはり強調しておきたい。いまや、Windows系をサーバにしなければならない理由など数えるほどしかないとさえいえる。

 商用UNIXを導入するほど、利用者もいなければコストもかけられない。そんな企業や部門にとって、Linuxほど好適なものはない。Linuxであれば、OSだけでなくシステムの大半を無料で構成することも可能だからだ。しかし、意欲はあっても人がいない、というジレンマがそこにある。

 すでに商用UNIXが導入されていれば、まだそれほどの抵抗はないかもしれない。だれか1人でも商用UNIXやLinuxのエキスパートがいれば波及効果も期待できる。しかし、それすらも期待できない企業や部門にとって、Linuxは実に敷居の高いものに見えるのだという。筆者は、この点に関して否定する気も肯定する気もない。

 確かに、Windows 2000の方が日ごろ使い慣れたインターフェイスでとっつきやすい。Linuxはといえば、GNOMEのような見栄えのいいインターフェイスが普及したとはいえ、最後はコマンドでオペレーションしなくてはならない。ソフトウェアの導入や設定変更なども、まだまだコマンドでオペレーションするのが主流だ。書籍などの情報源は十分すぎるほど豊富になったが、それを調べてまで管理したいという意欲がなければそれまでである。

 では、Windows 2000はユーザーに対して絶対的に従順で、書籍などがなくても管理できるのかといえばそれも違う。しかし、それを議論し続けたところで何も変わらないのも事実なのだ。

人ならいるはず

 少し話が横道にそれたが、違う視点からも考察してみよう。今度は、筆者にとってより身近な環境。すなわち、SI企業の内部や筆者らの顧客である大企業についてである。

 筆者の周囲は、曲がりなりにも技術者の集団だ。Linuxについて関心やある程度の知識を持っている人は多く存在する。そうした人に対して「なぜLinuxを導入しないのか」と尋ねる。すると、返ってくる答えは「顧客の要望」「特に理由はない」「使い慣れていない」などとなる。ここでいう「導入」とは、知識の習得用や停止しても構わないシステムなどではなく、いわゆる本番用途にLinuxを利用することをいう。

 先ほど話題に挙げたような状況とは違い、技術を持った人ならいるはずのSI企業で、なぜこのような状況になるのだろうか。それは、また違った前提条件があるからなのである。

 先ほど、Windows系とLinuxを対比して、検討する状況を想定していた。しかし、今度は比較する相手が違う。筆者らの顧客や筆者の周辺にある開発環境は、ほぼすべてが商用UNIXマシンである。中にはPCサーバも存在するが、それは顧客の要望でWindows系が導入されているものがほとんどだ。

 この状況になると、Linuxを導入しない理由も違ってくる。何しろ、商用UNIXマシンを購入すると、あえて拒否しない限りOSもセットで納入される。しかも、こちらの要望どおりにセットアップされ、あとは使うだけの状態でだ。

 もちろん、そのための費用もかかる。しかし、自分たちでインストールするよりはるかに安く上がるという考え方もできてしまう。いくら自宅や実験用のマシンでLinuxを使っていようとも、大規模な商用UNIXサーバに対して最初からインストールするのとでは勝手が違うからだ。思わぬ障害があるかもしれないし、普段はやったことのない作業を強いられる可能性もある。

 多少費用がかかろうとも、確実で手間のかからない方法を選ぶのはリスク回避の点からは決して否定できない。いくら規模の大きな会社であっても、特に理由もなく、リスクを負ってチャレンジするほどの余裕はない。「Linuxでやってみたいから」という程度では、大規模なマシンを使って実験することなどできないのである。

 では、「あえてLinuxを使う」理由は存在しないのだろうか。これに関しては、判断の難しいところだ。最近は、商用UNIXでもLinuxコミュニティで生まれ育ったソフトウェアを多く導入する。その過程において、「Linuxならすんなりできるのに」「Linuxならもっと使い勝手がいいのに」というところも多々存在する。しかし、その逆に商用UNIXでなければ稼働保証されないソフトウェアも多く導入する。それらがLinuxでは動作しない以上、商用UNIXを採用せざるを得ない。そうでなくても、わずかな使い勝手や多少のコスト削減で顧客を説得するのは難しい。そもそも、SI企業にとっても、わざわざ「Linuxを導入しましょう」と顧客を説得する理由は見つからないのである。

やはり人

 いささか逃げ腰のような論理になったが、それでもLinuxを導入している企業は存在する。筆者らの顧客でもそうだ。中には、商用UNIXを捨ててLinuxを導入している顧客だって存在する。筆者の知る限り、そうした企業はLinuxを積極的に推進する人がいる。しかも、ある程度責任のあるポストで、システムの導入に関して権限を持った人だ。そうでなければ、まだまだPCサーバならWindows系、商用UNIXなら専用のOSというのが主流である。

 技術者の集団であるはずのSI企業であっても、恥ずかしながら、自分たちの使い慣れていないものは避けて通りたがるところもある。商用UNIXのインストールなど見たこともないという人も多くいる。使い方は知っていたとしても、限られた範囲になるのは役割分担の明確な大企業になるほど多く見られる傾向だ。

 Linuxが商用UNIXよりも優れていることを証明するのも大切だが、それ以上に人の意識を変えることが普及に欠かせない。いまさらながらに、その難しさを痛感する。時にLinuxが恋しくなりながら商用UNIXに触れ、数年後の未来を予測する。その答えが出ることなどないが、常に冷静かつ公平にものを見ることを忘れないでいたい。

筆者紹介
一志達也

1974年に三重県で生まれ、三重県で育つ。1度は地元で就職を果たしクライアント/サーバシステムの構築に携わるも、Oracleを極めたくて転職。名古屋のOracle代理店にてOracle公認インストラクターやサポートを経験。その後、大規模システムの開発を夢見て再び転職。都会嫌いのはずが、いつの間にやら都会の喧騒にもまれる毎日。TIS株式会社に在職中。Linux Squareでの連載をはじめ、月刊Database Magazineでもライターとして執筆するほか、Oracle-Master.orgアドバイザリー・ボードメンバー隊長など、さまざまな顔を持っている。無類の犬好きで、趣味は車に乗ること。

連載 一志達也のSE、魂の叫び

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