OpenSolaris

第5回 可用性を高めるOpen HA Cluster


この連載では、サーバOSとして十数年発展してきた「Solaris」をオープンソース化した「OpenSolaris」を紹介し、ブログサーバ「Roller」と組み合わせて運用していくうえで有用なさまざまな知識を紹介していきます。(編集部)

サン・マイクロシステムズ株式会社
OpenSolarisエバンジェリスト
加藤 久慶
2008/5/13

 第2回「Cool Stackで手軽に『SAMP』」から第4回「一瞬でのバックアップを実現するSolaris ZFS」までで、Solaris ContainerZFSなどといったSolaris/OpenSolarisに備わっているエンタープライズ向けの機能や特徴を紹介し、その技術をブログサーバへ応用する方法について解説しました。

 今回は、エンタープライズ向けクラスタリングソフトウェアを導入して、高可用性を備えたブログサイトを構築する方法を紹介します。

クラスタリングはなぜ必要か

 クラスタリングシステムとは、単一のシステムとして連携して動作する2つ以上のシステム、またはノードのことで、アプリケーションやシステムリソース、データをユーザーに提供する連続的な可用性を備えたシステムのことをいいます。

 では、なぜシステムには高可用性が必要なのでしょうか。システムには、災害のほか、人的ミスによる障害、ハードウェアに起因する障害、ソフトウェアのバグや障害などを含む多くの原因によって、障害が発生する可能性があります。そのシステム障害によってサービスが停止すれば、サービスを提供する企業に多くの損失を招く可能性もあります。

 例えば、クラスタリングを用いずにシングルサーバでシステムを運用する場合、以下のような障害が発生する可能性があります。

  • ハードウェア誤動作
  • アプリケーションの予期せぬ停止
  • 人的ミス
  • 災害 など

 また、単一障害点により、システムを復旧できなくなる可能性もあります。具体的には

  • ネットワークカードの故障
  • CPUの誤動作
  • ディスクドライブのクラッシュ

などです。この結果、すべてのシステムサービスが停止する恐れがあります。

 クラスタリングの役割は、システム障害時間を短縮することです。つまり、システムに何らかの障害が発生したとしても、可能な限りダウンタイムを短縮することがクラスタリングを行う最も重要な目的となります。さらには、こうしたシステム障害を未然に防ぎ、障害を検知し、自動的に復旧するプロセスとして、クラスタリングを行う必要性があります。

 このように考えると、クラスタリングは、エンタープライズ向けのサーバにおいてなくてはならない機能であることがお分かりになると思います。このエンタープライズ向けのクラスタリングを導入し、ブログサーバの可用性を高めていくというのが今回の主題です。

 なお、ここで紹介する方法以外にも、クラスタリングを実現する方法は複数あります。その1つが、ミドルウェアに備わっているクラスタリングソフトウェアを利用する方法です。

 今回紹介するクラスタリングソフトウェアとミドルウェアとの違いは、前者は、ハードウェアやSolarisカーネルとの親和性が高いということです。そのため、ミドルウェアのクラスタリングソフトウェアと併用されるケースもあります。

OpenSolarisと親和性の高い「Open HA Cluster」

 では、OpenSolaris上で動作するクラスタリングソフトウェアについて紹介していきます。

 商用のクラスタリングソフトウェアには、ミドルウェアとして提供されているものから、オペレーティングシステムにおけるクラスタリングを実現するものまで、多くの種類があります。その中でも、OpenSolarisと親和性が高いクラスタリングソフトウェアが、「Open HA Cluster」です。

 Open HA Clusterは、商用版「Solaris Cluster」の先行版として開発されているオープンソースのソフトウェアです。ここではその中から、Solaris Express Community Edtion上で動作する「Solaris Cluster Express」を紹介します。

 Open HA Cluster、またはSolaris Clusterを利用すると、下記のような高可用性クラスタリングプラットフォームを提供することができます。

  • ハードウェア、ソフトウェアにおける単一障害点の回避
  • ハードウェアの冗長化のためのクラスタリングプラットフォーム
  • ソフトウェアの高可用性インフラ
  • ハートビートによる互いのクラスタ状態の監視
  • 共有ストレージと高可用性を考慮したIPネットワークへのマルチパス
  • Solaris上のアプリケーションサービスのためのフェイルオーバーサービスとスケーラブルサービス
  • Solaris OSと親和性の高いクラスタリングプラットフォーム

 このOpen HA Clusterは、商用版Solaris Clusterの先行版をオープンソースとして提供しているプロジェクトによって開発されています。ちょうど、OpenSolarisとSolaris 10の関係をイメージしていただければ分かりやすいでしょう。

 オープンソース版Solaris Clusterでは、商用版にはない機能をいち早く試すことができます。例えば、x64版で提供されている仮想化機能「xVM」(第3回参照)のHAエージェントは、商用版には入っていません。しかし、OpenSolarisコミュニティ「HA Clusters」にあるとおり、オープンソース版ではすでに試すことができる状態になっています。

 なお、商用版Solaris Clusterのソースコードは徐々にオープンソース化が進んでいます。まず、高可用性を提供するHAエージェントからオープンソース化が始まり、中核となる「Solaris Cluster Core Package」も、2008年末にはCDDL(Common Development and Distribution License)の下でオープンソースとして提供される予定です。

 さらに、ディザスタリカバリで求められる長距離のクラスタノードをサポートしている「Solaris Cluster GeoGraphic Edition」も、すでにオープンソースとして提供されています。

第4回へ
1/3

Index
OpenSolarisでサーバ構築
 第5回 可用性を高めるOpen HA Cluster
Page 1
 クラスタリングはなぜ必要か
 OpenSolarisと親和性の高い「Open HA Cluster」
  Page 2
 4つの層からなるSolaris Cluster Architecture
  IPネットワークパスの冗長化
  共有ストレージの利用
  Page 3
  クラスタリング故に起こる障害
  Solaris Clusterで利用できるサービス

Linux Square全記事インデックス


 Linux Squareフォーラム サーバ構築・運用関連記事
連載:Heartbeatでかんたんクラスタリング(連載中)
オープンソースソフトウェアの「Heartbeat」を使ってHAクラスタを実現し、サービスを「落とさない」仕組みを実現します
特集:Apache 2.2でWebサイトをパフォーマンスアップ!
最新安定版Apache 2.2は、何が変わったのか? 最新のApacheを新機能の使い方とともに解説する
連載:実用 Apache 2.0運用・管理術(全8回)
本連載では、Apache 2.0の運用や管理方法を解説する。まず必須設定と基本的なセキュリティ対策を行い今後の運用に備える
連載:実用 BIND 9で作るDNSサーバ(全15回)
本連載では、BIND 9の構築/運用方法を解説していく。実際に役立つことを目的に、セキュリティや大規模運用などのテーマを取り上げていく
連載:実用qmailサーバ運用・管理術(全14回)
本連載を通して、qmailによるメールサーバの高度な構築・運用・管理術を紹介。SPAM対策やML管理からサーバでのウイルスチェックなどまで
特集:Samba 3.0の全貌 改訂版
Samba 3.0リリースから8カ月。ここであらためて、Samba 3.0系列の新機能、インストール方法、国際化の現状を解説する

MONOist組み込み開発フォーラムの中から、Linux関連記事を紹介します

TechTargetジャパン

Linux & OSS フォーラム 新着記事

@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)

RSSフィード

キャリアアップ



- PR -

イベントカレンダー

PickUpイベント

- PR -

アクセスランキング

もっと見る
- PR -

ホワイトペーパーTechTargetジャパン

ソリューションFLASH

「ITmedia マーケティング」新着記事

スマホ vs. タブレット、ユーザーの行動特性から考えるマーケティング戦略
これまで「PC対モバイルデバイス(スマートフォン/タブレット)」という図式で語られる...

リアルワールド、34万人のクラウドソーシングによるソーシャルリスニングサービスを開始
リアルワールドは5月23日、同社が提供する国内最大級のクラウドソーシングサービス「CROW...

Googleアナリティクスでテラバイト級のビッグデータ解析機能を提供――プレミアムユーザー限定
Google BigQueryは、2010年のGoogle I/Oで発表された、大量データセットの解析を実現する...