第1回 仮想化とOSSが運用コスト削減に効く理由


株式会社野村総合研究所
田中 穣
首都圏コンピュータ技術者株式会社
工藤 一樹
青柳 隆
2009/3/17


RHELの仮想マシンの作成

 では、仮想マシンとしてRHELをインストールする手順を説明します。が、その前にまず、物理環境と仮想環境とで、大まかな手順を比較してみましょう。

手順 物理環境 仮想環境
1
VIクライアントでESXに接続します
2
ハードウェアを用意し、ネットワークやキーボードを接続します 仮想マシン構成(CPU、メモリ、ネットワーク、HDD)を新しく作成します
3
インストールメディア(DVD)をセットします インストールメディア(ISOファイル)をアップロードします。仮想マシンにISOファイルを割り当てます
4
電源ボタンを押します 仮想マシンを選択しパワーオンします
5
OSのインストーラが起動します OSのインストーラが起動します
6
ウィザードに従いOSをインストールします ウィザードに従いOSをインストールします
7
OSインストール完了 OSインストール完了
8
VMware Toolsをイントールします
表2 インストール手順

 電源を入れた(パワーオン)後の作業は、物理環境と仮想環境でほとんど変わらないことがお分かりいただけたと思います。なお、仮想マシンの作成方法は下記の記事を参考にしてください。

関連記事:
参考 仮想マシンの作成と利用
http://www.atmarkit.co.jp/fserver/articles/vmwaredep/06/01.html

 上記の記事ではWindows 2003 Serverをインストールしていますが、RHELの場合も手順は基本的に変わりません。ここでは誌面の都合上、差分だけを説明します。

 仮想マシン構成を作成する際の相違点は、ゲストOSのタイプ選択です。「Linux−Red Hat Enterprise Linux 5(32ビット)」を選択します。

画面1
画面1 ゲストOSの選択で「Linux」を選択する

 OSのインストール完了後は、VMware Toolsをインストールします。VMware ToolsはESX上で仮想マシンとして動作するために必要な、時刻同期/コピー・ペースト機能などを提供します。パフォーマンスにも影響しますので、必ずインストールしてください。

 次に、対象となる仮想マシンを選択します。右クリックし「VMware Toolsのインストール/アップグレード」を選択します。

画面2
画面2 VMware Toolsのインストール
画面3
画面3 VMware Toolsのインストール

 すると、VMware Toolsのインストールファイルを含む仮想CDが仮想マシンへ割り当てられます。仮想CDをマウントすると、インストールファイルを参照することができます。RHELの場合は自動マウントされます。

画面4
画面4 仮想CDのマウント

 VMwareToolsのrpmをインストールします。この作業は、途中でネットワークが切断されるので、ssh接続ではなくX Window上から行ってください。

 以下のように、rpmコマンドでインストールを行います。

[root@vos37 /]# cd /media/VMware\ Tools/
# ls
VMwareTools-3.5.0-110268.i386.rpm VMwareTools-3.5.0-110268.tar.gz

[root@vos37 VMware Tools]# rpm -ivh VMwareTools-3.5.0-110268.i386.rpm

 続いてVMware Toolsの設定を行います。vmware-config-tools.plを実行します。

[root@vos37 /]# vmware-config-tools.pl

Stopping VMware Tools services in the virtual machine:
Guest operating system daemon: [ OK ]
(中略)
Please choose one of the following display sizes that X will start with (1 - 15):

[1] "640x480"
[2] "800x600"
[3] "1024x768"
[4] "1152x864"
(中略)
[15] "2364x1773"
Please enter a number between 1 and 15:

[3] 2
  ここでは[2] "800x600"を選択してください。
  筆者の環境では、ほかを選択するとX-Windowの起動に失敗しました。


Starting VMware Tools services in the virtual machine:
(中略)
Enjoy,

--the VMware team

【注意】
 VMwareToolsはシステムの重要なファイルを更新します。/etc/fstabなどがそれに当たります。vmware-config-tools.plを実行するときは、元のfstabをfstab.BeforeVMwareToolsInstallへコピーし、バックアップしておきます。その上でfstabに更新を加えるようにしてください。

 カーネルのバージョンアップやVMwareToolsのバージョンアップなどの理由でVMwareToolsの再セットアップを行うと、fstabがfstab.BeforeVMwareToolsInstallに置き換えられます。例えば、増設ディスクのマウント設定をfstabに追加指定していた場合などは、その記述がなくなってしまいます。従って、VMwareToolsの再セットアップを行う場合は必ずfstabをバックアップ/リストアするようにしてください。

仮想マシンの複製

 仮想環境で作成した仮想マシンの実体はファイルとして管理されています。主なファイルに設定ファイル(*.vmx)仮想ディスク(*.vmdk)があります。

 ファイルで存在するということはつまり複製できるので、仮想マシンを簡単に作成できることを意味します。さらにVirtualCenterを使うと、仮想マシンをテンプレートとして格納しておくことができます。標準的な構成にしてそれをテンプレート化しておけば、再利用性が高まります。

画面5
画面5 仮想マシンをテンプレート化

 新しく仮想マシンを作成する場合は、既存のテンプレートを選択して、仮想マシンをデプロイします。デプロイ時にはネットワーク情報(ホスト名、IPアドレスなど)を指定できますので、既存環境に悪影響を与えることもありません。

画面6
画面6 テンプレート化された仮想マシンをデプロイする

 複製に関する機能は、ここで説明したもの以外にも、以下のとおり多数用意されています。

対象 メニュー上の機能 説明
仮想マシン
クローン作成 複製して新しく仮想マシンを作成します
テンプレートとしてクローン作成 複製して新しくテンプレートマシンを作成します
テンプレートに変換 テンプレートに変換します。仮想マシンは残りません
テンプレート
クローン作成 複製して新しくテンプレートマシンを作成します
仮想マシンへ変換 仮想マシンに変換します。テンプレートは残りません
このテンプレートから仮想マシンのデプロイ 複製して新しく仮想マシンを作成します
表3 Virtual Centerのほかの機能

 複製に関する機能を使うと、GUIから仮想マシンとテンプレートを簡単に複製できることが理解いただけたと思います。

 これで仮想化環境そのものの説明は終わりです。次回は、ゲストOSとしてRHELを利用したときに、RHN Satelliteを利用してパッチを配布する方法について説明します。

筆者紹介
田中 穣
株式会社野村総合研究所
情報技術本部
オープンソースソリューションセンター

工藤 一樹
青柳 隆
首都圏コンピュータ技術者株式会社

NRIのオープンソースサポートサービス「OpenStandia(オープンスタンディア)」のメンバーとして、規模を問わず、Webサイトのインフラ構築に当たる。また、大規模システムや基幹業務システムにも安心してオープンソースを導入・利用できるよう、オープンソースのフレームワークやミドルウェアの検証・評価・サポートに携わり、縁の下の力持ちとして日夜励んでいる。


3/3

Index
RHEL+VMwareでTCO削減
 第1回 仮想化とOSSが運用コスト削減に効く理由
  Page 1
はじめに
運用コスト削減のポイント
  Page 2
VMware Infrastructure 3の構成と特徴
Page 3
RHELの仮想マシンの作成
仮想マシンの複製

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