Linuxで動く
Javaアプリケーションサーバ・カタログ


鶴長 鎮一
2003/5/13

 独自キャッシュ技術とDBとの親和性が特徴
 Oracle9i Application Server Release 2 Standard Edition

 
製品名: Oracle9i Application Server Release 2 Standard Edition
URL: http://www.oracle.co.jp/9i/9ias/
価格 125万円より
対象OS: Red Hat Linux Advanced Server 2.1、MIRACLE LINUX Standard Edition V2.1

製品概要

 Oracle9i Application Server Release 2(以下9iAS)がベンチマークやパフォーマンステストで話題に上るようになって久しい。その根幹を支えているのがキャッシュ技術(エンタープライズ版が必要)である。

 同社のキャッシュ技術は、HTMLファイルや画像など、ほとんど変更がない静的コンテンツはもちろん、JSP、Servlet、Beanによって生成される動的なコンテンツもJava Object Cacheによりキャッシュ可能となっている。Java Object Cacheは、一度生成されたオブジェクトを再利用することでスループットやスケーラビリティを向上させているが、こういったキャッシュ技術で問題となるのは、キャッシュ対象のオリジナルコンテンツとの同期問題である。9iASは、こうした問題を3つの手法で解決する。

  • 管理コンソールを利用した手動によるキャッシュの破棄
  • あらかじめ設定するキャッシュの生存期間
  • データベースや他アプリケーションからメッセージを受け取ることでキャッシュを破棄または更新

 エンティティBeanの永続化オブジェクトはたいていRDBに格納されるが、RDBから変更メッセージが発せられるまでJ2EEコンテンツをキャッシュするというような使い方が可能だ。もちろん、同社のOracle Databaseとの親和性が最も高いのはいうまでもない。

 また、HTMLの中にPL/SQLロジックを埋め込んだり、PL/SQLでWebアプリケーションを実現するためのAPIがそろっているなど、Java環境以外にもこうした実行環境が用意されている点は興味深い。9iASは一時期、他社Javaアプリケーションサーバとの差別化を図るべく、J2EEから離れたところに注力する傾向があったが、最近はJ2EE完全準拠の実行環境にシフトしている。

 9iASには、スタンダード版に加えエンタープライズ版が用意されている。エンタープライズ版では、スタンダード版の機能に加えてキャッシュ機能、ビジネスインテリジェンス機能、LDAPに準拠したディレクトリサーバ機能などを備えている。

 主なラインアップはこの2種だが、OracleはBEAシステムズやIBMを強く意識した戦略的な販売を行うことが多く、魅力的で低価格なパッケージを提供することがある。例えば、「Oracle9i Application Server Java Edition」は開発環境「JDeveloper」付きで62万5000円(プロセッサライセンス)で提供すると発表している。

管理/モニタリング機能

 9iASの設定ツール「Oracle Enterprise Manager」(以下Enterprise Manager)は、Webブラウザから利用する。他社が左右分割フレームを用い、左に設置項目、メインフレームに設定内容やステータスを表示するのに対し、Enterprise Managerはウィザード方式を採用している。ウィザード方式を用いることで対話的に操作でき、1つ1つの手順の確認が確実に行える。操作が何ステップで、この後で何をするのかも適切に表示されるため、大変扱いやすい。

インストール完了後、「http://サーバ:1810/」でEnterprise Manageerを表示した様子(画像をクリックすると拡大表示します)

 「Enterprise」と銘打っていることからもうかがえるように、Enterprise ManagerはWebキャッシュの設定やクラスタリング操作といったサイト管理機能も備えている。また、J2EEコンポーネントのデプロイメントをはじめ、パラメータの設定やCPU/メモリ使用率の確認といったモニタ機能もある。

開発環境

 9iASでは、「Borland JBuilder」をベースとした「Oracle9i JDeveloper」という開発ツールが提供されている。とはいえ、オラクル独自の改良が続けられており、すでにオリジナル開発ツールと呼べるほどに進化している。

JDeveloperを起動した様子(画像をクリックすると拡大表示します)

 このJDeveloperで開発、デバッグ、チューニングといった一連の作業が行えるが、サーバの起動や停止作業は行えない。例えば、9iASのServlet、JSP、EJBコンテナにはスタンドアロンで実行されるOC4J(Oracle9iAS Containers for J2EE)を利用するが、別途コマンドなどから実行する必要がある。

 新規にJ2EEなどのアプリケーションコンテンツを作成する場合は、BC4J(Business Components for Java)と呼ばれるひな型を利用すれば、最小限のコード入力で開発できる。また、9.0.3でようやくApache Ant、Jakarta Struts、JUnit、CVSといったオープンソース・ソフトウェアと連携できるようになった。

編注:Oracle9i Application Serverについては、Java Solutionフォーラムの
製品紹介:Oracle9i Application Server
でより詳しく解説している。

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Index
Linuxで動くJavaアプリケーションサーバ・カタログ
  アプリケーションサーバの動向
  BEA WebLogic Server 8.1J
  Borland Enterprise Server 5.2
  IBM WebSphere Application Server, V5.0
Oracle9i Application Server
  Sun ONE Application Server 7
  製品選択のポイント

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