新たなユーザー体験をもたらすKDE 4.1(前編)
 〜 見た目も中身もすごいんです 〜

約5年を掛けて開発されてきたKDEの最新バージョン「KDE 4.1」では、内部的なアーキテクチャだけでなく、ユーザー体験を大きく改善するさまざまな機能が加わっています。(編集部)

日本KDEユーザ会
2008/10/21


KDEの歴史

 Linuxをお使いの方ならばおなじみのKDE(K Desktop Environment)は、X Window System(X11)上で動作するデスクトップ環境です。

 X11上にユーザーフレンドリーなGUIデスクトップを実現するために、Matthias Ettrich(マティアス・エトリッヒ)氏が1996年10月14日にプロジェクトを立ち上げたのが、KDEの歴史の始まりです。Matthias Ettrich氏は、当時のX11上のデスクトップを、Window Managerとコンソールという組み合わせの「CUIデスクトップ」と表現しており、そのイメージを打破しようという意識が、KDEプロジェクトが開始された背景にありました。

 それ以降、1998年7月に1.0、2000年10月に2.0、2002年4月に3.0がそれぞれリリースされ、順調に進化を遂げてきました。そして今年、2008年1月11日に最新のメジャーバージョンであるKDE 4.0がリリースされました。

編注:10月3日に最新バージョンとなるKDE 4.1.2がリリースされました。バージョンアップの内容はhttp://www.kde.org/announcements/announce-4.1.2.phpを参照してください。

KDE 4.1リリースとその位置付け

 KDE 4.0の開発は約5年をかけて行われ、大きな変更だったこともあり、KDE 4.0のリリースは開発者向けのリリースという位置付けでした。過去のKDEのメジャーバージョンリリースにおいて、最初のバージョンは安定性に欠ける部分があったのも事実です。そのため、KDE 4.0は、ある程度実験性を含んだものとなっていました。

 そして、2008年7月29日に「End User Ready」と位置付けられるKDE 4.1がリリースされました。待望の、KDE 4.x系列初のエンドユーザー向けリリースとなります。今後はエンドユーザーからの意見や要望を取り入れて、さらに使いやすいデスクトップに成長していくことが期待されます。

画面1
画面1 KDE 4.1の画面(クリックすると拡大します)

大幅に進化したユーザー体験

 KDE 4では、先ほども述べたとおり大幅な変更が行われています。内部的なアーキテクチャだけでなく、ユーザー体験も大きく改善されています。

 ここでは、大きく進化したKDE 4.1のユーザー体験について紹介します。アーキテクチャの変更についてはコラム(下記参照)にて紹介します。

■Plasma

 先ほど「ユーザー体験」という言葉を使いました。これは、KDE 4.1におけるユーザーの目に見える改善が、単にユーザーインターフェイスにとどまらず、多岐にわたっていることを表現したものです。

 そのKDE 4.1のユーザー体験の中心に位置付けられるのが「Plasma」です。Plasmaは、KDEのインターフェイスを新しく生まれ変わらせるために、2005年に始められたプロジェクトです。Plasmaは、KDE 3.xで非常に人気が高いテーマ(ウィンドウなどのデザインのこと)である「SuperKaramba」を標準のデスクトップに融合させることを最初の目標とし、現在では、ユーザー体験にかかわるあらゆる改良を目指して活動が行われています。

 その内容には、ユーザーインターフェイスの改良、視覚的な面でも操作性の面でも一貫した共通コンポーネントの提供、プログラムの新しい起動方法の提供などが含まれています。プログラムの起動方法については、ランチャーとして後ほどまとめて説明します。

■豊富な共通コンポーネント「Plasmoid」

 Plasmaでは、時計や電卓のような共通コンポーネントのことを「Plasmoid」と読んでいます。Plasmoidは、ユーザーから見た特定の機能を提供しているユーザーインターフェイスの単位に相当し、ボタンやテキストボックスのような従来のウィジェットを組み合わせて実現しています。

 その見た目や操作性は、Qt 4.2から導入された非常に高機能なGraphics Viewフレームワークを利用して実装され、拡大/縮小可能なSVG(Scalable Vector Graphics)を活用しているため、従来のユーザーインターフェイスのイメージと大きく異なっています。

 それでは、具体的にどういうPlasmoidが提供されているのか、見ていきましょう。

コラム■KDE 4.1のアーキテクチャ

 KDE 4では、コアとなる技術の構成がKDE 3系列とは大きく変化しました。KDE 4.1のアーキテクチャを整理すると以下の図のようになります。

図1
図1 KDE 4.1のアーキテクチャ

 変更点は、大きく分けて以下の5点になります。

  1. KDE 2から導入され、使われ続けてきたコンポーネント技術「DCOP」が、Qt 4.2から導入された「QtDBusモジュール(D-BUSのラッパー)」に置き換えられました。
  2. Plasmaの導入によってユーザーインターフェイスが大きく進化しました。
  3. ハードウェアへのアクセスを抽象化するフレームワーク、「Solid」が導入されました。
  4. マルチメディアフレームワークとして「Phonon」が導入されました。
  5. PIM(Personal Information Manager)フレームワークの「Akonadi」が導入されました。

 以降では、QtDBus、Solid、Phononについて簡単に紹介します。

・QtDBus

 QtDBusは、Qt 4.2からQtに導入されたD-BUSのラッパーモジュールです。D-BUSは、デスクトップ用のメッセージバスとして、GNOMEとKDEのコンポーネント技術の共通化を目指して開発されています。

 QtDBusでは、このD-BUSを経由して、KDE/Qtの型をメッセージ通信で扱えるようにしています。また、QtDBusでは、CORBAやCOMのようなコンポーネント技術で一般的に使われている、スタブ/スケルトン形式の通信モデルを実現しています。

 QtDBusにおけるメッセージの送信元のスタブをInterfaceと呼び、メッセージの受け口のスケルトンをAdapterと呼んでいます。このInterfaceとAdapterは、XML形式で定義したIDL(Interface Definition Language)から自動生成することが可能です。KDE内部では、このQtDBusを活用することでさまざまな機能を提供しています。

・Solid

 KDE 3系列までは、ハードウェアへアクセスするためのインターフェイス層は用意されておらず、各アプリケーション開発者がハードウェアにアクセスするためのコードを記述する必要がありました。Solidは、この問題を解決するために開発された、ハードウェアへアクセスするアプリケーション開発のための包括的なAPIを提供するフレームワークです。

 Solidは、抽象度の高いハードウェアアクセスのAPIとなっており、各OSで提供されているハードウェアアクセスAPIを利用しています。そのため、Solidを使うことでプラットフォームに依存しないアプリケーションを開発することができます。この抽象化のため、Solidは、後述するPhononとともに、KDE 4をWindowsやMacOS Xでも動作させるための鍵になるフレームワークの1つとなっています。

・Phonon

 KDEでは、長年「aRts」がサウンドサーバ兼メディアフレームワークとして使われてきました。しかし、aRtsはメンテナンスが行われていない状況が続いていました。また、GStreamer、Xine、Helixといった高機能のマルチメディアフレームワークが開発され、広く使われるようになりました。そこでKDE 4では、これらのマルチメディアフレームワークをバックエンドとして利用する、抽象度の高いマルチメディアフレームワークとしてPhononが開発されました。

 Phononは、KDE4.0ではKDEの一部として提供されていました。しかし、Qt 4.4からPhononがQtに取り込まれています。

 Phononは、当初からクロスプラットフォームなフレームワークとして設計されていましたが、Qtに取り込まれたことで正式にWindowsやMac OS Xに対応することになりました。KDE 4.1では、このQtに取り込まれたPhononを利用して、クロスプラットフォームなマルチメディア機能を提供しています。


 
1/3

Index
新たなユーザー体験をもたらすKDE 4.1(前編)
 見た目も中身もすごいんです
Page 1
 KDEの歴史
 KDE 4.1リリースとその位置付け
 大幅に進化したユーザー体験
 コラム KDE 4.1のアーキテクチャ
  Page 2
 Plasmoidの追加方法
 デスクトップを快適にするPlasmoid
  Page 3
 2通りの方法を選べるランチャー
 デスクトップと結び付いた検索機能「Strigi」

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