日本語ベータ版で見る
Kylixプログラミング作法

大野 元久
ボーランド株式会社
2001/3/17

実践、Kylixプログラミング

 それでは、簡単なアプリケーションについて、開発の具体的手順を紹介しよう。

■メニューデザイナによるメニューの設計

 MainMenuコンポーネントをフォームに配置すると、フォームの上部にメニューバーのための領域が確保される。配置したコンポーネントには、コンポーネント名に数字が追加された名前が付けられる。例えば、MainMenuを配置すると、MainMenu1という名前になる。

 MainMenu1をダブルクリックすると、メニューデザイナが呼び出される。空の場所は、新しいメニューを追加するためのプレースホルダであり、ここに“File”や“New”、“Open”と入力すると、新しいメニュー項目が追加されていく(画面6)。

画面6 メニューデザイナ(画像をクリックすると拡大表示します)

 Kylixでは、1つ1つのメニュー項目もコンポーネントになっている。つまり、メニューに表示する文字列(キャプション)やチェックの状態、メニューを呼び出したときの動作は、オブジェクトインスペクタでプロパティやイベントとして設定する。

 メニュー項目のためのコンポーネントは、単独で使うものではないのでコンポーネントパレットにはない。このように、コンポーネントパレットにないものでも、ほかのコンポーネントに関連して使うコンポーネントがある。

■ツールバーとステータスバーの追加

 次にツールバーを配置する。ツールバーを配置するには、コンポーネントパレットの[Common Controls]ページにあるToolBarとImageListを使う。

 ToolBarを配置すると、自動的にフォームの上部に領域が確保される。ここで、右ボタンのクリックで表示されるコンテキストメニューを使って、ボタン(ツールボタン)やセパレータ(隙間)を追加する。

 ImageListは、ツールバーに表示するような複数のイメージをまとめて管理するものだ。ImageListコンポーネントをダブルクリックしてイメージリストエディタを表示し、[追加]ボタンで使いたいイメージを追加する。デフォルトでは16×16ピクセルの大きさのイメージを扱うが、プロパティを設定すればほかの大きさでも構わない。ただし、サイズを変更すると、それ以前に設定したイメージはクリアされてしまうので注意が必要だ。

 ToolBar1のImagesプロパティに、イメージを設定したImageList1を割り当てると、フォーム上のツールバーのボタンにイメージが表示されるようになる。ツールバーにボタンを追加し、イメージを割り当てているようすを画面7に示す。

画面7 ImageListの編集(画像をクリックすると拡大表示します)

 また、[Common Controls]ページのStatusBarを配置すると、フォーム下部に領域が確保される。ステータスバーは幾つかの領域に分けて使うこともできるが、ここではSimplePanelというプロパティをTrueにして、単一のテキストのみを表示する場所として使う。

■メモとコモンダイアログの配置

 次に[Standard]ページのMemoコンポーネントを配置する。Memoは複数行のテキストを編集できる基本的なコンポーネントである。ここでAlignというプロパティをalClientに設定すると、先に配置したツールバーやステータスバーの領域以外の部分にコンポーネントが広がる。フォームのサイズを変更したときも、自動的にメモの大きさが変更される。

 また、メモにファイルを読み込んだり、編集したテキストをファイルに保存するときのファイルを選択するための汎用的なダイアログ(コモンダイアログ)を使うために、[Dialogs]ページのOpenDialogとSaveDialogを配置する。

■イベントハンドラの割り当て

 ここまではユーザーインターフェイスを設計してきただけだが、実際にプログラムの動作を定義するためにイベントハンドラを割り当てる。先ほどのメニューデザイナを再び呼び出して、[New]や[Open]といったメニュー項目をダブルクリックすれば、コードエディタ空のイベントハンドラが生成される。ここにプログラムを入力すればよい。

画面8 イベントハンドラの割り当て(画像をクリックすると拡大表示します)

 いったんメニュー項目にイベントハンドラを割り当てたら、そのイベントハンドラはツールボタンでも簡単に再利用できる。目的のツールボタンを選び、オブジェクトインスペクタの[イベント]ページでOnClickイベントに定義済みのイベントハンドラを選択するだけだ。

■プログラムの実行

 ここまでできあがったら、あとは実行ボタンを押すだけである。プログラムはLinuxネイティブ実行形式にコンパイルされて実行される。

画面9 作成したプログラムの実行画面(画像をクリックすると拡大表示します)

Windowsの常識をLinuxに

 基本的な機能を中心に紹介したため、ここで触れたことはKylixのごく一部にすぎない。しかし、特に従来の開発ツールでLinuxアプリケーションを開発したことがある人であれば、その生産性が大きく違うことがお分かりいただけるだろう。逆に、Windows開発者、特にビジュアル開発ツールを使われている人にとっては、あまり衝撃的ではなかったかもしれない。しかし、これはLinuxの開発ツールである。Windowsの常識がLinuxに持ち込めるということこそがKylixのすごさなのだ。

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Index
日本語ベータ版で見る Kylixプログラミング作法
  日本語ベータ版登場
  ビジュアル開発の基本
 2種類あるコンポーネント
 コンポーネントの配置
 コンテナコンポーネントの概念
  コーディングと言語仕様
 プロパティとイベントの制御
 プログラミング言語Object Pascalの特徴
実践、Kylixプログラミング
 メニューデザイナによるメニューの設計
 ツールバーとステータスバーの追加
 メモとコモンダイアログの配置
 イベントハンドラの割り当て
 プログラムの実行
  Windowsの常識をLinuxに

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