ゼロ円でできるブロードバンド・ルータ 2
1FD Linuxで作る高機能ルータ [インストール編]

北浦 訓行
2002/1/19

Mosquitoのインストール

■コラム USB接続のFDD
 試した限りでは、ノートPCに多いUSB接続のFDDではMosquitoのフロッピーディスクを作成することはできませんでした。USBのFDDは使えないと考えておいた方がいいでしょう。

 まず、Mosquitoのプログラム(mos322.exe)をWebサイト(http://www.s-me.co.jp/mosquito/mos3_2/images/)からダウンロードします。mos322.exeは、Mosquito用のフロッピーディスクを作成するためのWindowsプログラムです。つまり、Mosquitoのフロッピーディスクを作成するためにはWindows環境が必要になるのです。

 次に、フォーマットしてもいいフロッピーディスクを2枚用意します。1枚目はMosquitoの起動ディスクに、2枚目はモジュールを追加するための作業用ディスクになります。作業用ディスクは、Windowsでフォーマットしておいてください。Mosquitoの起動ディスクはフォーマットしておく必要はありません。

 Windowsでmos322.exeを実行すると、画面1が表示されます。

画面1 mos322.exeを実行すると最初に表示される画面

 [OK]ボタンをクリックすると、続いて、フロッピーディスクの挿入を求めるメッセージなどが表示されます。Mosquitoの起動用ディスクをFDDに入れて[OK]ボタンをクリックすると、確認を求めるメッセージが表示され、フォーマットとデータのコピーが始まります(画面2)。

画面2 進ちょく状況がパーセント表示される

 作成が終了しても、特にメッセージが表示されるわけではありません。画面2が消えて、FDDのアクセスランプが消灯したら、エクスプローラでフロッピーディスクの内容を確認してください。MosquitoのフロッピーディスクはFATフォーマットなのですが、容量は1.62Mbytesと特殊になっています。

 試しに、作成したフロッピーディスクでPCを起動してみましょう。画面3のような画面が表示されて、最終的に「mosquito.mydomain login:」というプロンプトが表示されれば、フロッピーディスクは正常に作成されています。

画面3 Mosquitoの起動が始まった画面(画像をクリックすると拡大表示します)

環境構築の準備

 次はパッケージの追加や削除を行い、自分のPCに適したMosquitoに設定していく作業を始めるわけですが、それに先だって準備しておかなければならないことがあります。それは、テキストエディタのインストールです。

 テキストエディタ用のパッケージはeditor.lrpというファイル名です。また、editor.lrpが使用するライブラリ(libncurs.lrp)も必要です。パッケージが置かれているサイト(http://www.s-me.co.jp/mosquito/mos3_2/)からこの2つをダウンロードし、作業用ディスクにコピーします。

 Mosquitoを起動して、「mosquito.mydomain login:」というログインプロンプトが表示されたら、「root」と入力して[Enter]キーを押します。初期設定では、rootのパスワードは設定されていないので、これでログインできます。しかし、この状態では明らかにマズイので、すぐにパスワードを設定しましょう。パスワードの変更は、通常のLinuxと同じくpasswdコマンドで行います。

# passwd
(省略)
Enter new password: ←パスワード(5文字以上、8文字以下)
Re-enter new password: ←同じパスワードを再度入力
Password changed.

 続いて、作業用ディスクをドライブに入れて以下のコマンドを実行します(mountなどの作業は必要ない)。load_lrpは、パッケージをメモリにロードするコマンドです。

# load_lrp editor
(省略)
Installing editor... Done. ←editor.lrpのインストール成功
# load_lrp libncurs
(省略)
Installing libncurs... Done. ←libncurs.lrpのインストール成功

 ここで設定したパスワードは、まだRAMディスク上に保存されています。それをMosquitoの起動ディスクに保存するには、save_lrpコマンドを使用します。

# save_lrp config ←パスワードなどの情報を保存
(省略)
Enough freespace? (y/N) y ←ディスクに空きがあるなら[Y]キーを押す
Copying modules.lrp Please wait:

ドライバの追加と削除

 続いて、NICなどのドライバをインストールします。具体的には、作業ディスクに入ったドライバをMosquitoのディレクトリ(RAMディスク上にある)にコピーし、save_lrpコマンドで新しいモジュール(module.lrpなど)をMosquitoの起動ディスクに保存するという流れになります。

 まずはNICです。Mosquitoにデフォルトで含まれているNICのドライバは、ne.o、eepro100.o、rtl8139.o、tulip.oの4つですから、筆者の環境では、別にepic100.oとvia-rhine.oが必要となります。NICのドライバが置かれているサイト(http://www.s-me.co.jp/mosquito/mos3_2/new_modules/)からダウンロードし、作業用ディスクにコピーします。

 作業用ディスクをドライブに入れてmountし、必要なドライバ(ここではepic100.oとvia-rhine.o)を/lib/modulesにコピーします。

# mount /dev/fd0 /mnt
(省略)
# cp /mnt/*.o /lib/modules

 筆者はWindows 2000でファイルをダウンロードして、Windows 2000のエクスプローラで作業用ディスクにコピーしました。そして、Mosquitoで作業用ディスクをマウントして確認してみると、ファイル名が短縮されています。そのため、/lib/modulesにコピーした後に、mvコマンドで正しい名前に変更しました。

# mount /dev/fd0 /mnt
# ls /mnt
editor.lrp     libncurs.lrp  epic100.o      via-rh~1.o
# cp /mnt/*.o /lib/modules
# cd /lib/modules
# mv via-rh~1.o via-rhine.o
# umount /mnt

 NICのドライバをコピーしたら、モジュールを読み込んで動作するかどうかをチェックしましょう。

# insmod epic100.o ←コピーしたドライバを指定
# insmod via-rhine.o ←コピーしたドライバを指定

 エラーが発生しなければ、次のコマンドでeth1が追加されているかどうかを確認します。

# ip link show

 必要のないモジュールは削除します。ここでは、ne2k-pci.o、eepro100.o、rtl8139.o、tulip.oはすべて必要ありません。また、IPマスカレード関連のドライバ(ip_masq_*.o)は、必要に応じて取捨選択してください。

# cd /lib/modules
# ls
8390.o             ip_masq_ftp.o      ip_masq_vdolive.o  tulip.o
eepro100.o         ip_masq_quake.o    ne2k-pci.o         via-rhine.o
epic100.o          ip_masq_raudio.o   pci-scan.o
ip_masq_cuseeme.o  ip_masq_user.o     rtl8139.o
# rm eepro100.o ne2k-pci.o rtl8139.o tulip.o ←4つのファイルを削除
# rm ip_masq_quake.o ←1つのファイルを削除
# ls
8390.o             ip_masq_ftp.o      ip_masq_vdolive.o
epic100.o          ip_masq_raudio.o   pci-scan.o
ip_masq_cuseeme.o  ip_masq_user.o     via-rhine.o

 そして、テキストエディタ(ae)で、モジュールの設定ファイルである/etc/modulesを編集します。

# ae /etc/modules

 /etc/modulesの内容が画面に表示されます。必要のないモジュールの先頭に「#」を付けます。また、必要なモジュールの先頭に「#」が付いていたら、それを削除します。筆者の場合は、以下のように変更しました。

ip_masq_quake
eepro100
ne2k-pci
rtl8139
tulip

#epic100
#via-rhine






#ip_masq_quake
#eepro100
#ne2k-pci
#rtl8139
#tulip

epic100
via-rhine
変更前   変更後

 なお、Mosquitoの場合はNICのドライバを読み込む順番によってeth0、eth1……が決まります。また、LAN側がeth0になるということが決まっているので、eth0のNICのドライバは、eth1のそれよりも先に読み込むように/etc/modulesを設定してください。

 /etc/modulesの編集が終わったら、[Ctrl]+[W]キーを押します。すると、画面の最上行に[Write file : /etc/modules]と表示されるので、そのまま[Enter]キーを押します。続いて、[Ctrl]+[C]キーを押すとaeは終了します。

 最後に、変更した環境をパッケージにして、Mosquitoの起動ディスクに保存します。そのためのコマンドが、save_lrpです。FDDにMosquitoの起動ディスクを入れて、以下のコマンドを実行します。

# save_lrp modules
(省略)
Enough freespace? (y/N) y ←ディスクに空きがあるなら[Y]キーを押す
Copying modules.lrp Please wait:

■コラム NICに適したドライバの調べ方
 NICに適したドライバを選択するには、最初にNICの取扱説明書をよく読んでください。最近のNICの場合、メーカー品であればLinuxに関する説明がされていることが多いようです。そこに、ドライバ名が書いてあるでしょう。

 説明が見つからないときは、Linux Ethernet-Howto(http://www.linux.or.jp/JF/JFdocs/Ethernet-HOWTO.html)を参照したり、メーカーのWebサイトを見るのも有効な手段です。

不要なパッケージの削除

 Mosquitoは、以下のパッケージで構成されています。

パッケージ名
説明
root.lrp ライブラリと基本的なコマンド
etc.lrp /etc以下のディレクトリとファイル。各モジュール固有の設定ファイルは含まれない
rc.lrp 初期起動コマンド
modules.lrp Linuxが利用するドライバなどのモジュール
log.lrp /var/log以下のファイルをバックアップするためのパッケージ
thttpd.lrp Webサーバデーモン用のパッケージ。webadmin.lrpと併用する
webadmin.lrp Web管理画面の管理ツール。thttpdから起動される
dhcpcd.lrp DHCPクライアント用のパッケージ
dhcpd.lrp DHCPサーバ用のパッケージ
config.lrp etc.lrpに含まれない各パッケージの設定ファイルを保存。Mosquito独自のパッケージ
keymaps.lrp 106キーボード用パッケージ
pppd.lrp pppdパッケージ。PPPoEで使用
pppoe.lrp PPPoE用パッケージ。pppd.lrpが必要

 この中には、インターネット接続環境によっては必要のないパッケージもあります。例えば、CATVインターネット接続の場合は、PPP関連のパッケージ(pppd.lrpとpppoe.lrp)は必要ありません。逆に、PPPoEで接続するADSLの場合は、dhcpcd.lrpが不必要です。PPP関連のパッケージは合計で113.4Kbytes、dhcpcd.lrpは13.4Kbytesほどのサイズですから、フロッピーディスクの容量をある程度は節約できます。これらのファイルの削除は、Windowsのエクスプローラで簡単にできます。

 以上で作業は終了です。リセットボタンを押すか、[Ctrl]+[Alt]+[Delete]キーでPCを再起動してください。Mosquitoが起動したら、eth0にクライアントPCを接続して、IPアドレスが取得できるかをテストしてみましょう。先にも少し触れましたが、Mosquitoのネットワークの初期設定は、次のようになっています。

 
デバイス
役割
IPアドレス
ネットマスク
  etc0 IN 192.168.0.1 255.255.255.0
  eth1 OUT DHCPクライアント

 IPアドレスが取得できたら、次はWebadminによるネットワークの設定です。

設定編は1月26日公開!
設定編では、Webadminによるネットワーク設定やフィルタリング、ログの転送など、Mosquitoをルータ/ファイアウォールとして活用するための方法を紹介します。

2/2

Index
ゼロ円でできるブロードバンド・ルータ2
1FD Linuxで作る高機能ルータ[インストール編]
  Page 1
1年で激変したブロードバンド市場
1FD Linux「Mosquito」とは
 機材の準備
  Page 2
Mosquitoのインストール
 環境構築の準備
 ドライバの追加と削除
 不要なパッケージの削除

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